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産直、生シイタケ!

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 うわっ、でかい! しかも、こんなにたくさん!
 ぷっくりと肉厚で、のびのびと育ったそれは、まるでイタリアの田舎で採れるポルチーニのようだ。

 月曜日、鹿児島の知人から、大量の生シイタケが届いた。
 いや、知人というのもおこがましいかもしれない。
 あれは3年前の夏のこと。鹿児島の吹上浜にほど近い小さな温泉宿を訪ねる途中、国道沿いで野菜を売っていた農家のおばさんが視界に入り、車を止めた。
 買って帰ろうと思ったのだが「あんた、東京へは今日帰るわけじゃないんでしょ?だったら、東京に帰った頃に届くように、その日の朝に採れた野菜を送ってあげるよ」とおばさん。
 嬉しい配慮に甘え、5,000円だけ預けていったのだが、後日、ダンボール一杯に、カボチャやらゴーヤやら、鹿児島特産のカライモやらがぎゅうぎゅう詰めになって、そしてその隙間には、律儀につり銭まで忍ばせて、送られてきたのだ。
 南国の太陽をいっぱい浴びた野菜たちの滋味溢れるおいしさは、旅の余韻と思い出をいっそう強固なものにしてくれたものだ。

 その翌年も、博多の友人を訪ねがてら、九州温泉めぐりの旅をくりかえしたけれど、さすがに鹿児島の奥地までは足を伸ばせないままでいた。
 おばさん、元気にしてるかな…。
 ふと、思い立って、年賀状を出してみた。
 そしたら、なんと、返事の代わりにおばさんから届いたのが、この生シイタケだったのだ。
 シイタケだけじゃない。二段重のように積み上げられた二つのダンボール、一段目が生シイタケの段なら、二段目はミカンの段、もっとよく見ると、シイタケの底にしかれていた新聞紙の下には、なんと、スイーツ何ちゃらとかいう新種のオレンジが隠れていた。おいおい、3段重ではないか。
 私が気軽に年賀状を出してしまったばっかりに、おばさんに気を遣わせてしまって申し訳ないことをしたと、反省すらしたくなる。

 おばさんが丹精こめて育てた実りの、とびきり新鮮な味わいを、間髪いれずに味わうこと。それが私にできるせめてもの恩返しかもしれない。
 届いたその日は、料理教室がある日で、すでにメニューも決めていたのだけど、急遽、生シイタケを使ったパスタをもう一品追加することにした。

 イタリアでキノコの王様といえばポルチーニ。その味わいを最も堪能できる料理の一つは、私がモデナのリストランテで働いていたときに女シェフのアデーレから教わった、ポルチーニのパスタ。
 そのレシピに則って、シイタケで作ってみた。名づけて「産直生シイタケのフェットチーネ」。
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 ぽってりと肉厚で、つるん、とろんと口の中に滑り込み、噛むほどに濃厚なキノコのエキスが湧き出てくる食感は、まさに、ポルチーニそのもの。いや、それ以上かもしれない。
 太い麺に負けない濃厚なコク。というより、太い麺でないと、このコクの相手は務まらないだろう。これが本当のシイタケならば、今までのシイタケないったい何だったのかと呆然とする。 はっきり言おう。マツタケよりも、旨い。

 さて、9人分のパスタに使用してもシイタケは一向に減らない。
 お礼の電話をした際に、おばさんが「バターでソテーすると、いちばんおいしいから」と薦めてくれた通りに、翌日の夜はバター炒めにして食す。
 うん、確かに、これこそ極上のシイタケだからこそできる、極上調理法だ。
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 それでもシイタケはまだまだ減らない。
 上に住む母にも差し入れたところ、「シイタケと鶏肉のクリームコロッケ」に変身して、我が家の食卓に出戻ってきた。この料理、私が子供の頃によく作ってくれた懐かしいレシピ。手間がかかることもあり、また年老いた父母だけの所帯になって久しいこともあり、もう20年くらいご無沙汰していたのだけど、このコロッケにも、おばさんのシイタケのおかげで久々にありつくことができた。

 さあ、それでもシイタケはまだ残っている。
 そこで翌日は、リゾットにすることにした。今度は、ピエモンテのリストランテでお世話になっているとき、近所の農家から大量のポルチーニの差し入れがあった日に、厨房のおばさんがまかない飯に作ってくれたリゾットのレシピに則って作ってみた。
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 ううむ、自分で言うのもなんだけど、これもかなりイケるぞ。家族もおいしいと感じたのか、ちょっと大目に作ったけれど、あっという間になくなってしまった。

 で、シイタケは…。
 まだ残っている。今夜は何にしようかな。
 頭はシイタケ料理のことでいっぱいで、今日も仕事は上の空…。

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広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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