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夏の終わりのリゾット。

2007.9.6夏の終わりを告げるリゾット


 どんなにその国の料理が好きでも、さすがに数週間もいれば日本食が恋しくなるはずだと自分でも思うのだが、不思議なもので、イタリアに限っては、たとえ一ヶ月いようが二ヶ月いようが、白い米粒のひとつでさえ恋しいと思ったことがない。
 それどころか、日本に帰ってからもひたすらイタリアが恋しくて、とにかく未練たらたらで、頑なに「イタリアンしか食べたくない」という病気がしばらくの間続く。
 今回は特に、重症のようだ。

 もちろん、日々の夕餉には、いろいろ材料を買い揃えて大層なイタリアンを作る余裕はないけれど、それでも、冷蔵庫の中の余った野菜や、冷凍しておいたハムやひき肉、時にはシラス干しなんかも駆使して、無理やりパスタソースにしたり、リゾットにしてしまう。
 イタリアから帰って、そんな毎日がずーっと続いている。

 昨夜は、先週末の料理教室で使ったズッキーニが大量に余っていた。
ズッキーニとくれば、やっぱりエビ!今夜は得意料理の「ズッキーニとエビのリゾット」にしよう!
 朝からそう決めていた私は、会社帰りに駅地下のスーパーで、ささっと芝エビのむき身を買って、保育園へと急いだ。

 さて、ここで突然、話は変わる。
 いつの間にか蝉の鳴き声が聞こえなくなったかと思ったら、我が家のカブトムシのコロちゃん(♀)がついに昇天。後追うように十兵衛(♂)も息を引き取った。
 夏の終わりをしみじみ実感しつつ、昆虫嫌いの母としては、本来ならここで、夫と息子に内緒で密かに「ガッツポーズ」といきたいところ、しかしながら住人のいなくなった水槽の横には、土の入ったペットボトルがいつの間にかたくさん並んでいる。
 夫が、いつもは飲みっぱなしで放置しているペットボトルを、最近は何故かせっせと洗浄し、ハサミで半分に切ったりしている姿を見て、息子の工作の手伝いでもしてるのかと感心すらしていた私が甘かった。
 そう、土の中には、コロちゃんと十兵衛の遺伝子を継いだ子孫たちが眠っているのだ。

 カブトムシの幼虫。
 幼少の頃に、その不気味な姿を目にして以来、好物のキャラメルコーンが一切食べられなくなった私。もしかしたら、私の昆虫嫌いも、カブトムシの幼虫に端を発しているといってもいい。
 まさか、その白いキャラメルコーンを、自分の玄関先で育てることになるとは、夢にも思わなかった。

 さて、エビを買って帰った話から、なぜカブトムシの幼虫の話になったか、すでにお察しのことと思う。
 「ズッキーニとエビのリゾット」を作るべく、早足で家に着いた私たち。
 玄関先でカバンの中の鍵をまさぐる私に、
 「ママ~、…見てごらん」
 と、ちょっと意地悪そうな上目遣いで私に話しかける息子。
 彼が指差す方を見ると、なんと、いつもは土の下に隠れているはずの幼虫が、土の上で、にょごにょごとその白い身体をくねらせているではないか。
 しかも、デカい。キャラメルコーンどころではない。
 こ、これは、ついさっき目にした何かにうり二つではないか。
 ま、まさに、さっき買ったばかりの芝エビのむき身だ。オエーッ、気持ちわりーっ。

 しかし、母親たるもの、ここで怯むわけにはいかぬ。
 平静を装い、「ズッキーニとエビのリゾット」は、何とか予定通り慣行。
 味だって、我ながら得意料理だけあって間違いはない。隠し野菜のタマネギ、セロリの甘みはもちろん、ズッキーニもニンジンも、それぞれの持ち味がたっぷり出てるし、エビのお出しも効いている。
 …しかし、私が自分の皿に、エビをひとつも入れなかったことは言うまでもない。

 さようならカブトムシ。こんにちは幼虫。
 そんな夏の終わりの食卓に、ああ、なんとふさわしい一皿であったことか。

 と同時に、イタリアで過ごしたこの夏への未練も、お蔭でなんだかひとまず落ち着きそうな気がしてきた。
 今夜は、久々に、白いご飯と味噌汁と煮魚にでも、しようかな。

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コメント

francesaca

写真を見て、「ズッキーニとエビのリゾット」のレシピ、いただき~、週末に作ろう!と思ったのですが、読み進むうちに、その意気込みが萎えてきました(笑)

ritz

Francesca様、ごめんなさ~い!
しかし、あの海老のような姿から、カブトムシに変身するなんて、
昆虫の神秘って、こういうことなのね、と一生懸命思っています。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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