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イタリアオペラ発、イタリアオペラ行き。

2007.9.9イタリアオペラ発、イタリアオペラ行き


「♪タラララララ タララララララ タラララララ タラリラン…♪」
風船でサッカーごっこをしながら息子が口ずさむ鼻歌、
どっかで聞き覚えがあるような…いや、聞き覚えどころか、これって、ロッシーニのオペラ「オテッロ」の序曲ではないか。
料理習得以外に、この夏のイタリアのもう一つ大きな目玉だった、ペーザロでの「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル」。
4歳児という爆弾を抱えての、戦慄の「オテッロ」鑑賞がいまだ記憶に新しい。
専用の託児所もない代わりに、日本と違って未就学児でも同伴可能なイタリアのオペラ。
またとない本場イタリアでのオペラ鑑賞に勇気を出して子連れで挑んだ私と夫であったが、
約束どおり、なんとか一言も声を発しないでいてくれるものの、
「はー」とため息をついたり、もぞもぞと動いたり、足をぶらんぶらんさせたり…。
せっかくのフローレスの絶世の美声を愉しむどころか、私と夫の頭の中には、いつ爆発するかもわからない時限爆弾のチッチッチッチという音が刻まれていく。
後半は、やむなく私は息子と退場。廊下での立ち聞きと相成った。

引き換え、たっぷり鑑賞した夫は、遅まきながらロッシーニに目覚めたのか、
もしくは、「オテッロ」を堪能できなかった私への嫌味かというくらいに、
今になって、家でちょくちょく「オテッロ」のCDをかけている。
息子は、そんな耳から入ってきたメロディラインを、自然と覚えてしまって鼻歌を歌い始めたようだが、
ああ、だったら、イタリアに発つ前に、せっせとCDをかけて刷り込んでおけばよかった。自分が知ってるメロディが目の前で繰り広げられれば、息子もちょっとはマシにしてくれていたはずだ。

ペーザロをご一緒した、音楽ジャーナリストのSさん一家のご子息、Tくんは、
弱冠小学校3年生だというのにご両親とともに最後までしっかりと鑑賞、
その晩はシャワーを浴びながら「オテッロ」のアリアのひとつを口ずさんでいたというが、
実はSさんはイタリアへ経つ2ヶ月も前から、クルマの中でずーっと「オテッロ」のCDをかけて、Tくんを洗脳していたのだとか。
ご子息の場合、そもそも生まれ育った環境自体、うちとは根本的に違うことは承知の上だけど、
そうか、うちの子も、こうしてCDだけで鼻歌を歌えるまでになれるのだったら、
来年の演目を今からせっせと聴かせて、来年も再びロッシーニフェスティバルに行っちゃおうかな~、かな~、かな~、
そんな野心が、ふつふつと湧き上がってきてしまう。

「♪タラララ、タラララ、タラリラーリラー…」
息子は、さらに鼻歌でロッシーニを歌い続けている。いいぞ、いいぞ、その調子だー。
「ね、ママ。この歌、なんの歌だか知ってる?」
すごいぞ。もしかしたら曲名まで覚えたのか!?
「うん、知ってるわよ。『オテッロ』でしょ?」
「???なあに、それ???」
ああ、やっぱダメだ、こりゃ。

さて、そんなペーザロでの、とほほ体験を忘れさせてくれるかのような素晴らしい公演を、
日本で久々に、しかも立て続けに体験することができた。
先週一週間にわたり、文化村で引越し公演をしていた「チューリッヒ歌劇場」。
恥ずかしい話、そもそもがイタ馬鹿ゆえのオペラファンゆえ、イタリア以外の歌劇場にはめっぽう疎い。
その上、今回の二公演のうちのひとつはR・シュトラウスの「バラの騎士」。
未体験ゾーンのドイツ語オペラは、前半ちょっと眠くなってしまったのだけど、
それでも期待の若手指揮者と評価の高いオーストリア生まれのウェルザー=メスト率いるオケが奏でる曲は、とにかく美しい。
しかし、衝撃的だったのは、もうひとつの演目「椿姫」。
ヴェルディの名作といはいえ、実は私自身、その旋律はあまりにもロマンチックすぎて、ベタすぎて、あんまり好きじゃなかったのだけど、
がしかし、ズバリ、こんなにも“気品あふれる”椿姫は聴いたことがない。
エヴァ・メイ、レオ・ヌッチといったベテラン歌手の歌声の素晴らしさはもちろんだけど、
それ以前に、音の一つ一つが、透き通るように美しい。
「椿姫」のすべての曲が、こんなにも高貴な作品であったことに、今になって気づかされたことに、ショックさえ覚える。
まさに、オーストリア人のウェルザー=メストに両頬をビンタされた気分である。
はい、これからはゲルマン系のオペラも見ます、聴きます、ドイツもスイスもオーストリアのも、見ます、行きます。思わず心の中で正座して、そう誓ってしまった。

興奮冷めやらぬうちに、その二日後は、ロリン・マゼール率いるトスカニーニ交響楽団のコンサート。
メジャーな演目の日を選んで、「ブラームスの交響曲1番」。
ロリン・マゼールは、初めてその生演奏を聴いたのだけど、想像していたのとは正反対で、どっしりと骨太なブラームスで、聴き応え十二分。
トスカニーニ交響楽団の演奏も、のびのびとしていてとっても爽快。
ちなみに、こうした海外の楽団のコンサートではアンコールが、実は本演目より楽しみだったりするのだけど、
やっぱりトスカニーニとくればヴェルディか?という予想が的中し、締めは「シチリア島の夕べの祈り」。ああ、このまま座り続けて、このまま彼らの演奏でオペラが始まったら、どんなにか、どんなにか幸せだろう、と思わずにいられなかった。

ロッシーニから始まって、R・ストラウス、ヴェルディ、ブラームスと行ったり来たりしたこの一ヶ月、でもやっぱり締めはヴェルディで喝采。
結局は、やっぱりイタリアに帰ってきちゃうのであった。





(そんな折、ルチアーノ・パヴァロッティの訃報。
ペーザロにいたとき、テレビで重体のニュースを見てからちょうど一ヶ月。オペラ歴の浅い私は、ついに、その生の声を聞けずじまいだったのが、本当に本当に残念…)

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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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