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なごり雪見風呂

08_3_28(1)

 去る3月第4週の週末、最後の雪見温泉に出かける。
 雪の温泉めぐりをするためにせっかくスノータイヤに履き替えたのだから、冬の間にせめて3回は行かねばという、珍しく夫の初志貫徹である。
 こと、費用対効果に関わることになると、必ずや意志を貫く。さすがA型だ。

 とはいえ、巷では桜の開花ニュースもチラリ、ホラリ。
 なごり雪も、降るなごり雪ならともかく、積雪の、汚れたなごり雪なんて、あんまり気分じゃないよな~。
 と後ろ向きになりつつも、「温泉行きたい!」という息子のために腰を上げる。

 松本インターから車で小1時間。乗鞍高原温泉、みたけ荘に到着する。
 秘湯を守る会会員の宿なのに、すぐ背後はスキー場のリフト乗り場、周囲には旅館が立ち並び、秘湯のイメージからは大きくかけ離れる。
 宿の中も、温泉宿というより、スキー旅館といった感じ。
 庭に作れられた、貸しきり露天風呂に望みをかける。
 下が見えないくらいのにごり湯は、やわらかく、芯からあったまり、これはそんなに悪くない。庭に残った雪も、ああ、これがふかふかの新雪だったら、さぞ気持ちいいだろうという気にさせてくれる。
 温泉宿ではなく、いっそスキーロッジに来たと思えば、「ああ、ちょっと得した気分」と思えるに違いない。

 それにしても、気温も汗ばむくらい温かいというのに、見上げるスキー場には潤沢に雪が残り、土が醜く出ている箇所も見受けられない。
 それもそうだ。乗鞍といえば、春夏スキーのメッカ。高校生のときに夏スキーで訪れたこともあったのを思い出した。

 何を隠そう、私には、20年近く封印してきた過去がある。
 この、スポーツとは無縁の生活を送っている私が、身体を鍛えるくらいなら早死にしてもいいと思っている私が、なななんと、大学時代は競技スキー部に所属していた、という過去。もっというと、小学校の卒業論文では将来の夢に「フリースタイルのスキーの選手になりたい」と書いた。それくらい、スキー・バカな少女時代を送っていた。

 しかし、いまやスキーに行くためではなく、雪見温泉に行くために四輪駆動車に買い換えたほどの夫婦である。夫も私も、たとえスキー場に周囲を囲まれた温泉地に行ったとしても、今更、夫婦でスキーなんて有り得ないだろうと確信していた。
 ところが、である。やはり子どもができるとそうもいかないのだ。
 昨年あたりから、ソリ遊びではごまかしが利かなくなり、ついに、15年ぶりにスキーをはくことになった。

 スキーを取り巻く環境は私の時代とは大きく変化し、スキー自体もカービングスキーに取って代わられ、スノーボーダーの影響かファッションもすっかり地味な色味が主流になったが、息子には甥っ子のお古で間に合わせる。派手な柄が全盛だった時代のオレンジに幾何学模様びっしりのバブルの化石みたいなウエアは、かなり時代遅れ。そうとも知らず「ケイちゃんが着てたお洋服、カッコイイね~」と喜ぶ愚息をみるぬつけますます不憫になるが、どうせスキーが家族の娯楽になることはあり得ないので、目を瞑る。

 スキーといったって、子どもを前に抱え込み、こちらの足の間に挟む形で滑らせてやればいいんだから、そのくらい楽勝だろう。と、思っていたが、この前かがみで、しかも子どもを実質抱えてリフト一本分を滑るというのが、予想以上に腰に来た。まだ滑り方すら知らない小さな幼児を抱えてリフトに乗るのも、結構緊張するものだ。

 そこで、今年から、子どもだけスキーをレンタルし、こちらはスキーは放棄。子供用の遊び場にゆるい斜面を見つけて、ちんたら滑らせるという手に出た。これなら転んだところで怪我もしないし、親もラクちんだ。
 最初は、「え~、なんでリフトに乗らないの~?」と不平を言っていた息子だが、ところが始めてみたら、これが意外と、自ずとスキーに慣れ親しむ一番の早道になったようで、今シーズンは、なんだかみるみるうちにバランス感覚をつかんでいったような気がする。

 乗鞍スキー場には、子どもゲレンデなるソリと初心者用スキー専用のゲレンデがあり、リフトも、ほんの20メートルほどの長さで、しかもベルトコンベアーのように、スキーをつけたままでも子どもだけでも安心して乗れるものがある。これはいい。

 夫がいっしょに上まで行き、スキーを真下に向くように子どもの姿勢を立て直してやり、手を離して背中を押す。スーッと、本当にそういう音が聞こえてくるように、スーッと滑り降りてくる我が子を見て、不覚ながら大きく感動する。
 す、すごい。
 私が教えたことなどは、「ストックを持った手を、前に、前に」くらいだというのに、転びもせずにスーット降りてくる。
 子どもがすり抜けられる高さにアーチが組んであるのだが、そこをくぐりたい一心で、いつのまにか曲がることまで身についているではないか。
08_3_28(2)


 「すごいね~。ママ、感動したよ。来年はスクールとか入ってみようか!」
 自分でも予期していなかった言葉が、自分の口からついて出る。
 来年は、雪見風呂より、スキー場選びに躍起になっていたりして?
 いやいや、そんなことは断固としてない。あくまでも、うちの四輪駆動車は、スキーではなく、雪の秘湯に行くための車だ。

 しかし、いまどきの新しいウエアくらいは、息子に買ってあげてもいいかな?なんて思っている母である。
 ついでに私もカービングスキー、買っちゃおうかな。うそ。
 いや、本当かも。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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