2023
Sep
05
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7年ぶりに、プーリアの故郷へ。

【8月8日】
Narducciファミリーとのお付き合いは、15年ほど前。一族で経営していたアグリに泊まったのが最初。
GiuseppeとAntonella夫妻の一人娘のMariaが、当時5歳くらいだったうちの長男Mの一つ上で、言葉も通じないのに2人でずーっと遊んでた。宿を発つ時に「また来るね」というと「そういって来てくれる外国人はほとんどいないのよね」というマリアの一言が忘れられず、その後、夫妻が一族から独立して彼らだけの宿を始めたのを知り、久しぶりに訪れることを決めたのが7年前。
子供たちは当時の記憶などないだろうと思っていたのに、マリア本人から私に直々に「私のサマーキャンプと重なっちゃう、1日でも早く来れない?Mに再会したい」とメールが来て、万象繰り合わせて彼らの新しい宿を訪ねたのだがこの時のマリアが優しくてきめ細やかで美しくて、本当にマリア様みたいに成長していてびっくりしたものだった。
そして今回、7年ぶりに再訪してみると部屋は部屋数も5室に増え、その全てが常連客。ミラノからの家族はコロナ禍を経て4年ぶりに、韓国系のスエーデン人は、もう30年の付き合いで彼らが宿を新たに始めてからは、こちらの宿の方に毎年必ず来ているそう。パルマの大学に進学したマリアも夏休みはずっと帰省して宿のお手伝い、ますます気の利く女性に成長していて嫁に欲しいくらいだ。
初日の朝、そんな彼らと常連客とで朝食をとりながら、早くも料理の話で盛り上がり、「え?リッツ riso patate e cozze、知らないの?バーリの伝統料理なのに」となったらもう、「えーっと今夜は何人いるんだっけ」と数え始め、で、馴染みの魚屋に電話して「ムール貝、ありったけ取っておいて!」と。



夕方からアントネッラと厨房でせっせと料理にとりかかっていると、ビーチから帰ってきた家族たちが、ひとり、またひとりと、いつの間にか厨房にみんなが興味津々に作業台を囲む。
そしてそのまま、男たちは外のテラスにテーブルセッティングをし、パンを並べ、ワインを開け、夕飯に突入。

この料理、「米とジャガイモとムール貝」という、ただ材料羅列しただけの料理名だけど、これなまた、シンプルな材料なのに、手間と時間とコツがいる。お米の分量やじゃがいもの厚さ、トマトの際の目の大きさにまでAntonellaに細かく指示された理由が、食べてみてよーくわかった。

炊き込みご飯のようでいて、ご飯は主役ではない。ムール貝、ジャガイモ、お米、それぞれの個性が立ち、でもどれか一つ欠けても成立しない、ただただ唸るしかない味わいだ。
Antonellaからはいつも、魚介や屋さんを使った料理をたくさん習ってきたけれど、こんなに料理へのこだわりや力強さがあった人だっけ?と驚くほど。

Giuseppeいわく「一族から独立して自分たちだけの宿を始めてからAntonellaは水を得た魚のように自分の料理をどんどん深めている」らしい。
かくいうGiuseppeも、一族の宿にいたときより、ますます生き生きとしている。
誰も雇わず夫婦だけでコツコツと築き上げてきた唯一無二のホスピタリティは、お客さんの心を掴んで、こうしてみんな、親戚の家に帰るかのように、ここへ帰ってくるのだ。
そして満天の星の下、大宴会は、深夜まで続くのだった。

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