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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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温泉宿をハシゴ。「まるほん旅館」と「清津館」

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 この連休は、かねてより雪の温泉をはしごすることになっていた。
 しかしこの一週間というもの、会社で凹んでたばかりでなく、実は家庭内でも諍いごとが勃発。
 この分じゃ週末の温泉宿もキャンセルだろうと、こちらは戦闘続行体制でいたのだが、敵はよほどキャンセルが惜しかったようで、なしくずし的に、和解案成立と相成った。
 果たしてそれがよいことか否かは別問題として、しかしこの一週間ですっかりすさんでしまったココロと傷ついたプライドを癒すために、真っ先に温泉に飛び込みたいことは確かだった。

 さて、今回のテーマは行ったことのない温泉宿特集。
 といっても3連休、しかも思い立ったのはほんの2週間前だっただめ、希望の宿はどこも一杯。とりあえずスタンプ稼ぎのため二軒とも「秘湯を守る会」加盟宿であることを条件に、空いている宿をおさえた。

 一泊目は、群馬県「まるほん旅館」。
 嵐山光三郎のエッセイで、ここの跡継ぎの息子が突然事故で亡くなって、それでもどうしても宿を残したかったご主人が、養子を大募集したところ、群馬銀行の銀行員をしていたある男性が名乗り出て、その男性夫婦が若旦那&若女将として頑張っている、というようなのを読んだことがある。
 「そうかー、人生そういう道もあるのかー」と、きっと夫も同じ思いがよぎったのだろう。ちょっと泊まってみたくなったのだ。

 四万温泉に向かう少し手前に位置する小さな温泉街、沢渡温泉。
 期待に反して、雪はほとんどついていないこともあり、ひなびた温泉集落の風景に風情を添えてくれるものがないのが、また寂しい。
 そんな小さな道の両脇に軒を連ねる温泉旅館の一つが「まるほん旅館」。

 決して凝った作りでも風情のある建物でもない、ただの旅館といった佇まい。しかしながら新しいじゅうたん敷きの廊下に、トイレも全室ウオッシュレット。きっと、養子の若旦那が継いだのを機に改装をしたのだろう。
 貸切露天風呂も新設されていて、中庭に無理やり囲いと庇を作ってスペースを確保した感は否めないものの、大きくて深いヒノキの湯舟は結構気持ちがいい。至る所に「めあす箱」と書かれた箱が設置されていたりして、随所に一生懸命工夫している姿もうかがえる。
 しかし、食事担当のおばさんがどうも要領を得ない接客で、息子の子供食を頼んでおいたのになかなか運ばれてこなかったり、白いゴハンを忘れたりと、ハラハラする場面も多数。
 夕方からふりだした雪が辺り一面を白い世界に閉じ込めていくというのに、そんな幻想的な景色を楽しむどころか、廊下からすきま風の入る部屋にはコタツがなく、エアコンをがんがん入れてもまだ寒い。
 一泊1万2~3千円という低コストを鑑みても、ご意見箱に思わず投函してしまおうかと手がうずいたりして。
 しかし、その手をとめてしまうものが、ええい目をつむろうではないかと思うほどすばらしいものが、この宿にただ一つだけある。大浴場だ。

 基本的に男女混浴だが、夕食後と朝食前の、女湯専用になる時間帯を狙って足を運ぶ。
 寒い廊下の突き当たり、味気ないサッシのドアを開けると、一転して古い木張りの廊下に。
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 いざなわれるように先に進むと、今度は、手前にも向こう側にも自在に観音開きする木戸に突き当たる。
 ギー…と音を立てて木戸を開けた瞬間、軽く目眩を覚えるのは私だけではないだろう。
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 下界からゆらゆらと立ち上る湯気に、一瞬、自分が今どこに向かっているのかかわからなくなりなる。ギシギシと音を立てながらゆっくりと「天の廊下」を進み、「下界」を見下ろせば、右にも左にも、湯がふつふつと沸いているのだ。
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 浴室の中央に下りてくる階段があり、その階段を挟むように、熱い湯の湯舟と、ぬるい湯の湯舟がある構造。天井も壁も床も、すべて総ヒノキ。湯舟の床は、翡翠色をした石が敷き詰められていて、青く光った湯が、湯気の合間からきらきらと光る。

 風呂というより部屋、いや、家にでもいる感覚といえばいいだろうか。息子は、あっちの部屋(湯舟)、こっちの部屋(湯舟)を行ったり来たり。大人もつい、ワクワクしてくる構造をしている。
 いったい誰が考えたのかしらないけど、微妙にシンメトリになっていない感じといい、湯舟の変形多角形といい、どことなく計算しつくされた構造は、どこぞのえらい建築家が設計したといっても通用する。重要文化財でもいいくらいだ。
 高い壁の、高い位置に作られた窓から見え隠れする雪を見ながら、すべすべの湯にじっと身をまかせていると、この一週間のココロのささくれが、ゆっくり癒えていくのがわかる。
お湯さえよければそれでいい。
 言ってみれば、温泉宿の究極の指針かもしれない。


 さて、翌日は新潟県に移動。
 先月訪れたマイ・ベスト温泉宿である「大沢館」のある塩沢から、野沢温泉方面に向かって30分ほど走ったあと、353号線をはずれて細い山道を進む。
 「なだれ注意」の看板を横目に「注意たって、どうやって注意すんのよ」などと言いながら、しかし内心は心臓バクバクさせながら雪深い渓谷を走ると、「ここから先は冬季閉鎖」の看板とともに、雪の壁で道が寸断する。その脇にあるのが清津郷湯元温泉「清津館」だ。
 日本三代渓谷のひとつと言われる秘境だけあって、ニホンカモシカやテンなども顔を見せるのだとか。
 こんな山奥なのに、なまりひとつないエプロン姿の綺麗で気さくな若女将が、とにかく感じが良くて妙に嬉しくなる。

 こじんまりとした「まるほん旅館」と違って、こちらは割と規模の大きい鉄筋3階建て。それでも、客室は思いのほか少なくて、1階と2階は、すべて食事どころや大浴場に当てられていることに気づく。
 が、嫌なことは二度つづくもので、前日に引き続き、夕食時にトラブル(?)発生。
 他のテーブルの客には運ばれているおかず(しかも2品も)が来ていないことに気づいた私。あくまでもやんわりと申し出たが、遅れて運ばれた煮物も、蒸し物も、ちょっと冷めていたから余計がっくりくる。
 連休で満室とあって、臨時のアルバイトでも雇っていたのだろうか。

 しかしこの宿も、すべて「湯」に流そうと思えるほど、その「湯」が素晴らしい。
源泉かけ流しのドバドバと湧き出る豊富なお湯は、源泉に「薬師の湯」という名がついいて、清津峡の守り神にと安置した薬師如来のお告げによって先々代の館主が掘り当てたことに由来するという。宿の創業は明治にさかのぼるが、温泉を引いたのは昭和40年代に入ってからだとか。温泉宿としての歴史は新しいわけだけど、通りを挟んだ目の前の渓流沿いに貸切露天風呂を新設するなど、新しい試みに取り組んでいるのがわかる。
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 家族で借り切るのがもったいないくらいの広い露天風呂。
 石造りの二つの湯舟に、二つある源泉をそれぞれ引いている。勢いよく湯舟に流れ込む湯は、飲んでも胃腸によし、肌もつかったそばからさらさらになっていき、ああ、このままお湯の中で溶けてしまいたい気分になる。
 「うわー、ママ、頭に雪がつもってるよー」
 と息子が雪をはらってくれる。そういや、がんがん雪がふってることも、忘れていた。
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 今回ハシゴした二つの宿、さて、軍配はどちらに?
 夫と、ついそんな話になる。
 しかし、どちらからともなく
 「…でも、やっぱり『大沢館』に行きたくなっちゃうんだよな~」
 それが私たちの結論なのだろうか。
 どうやら雪があるうちに、もう一度、大沢館に足を運ぶことになりそうである。
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ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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