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天空の、雪見宿

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思いつく唯一の夫婦共通の趣味といえば、「温泉」くらいだろうか。

日本秘湯を守る会のスタンプもとっくに満了になったほど、特に、人里離れた一軒宿に並ならぬ郷愁を覚える。四季折々の季節と素朴な田舎料理を楽しみながら山里の一軒宿を転々とする旅は、
田園のアグリツーリズモに泊まりながら、レンタカーで転々とするイタリアの田舎旅に、どこか共通するものを感じるからかもしれない。

中でも、我が家の温泉頻度が最も高いのは、なんといっても、冬。
スキーに出かけるためでなはく、雪見温泉のためにわざわざ四駆のクルマにし、毎冬スタッドレスに履き替えているほどだ。
雪という沈黙でシャットアウトされた宿は、へき地感をいっそう増して、日常からの現実逃避を、よりリアルなものにしてくれるのだ。

しかし、こうしょっちゅう足を運んでいると、通いたい宿はおのずと限られてくる。
これは持論だけど、本当に居心地のよい宿というのは、一泊15,000円~23,000円の価格帯で、どこまで真のサービスを追及しているかに尽きると思う。
ゴージャスな懐石料理なんていらないし、やたら着物の衿を抜いた女将も見たくない。
それよりも、都会の喧騒を逃れてきた客がただただ心の底からくつろがせてもらえる、そんな目に見えないサービスのために力を尽くしている宿がいい。

そういう意味で挙げたい宿は、今のところ、奥飛騨・熊本の山奥・新潟は南魚沼あたりに数軒あるのだが、この週末に行って来た長野県奥山田温泉の「満山荘」もその一つだ。

今年は暖冬とあって、どこへいっても積雪が少なくがっかりだったけど、今回は違った。

いくつかの山里を通り過ぎ、山道を延々と上っていくと、カーブを切るたびに、霧が濃くなり、車窓の景色の白さが増していく。さらに上へ、上へ。カーナビに、これ以上、道が表示されなくなり、はた、どうしたものかと思いきや、霧の合間から一軒の宿が見えた。これが「満山荘」だ。

御歳80歳になる「おじいちゃん」が宿を始めたのは昭和30年代初め。以来、スキー客や団体旅行客で賑わいを見せた時代はそう長くは続かなかった。
後を継ぐためUターンしてきた息子さん夫婦が最初にとりかかったのは、なんと、客室を「減らす」ことだったとか。従業員も一切雇うのをやめ、その分のコストで、より質の高いサービスの提供を手探りで築きあげてきた。
決して完璧ではないが、リビングも客室も、友人の別荘に来たような、なんともいえない居心地のよさがある。「あつい湯」と「ぬるい湯」が用意された石造りの内湯からつづく露天がまた、いい。道路から丸見えなのも、端にいって立ち上がると男湯に入ってる息子と会話ができちゃうのもご愛嬌。
なんといっても、朝になればこの風呂から、北アルプスの白く輝く山並みが、見上げるというよりまるで見下ろすような目線で、見事に一望できるのだからたまらない。ちなみにこの風呂、「一万尺風呂」と名前が付いている。

この宿、おじいちゃんとおばあちゃん、そして息子さん夫婦しかいない、完全な家族経営。
夕食は、夕方から降り出した雪を見ながら食事どころでいただく。地の食材を使いながらも洗練されている料理は、すべて息子さん夫婦の手づくり。季節の天ぷらは、フキノトウ、タラノメと、揚がるたびに、あつあつを一卓ごと配って回る。
あっちの卓から「お水くださーい」と子供の声がすれば飛んでいくし、こっちの卓から「この山菜、なんだろ」と声がすればどっからともなく現れて説明してくれる。
驚くべきことは、こうしたすべての仕事を、二人だけでやっていることだ。本当は厨房にたくさん人が隠れてるんじゃないの?もしくは、お二人は本当に人間ですか?と疑いたくなるほどだ。
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ゆったり湯につかり、たらふく御飯を食べる。ふと窓の外を見ると、板の間のテラスにしんしんと雪が降り積もっている。(冒頭写真)
暗黒の闇に浮かび上がった、純白のじゅうたんを見ていると、まるで、天井人にでもなったかのような、神聖な気分だ。

下界では、この瞬間も、面倒な人間模様や、つまらんできごとに翻弄されてる人がたくさんいるんだろうなあ。かわいそうに。

かくいう自分も、週明けからそんな下界に舞い戻るわけなんだけどね。

 

 

 
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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Author:ritz
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