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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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小布施参り。

07.10.17栗きんとん

 先月の栗拾いの話でも触れたように、栗バカ人生ウン十年の果てに、栗はそのまま食べるのが一番うまいという結論に辿り着いた私ではあるが、この世にただ二つだけ、毎年食べないと気がすまない栗菓子がある。
 その二つ目が、これ。
 長野県小布施の御三家栗菓子屋のうちの一つで作る「栗きんとん」。
 正月に食べるようなべっとり餡にからまった甘露煮の「栗きんとん」ではなく、もちろん、茶巾しぼりの「栗きんとん」だ。
 
 毎年秋になると都内のデパ地下でも、岐阜あたりの有名な店の栗きんとんが人気を集めているけれど、一度、この小布施の栗きんとんを食べてしまうと、もう二度とお金を出してまで他の栗きんとんを食べたいとは思わない。
 だもんで、ついつい、毎年足が向いてしまう。
 12年は通っている小布施ファンとしては、年々、人が多くなっていることだけがちょっと気がかり。
 観光バスでやってきた団体客が、一年中売ってるような栗羊羹や栗らくがんにわざわざ群がっているのを横目に見ながら、私はホッと胸をなでおろしつつ小さな声で栗きんとんを注文するのだ。

 最初の頃は、昼ごはんも栗懐石を予約したり、あの店のモンブランだ、この店の栗最中だ、栗ソフトクリームだと、とにかく片っ端から制覇したものだけど、最近ではどうでもよくなった。
 他の栗菓子屋には目もくれず、しかしその代わり、実は立ち寄る先がもうひとつだけある。駅の反対側にある栗農園だ。
 早々にクルマをピックアップし、小布施のメインストリートをはずれて小布施駅へ。たった二両の長野電鉄が通り過ぎるのを待った後、小さな踏切を渡ると、そこは一面、栗林。観光客で賑わう街の喧騒が嘘のように、しーんとした静寂に包まれた別世界は、雰囲気も、景色も、他の地方の栗農園とは全く違う。
 きれいに手入れされた背の低い栗の木には、たわわにイガが実り、地面は一面、苔のように美しい緑で覆われている。芝生だろうか、車窓から見ると本当に苔にも見える。なんだか、銀閣寺の裏庭にでも迷い込んだようだ。
 いつもと同じ栗農場に行き、1キロだけ購入する。
 古そうな農家だけれども、まさに栗御殿。広くて立派なお屋敷の片隅で、栗の選別作業を行っている若いご夫婦は、服装も雰囲気も、とても農家の人とは思えない。このまま原宿を歩いていたらミュージシャンといっても通用しそうなくらい。
 それにしてもかわいい奥さんだ。かっこいい旦那さまと向かい合わせに座り、おしゃべりしながら愛しい栗を選別する生活。なんか、いいなあ~。栗農家に嫁ぐという選択肢を、私は、なーぜ思いつかなかったのだろう。
 「今年はなかなか寒くならないから、まだ小さい品種しか採れなくて。すみませんね」といいながら袋詰めしてくれた栗は、しかし、見事に虫食いも、傷も、ひとつもない。さすがである。

 高速が渋滞になる前に、早々に帰途に着く。 
 家に帰って、買ったばかりの栗で、何はさておき栗ごはんを作る。
 甘い。小布施の栗はどんなに実が小さくても絶対甘い。それだけじゃない。ぽくぽくとしていて栗をむくときから身離れが断然いい。色も黄色くて、味も濃い。すべての米粒に旨みをしみこませてしまう、やっぱり小布施の栗はすごい。
 これだけの栗を生産するのに、いったいどれだけの工夫や入念な手入れが必要なのだろう。その日々の努力たるや、素人の想像を絶するものに違いない。小布施ブランドを背負うことのプレッシャーもまた、しかりだろう。
 やっぱり栗農家に嫁ぐより、食べるだけの人でいたほうが、いっかな。

 食後はいよいよ「栗きんとん」の箱をご開帳。一つ一つ、小さな紙で包まれた栗きんとんは、手に取っただけでずっしりと重い。
 まずは二つに割って一口。うーん、うまい。ホックリしたあとに、ねっとりと溶けていく食感もたまらない。断面に、栗の断片がいくつも見え隠れ。この、「ちゃんと裏ごししきってない感じ」がまた、たまらない。
 原材料は「栗、砂糖」。この表示を見つめながら毎回思う。栗と砂糖だけで、どうしてこうも他と違う栗きんとんができるのだろう。
 天下の栗の里、小布施で、中でも栗がいちばんおいしいほんの数週間にしか作らない栗きんとん。これぞ、贅沢中の贅沢だ。

 こうして今年も、我が家の秋の年中行事、無事終了。「栗きんとん」と「栗」を買って帰るだけの毎年代わり映えしない内容だけど、それでいい。全然いい。ただ、それさえしておかないと平穏に暮らせないような気がする、まさに初詣みたいなものだ。
 さて、何を祈ろうか。
 私の好きな秋冬到来。今年も家族元気で、おいしいものがいっぱい食べられますように。


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秋を、満喫していますね。

秋を満喫していますね。
私も、来年は、栗ひろい行きたいわ!秋は、あっという間にすぎてしまうからー。
リッツの、ブログ、楽しませてもらっています。
イタリアに行った気分になったり、温泉に行った気分になったり。。。
益々楽しいブログ、楽しみにしています。

私生活の切り売りみたいなブログで、毎度すみません…。
来年は、二家族で栗ひろい行きますか!

栗きんとんと言えばこの前、こんなん食べました。
http://taneya.jp/new/07/09/01_saigiboku.html
店頭売りしかないのですが、滋賀県たねやの栗きんとん「西木木(さいぎぼく)」はおいしかったですよ。
もちろん「栗大臣」のritzさんならご存知でしょう。
それは、焼き栗をイメージした上品なお味でした。
でも手がかかっているせいか強気の値段ですね。
最近、ブログの更新が早くて読むのが追いつきません。

西木木、確かに強気な値段ですよね。でも、「たねや」のお菓子は好き。ご進物にもよく使っております。
それにしても、老若男女問わず、栗ネタへの反響が多くて嬉しい限り。イタ馬鹿日誌と並行して、クリ馬鹿日誌でも始めようかな、なんて。
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Profilo

ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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