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甘いささやき。

2007.9.11甘いささやき


すごい寝相だ。
これが、前の晩に、私と甘い言葉を交わした男の姿なのだろうか。

クラスで一番小さい4歳児と、同じく小柄な私たち夫婦が川の字で寝るのに、普通なら、シングルベッドを二つ並べれば十分なのだろうけど、息子の寝相があまりにもひどすぎて、ベッドの横に空いたスペースに、無理やり布団を敷いている。
このベッドの上と、床に敷いた布団の上を、彼は一晩じゅう、縦横無尽に駆け巡る。
息子がゴロゴロと攻めてくるたびに、私たちも寝場所を彼に明け渡さなくてはならない。
眠りに落ちるまでは私にじっと寄り添って甘い言葉をささやいているというのに、えらい違いだ。

毎日、昼間は息子と離れている私にとって、
一日の終わりに息子を寝かしつける時間は、かけがえなのない時間のひとつ。
たわいない言葉のやりとり一つ一つだって、私にとっては、「今日の息子」を知る大切なチャンスなのだ。
ただでさえ時間が押しているので、一刻も早く寝かさなくちゃいけないことはわかってるのだけど、彼の「誘い」にも、ついつい乗ってしまう。

「ねえ、ママ、“シカ”」
心を鬼にして目をつむって寝たふりをする私の耳元で、さらに
「ねえ、ママ。“シーカ”」
と繰り返す。これは、「しり取り」のお誘いだ。
「いいよ、じゃ、一回だけよ。“カメ”」
「“メーローン!” あ…、終わっちゃった…」
せっかくまんまと母を巻き込むも、あっけなく終了。
さ、今度こそ、本当に寝よう、と私は目をつむる。

すると今度は、深い深~いため息をもらす息子のM。
「あ~あ、Mはね、ママに言いたいことがあるの」
え?なに?
「あのね、Mはね、ママとケッコンしたかったな…」
き、きたーっ。ついに、うちの息子も、ママとケッコンしたい発言だ。
妊娠中、お腹の中の子が男だと判明して立ち直れなかったとき、男の子を持つ友人、知人、果ては産婦人科医にまで、決まって言われた言葉がこれ、
「あら、かわいいわよー、男の子って。『ボクはママと結婚するんだ』なんて言うんだから」
そんなこと息子に言われたって、別に嬉しくもなんともないわ。どうせそのうちクソババアとか言われるんだから。と突き返していたのだが、
しかし、確かに、これは…、むむ、ちょっと嬉しいかもしんない。
「Mはママとケッコンしたかったな。でも…、パパが先にしちゃったから…」
うっ、嬉しい。かなり嬉しいかもしんない。
「そうよね、パパとケッコンなんかしなけりゃよかったよね」
阿呆な発言が自分でも止められない。
「あ~あ、Mは、ママより先に生まれたかったな…」
うううっ、泣ける。泣けてくる。
どうせ男なんて、せいぜい中学まで、とわかっちゃいるが、たとえそうであっても、今の、この一瞬の幸せは、女の子の母親には絶対味わえないであろうと確信する。
男の子産んでおいてよかった…と、初めて、そう思った。

しかし、感動にむせぶ母を置き去りにしたまま、息子は別の会話を切り出している。
「ねえママ、パパの手って、テラくさいよね」
え?テラくさい? 寺臭いってこと?なんだろう、線香のにおいとか、だろうか。
「テラくさいって、どんなにおい?」
「わかんない。でも手のにおいでしょ?」
うーむ、ますますわからんが、彼の中では、どうやら“手らくさい”って言葉ができてるのかもしれない。
ここでやっと私は気づく。
「テラくさいってさ、もしかして…!照れくさいのこと?」
「あ、そうそう、それそれ。テレくさい!」
子供ってほんと、面白い。さらに突っ込んで質問してみる。
「じゃあさ、Mは最初に、パパの手がテレくさいって言ってたけどさ、テレくさいってどんな臭い?」
「えーっとね、汗くさいこと」
そうねー、確かにパパは汗臭いよねー。
面白い。子供って、こうして試行錯誤しながら新しい言葉を引き出しに入れていくんだ。

感心したり、感激したり、笑わせられたり…、
息子とベッドで過ごす、かけがえのない甘いひととき。
寝かしつけてるはずが、相手をしてもらっているのは実は私の方かもしれない。

こんな幸せな時間も、あと数年か。
ああ、できることなら、このまま時間をとめたいものだ。

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コメント

francesca

mammone
冒頭の2行を読んで、えっ、この写真はご主人?と、思わず見直しましたが、そんなはずはなかったですね、失礼いたしました(笑)
M君は、起きている間だけではなく、寝ている間も元気いっぱいなのですね!
「Mは、ママとケッコンしたかったな~」というM君の気持ちが、1日でも、いえ、1分、1秒でも長く続き、イタリア男性のごとくmammoneに育ってくれることをお祈りしています。
それで思い出したのですが、昨年の5月に十年振りに会った短大時代の友人が、「うちの息子(大学生と高校生)は、ママが一番素敵だと思っているのよね~」とサラリと言い放った時、その場にいた私と二人の友人は聞き流したフリをしたのですが、後日、その二人のうち、お嬢さんが二人いる友人が、何気に、「○○ちゃんのあのセリフには、引いちゃったわ~」と言ったので、ああ、同じように感じていたのだと思いました。どうやら、日本もmammoneが増加しているようなのでご安心下さい。
今宵も、M君は最愛のmammaに甘い言葉をささやきながら夢の世界へと旅立ち、ritzは幸せなひとときを享受したのでしょうね♪ どうぞ、二人の素敵な男性と共におやすみくださいませ! Beata te!

ritz

francescaさま
おっしゃるとおり、これがイタリアだったら、
子供が男でも、なんら寂しさを覚える必要はないと思います。
「結婚しても実家の母親と近しいままでいる日本男性はまずいない」と
イタリア人に話すと、みんな口をそろえて
「信じられなーい!」って言うんですよね、特に男が。

ああ、日本に、もっとマンモーネを!
推進委員会でも立ち上げようかしら。



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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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Author:ritz
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