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VIVA! 牛乳パック

07.11.20VIVA!牛乳パック


 「あー、捨てないで捨てないで。それ、ちょうだい」
 空になった牛乳パックを洗っている様子を嗅ぎつけて、台所にすっ飛んでくる息子。ここのところ、工作にはまっている。
 保育園でも同様。園からの帰途は、毎日ただでさえ汚れた衣類やシーツなど、本人に持たせきれない荷物でいっぱいになるというのに、これに「工作物」が加わって、しわ寄せは全部こちらにやってくる。
 工作といったって、たいてい、牛乳パックをまるごと縦につなげてセロテープでとめただけのトーテンポールみたいなもので(本人いわく電車らしいが)、これを手にしてコンビニに寄り、店じゅうの客に万引きかと思うような視線で一瞬こっちを見られることにも、すっかり慣れてしまった。
 そして、家に帰ったら帰ったで、牛乳パックが山のように、もとい土砂崩れのように散乱し、とても人間の暮らす部屋とは思えない。
 
 そんな我が家の土砂崩れが、あるものをきっかけに最近ちょっと、整理されてきた。
 シルバニアン・ファミリーっていうのをご存知だろうか。
 「ねえママ。シルバニアン・ファミリー、欲しいな。保育園にもあるんだよ」
 シルバニアン…??なんじゃ、そりゃ。
 デパートに息子をつきあわせると、いつも、おもちゃ売場に立ち寄ることを条件にされてしまうのだが、保育園にもある、と言われると、つい放っておけず、息子に手を引かれ、シルバニアンなんちゃらの売場に到達する。

 うわ、か、かわいい。
 シルバニアンなんちゃら、かわいい~じゃんか~!
 私はちょうど息子くらいの年のころ、それはそれは「プラレール」と「ミニカー」が大好きな子だった。男の遊びが好きだったわけではない。「リカちゃん人形」にもはまった。要は「ミニチュア」が好きだったのだ。社会の縮図が、自分の好きなような配置や構成で、目の前で再現できる、この楽しさったら、たまらなかったのを覚えている。
 このシルバニアン・ファミリーとやらが、いったいいつの時代に生まれたのか知らないが、これ、もし35年前に存在していたら、間違いなくハマっていたに違いない。

 ショコラウサギ、クリームネコ、マロンイヌ、くるみリス…といったいろんな動物たちの、親指ほどの小さな小さな人形。それぞれに、お父さんお母さんがいて、子供がいて、双子の妹弟たちがいる。ゆえに何十種類という人形が揃う。
 さらに、双子のあかちゃんがぴったりとおさまるベビーカーや、ベビーベッド、そのベッドには上げ下げできる柵がついていたり、引き出しも出し入れできたり…と、実によくできている。
 机、キッチン、洗濯機といった身の回りのものを、一つ一つ買い足せるようになっている仕組み。そんな巧みな商法にも、だまってひっかかろうではないかと思ってしまうほど、とにかく微にいり細にいり、よくできていて関心する。大きな家も売っていて、さながらドールハウスの世界だ。

 息子が、ベビーベッドとショコラウサギの赤ちゃんがセットになった、いわゆるスターターにふさわしい商品を手に取って、とっととレジに向かおうとするのを引き止めて、
 「あ、ウサちゃんのお母さんはいらないの?見てみて!洋服ダンスもあったら素敵!ベビーカーも買っとく?ほら、ちゃんと走るよ…」
 と爆走しそうになった自分を必死でこらえ、ショコラウサギとベッドのセットだけを買って帰る。
  
 家に帰り、牛乳パックが散乱する部屋で、ショコラウサギを何度もベッドに寝かせたり起こしたりして、ちまちまと遊んでいた息子が、ふと思いついたように言う。
 「ねえ、ママ。ハウスつくろうよ。牛乳パックで、ウサちゃんのハウス」

 いーねー!それ!すっごくいーねー!
 私の頭の中に、ぱっとイメージが湧いてきた。気がつくと、散乱していた牛乳パック二つとハサミをわしづかみにしていた私。
 ここをチョキチョキして、屏風折して階段に…、テープでとめて、とめて、またチョキチョキして…。あ、このスペースは広いベランダにしよう!赤ちゃんウサギが落ちたら大変だから、柵もつけて…
 うわー、どうしよう!たのし~い!とまらな~い!
私の、まるで殺気じみたまでの勢いを感じた息子は、横でセロテープを数センチずつ切りだめしては、私がすぐ使えるようにテーブルの端に貼っていく。
 定規で測るわけでもなく適当にジョキジョキやったから決して精巧ではないけれど、ものの5分で、ショコラウサギのための小さな家を作ってしまった。
 「うわー!ママって、すごーい!」
 母の威信、回復である。

 たまたま遊びに来ていた中学1年の甥っ子も、できあがった家を見て久々に工作魂をくすぐられたのか、さらに「電気もつけよう!」と理科の実験で使った電池と線をとりつける。
 「すごーい!電気も点いた!」
 親子で手を取り合って、バカみたいに大喜びだ。

 「はい、ウサちゃん、おウチできたよ。ベッドは一階ね。電気消す?それともベランダに行って遊ぶ?」
 ひとりでぶつぶつ言いながら、背中をまるめて遊ぶ息子。
 「ママ!テレビもつくろうよ!ウサちゃん、テレビ観たいって言ってる」
 よしきた!
 牛乳パックを切り込んで、小さな小箱をつくってやる。そして息子が、これに「画面」を書き込む。
 「観て!桑田が歌って、人がたくさんイエーイってやってるところだよ」
 ショコラウサギの赤ちゃんは、サザンのライブを観るらしい…。

 その晩、息子が寝静まったあとで、やり残した用事を済ませに暗い部屋に戻ると…
 ショコラウサギの家が、ぼーっと闇に浮かび上がっていた光景は、なかなか幻想的だった。

 それにしても、工作って、なんて楽しいんだろ。しかも、親子の世界がこんなに広がるなら、牛乳パックも悪くない。
 どころか、最近では、夫が捨てようとするのを
 「あーっ、ダメっ、捨てないでよ。せっかく洗って乾かしてたんだからっ」
 と私が言っている。ついでに、見た目のこともあるから、当座のところ明治の「おいしい牛乳」で揃えておくことに決めた。ちょっと高いけどやむを得ん。

 「ママー!ベランダにテーブル置こうと思うから、今日はテーブル作ってー!」
 おいおい、たまには自分でやらなきゃ工作の意味がないだろう。
 そんなお調子息子の、明日は5歳の誕生日。
 プレゼントは…牛乳パックか!?
 いやいや、むしろ、牛乳パックに日の目を見させてくれた、シルバニアン・ファミリーだろう。家や家具は牛乳パックで作るからいいとして、マロンイヌとくるみリスの家族でも買ってやるかな。
 それにしても、人形だけだと、なんてリーズナブルなプレゼント。
 やっぱり、称えるべきは、牛乳パックか。

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コメント

Stella

こんばんは。
私の娘は高校2年生。幼稚園から小学校にかけてシルバニアンにハマっていました。今も出窓に飾っていますよ。
先日「トルテリーニが食べたくて」が届きました!とっても素敵!イラストもritzさんなんですね!才能ありすぎ~天は何物も与えてますね~♪
今日は地元のイタリアンレストランに行ってきました。
シェフはBari出身でマンマの味のレストランです。
ボーノボーノでした。
いつか、ritzさんのお料理教室参加したいと思っています!

ritz

お嬢さんのように、うちも、大きくなっても大切にしてくれるほど
「きちんと」ハマってくれるといいんですけど…。
拙著、わざわざお買い上げ頂き恐縮です。
お忙しい日々の妨げにならないよう、気軽に読んでくださいね。
いつかぜひ、遊びにいらしてください!
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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ritz

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