2023
May
28
0
生きててくれて、ありがとう。

24年前、会社を2ヶ月休んではじめて単身でイタリアへ乗り込んだ私を、娘のように「育てて」くれたフランコとネリーナ夫妻。
その後の私の、イタリアの各地の厨房に「突撃スタイル」で飛び込む勇気と要領は、ネリーナから教わった。
どんな状況にも焦らず怒らず、のんびりやりすごすほうが結局うまくいくことは、フランコから教わった。

彼らの、この20年間は決して穏やかな道のりではなかった。
それでも、ボローニャにきた時は、必ず時間を作ってくれたし、当時の元気な「父母」を装ってくれた。
でも、今回ばかりは、体調もすぐれず、おそらく今までで最も大変な時期であることは、周囲の人の話から察しがついていたので、私から無理に連絡を取ることは控えていたのだけど、
なんと、ものすごい「偶然」、ほんとうにただの「偶然」で、彼らと会うことができた。
神様って、ほんとうにいるんだと思った瞬間。感謝。

アンナマリアは、その彼らの住むアパートの上階の一人で暮らす住人。遠巻きに彼らの様子をいつも見守っている。
若くして結婚し、ご主人の海外赴任でアメリカ生活も長かったアンナマリアは、インテリでいつも穏やかで冷静。
ご主人をずっと前に亡くした未亡人だけど、この年で、実はひ孫もいるすごい人。
私がボローニャに来るたびに、不安定なフランコとネリーニに代わり、きちんと夕食をセッティングしてくれて、もてなしてくれる。
実は最近、彼女に新しい恋人ができた。といっても、それはフランコ・ネリーナ夫妻の旧友で、私も24年前にここで居候していたときからのつきあい。

彼には以前、ジリオーラという、ボローニャ大学で教鞭を取るすばらしい奥さんがいて、夫妻には、私も子供も大変お世話になった。フランコとネリーナが私のボローニャの父母なら、ジョルジオとジリオーラは私の叔父叔母のような人、
フランコとネリーナが都合の悪い時は、彼らがいつも私たち親子を迎え入れてくれていた。
しかし、ジリオーラは8年ほど前にガンで亡くなってしまったのだ。
子供もなく、おしどり夫婦だったこともあり、ジョルジオのショックは計り知れない。ずっと家にこもっていた彼だったが、私がその後、ネリーナとフランコの家に遊びに来た時に、やっと顔を出してくれて、その時に、上階のアンナマリアもいっしょに食卓を囲んだ、これが、アンナマリアとジョルジオの出会いだった。
それから毎回、ここに来るたびにアンナマリアがセッティングしてくれていた夕食に、必ず顔を出すのがジョルジオ。
もしかしたら、いい仲なんじゃないかな、と思っていたけど、その後も、ずっとおつきあいがつづいているらしい。
今回は、二人が、近所の魚介で有名なレストランに連れて行ってくれた。
ジョルジオがまた、昔のように冗談を飛ばすようになって、ワインのうんちくをたれるようになって、年は取ったけれど、なんだか以前よりも素敵なナイスおじさまだ。
こんなふうに3人で幸せな時間を過ごす日がくるなんて、ジリオーラがなくなったあとは想像もできなかった。
天国のジリオーラも、きっと、またあの静かな笑みをうかべて、喜んでいるに違いない。



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