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「ハゲタカ」ウィーク。

イタリアから帰ると、大抵、しばらくはぽっかりと穴のあいたような、
何をしても満たされない空虚な気分でいっぱいになり、日本で生きていく気力を失うのだけれど、
今回は、幸い、ちょっと違った。
今週に限りだが、毎日午後10時からの一時間が、日々の頼みになっている。

こんな業界にいる身で、あんまり大きな声じゃ言えないけど
もうここ十数年、まともに「テレビドラマ」を見ていない。
題材も、キャストも、ちゃちくて、うすっぺらくて、
こんなものが流行るのか、と思うと、日本人の価値観のレベルがどんどん低下していく様に恐ろしささえ覚える。
そんな私が、おそらく「寺内貫太郎一家」以来の執着度で毎回かかさず見てしまったドラマがある。

NHKで春に放映された、土曜ドラマ「ハゲタカ」。
同時期にオンエアしていた「華麗なる一族」など、申し訳ないけど見る気も起こらなかったほど、完成度の高いドラマだったと思う。
なぜか4歳の息子まで夢中になり、家族揃って、毎回土曜の9時が待ち遠しかった。
その「ハゲタカ」全6話が、今週、なんと6夜連続、夜10時からアンコール放映中。
イタリア後のポッカリ病も、「ハゲタカ」ウィークに救われている。

バブル崩壊後の「失われた十年」から、なかなか抜け出せない日本経済を背景に、
外資系投資ファンドの日本支社長として、傾きかけた企業を片っ端から容赦なく買い叩いていく鷲津政彦(大森南朋)と、
組織の旧体質としがらみにジレンマを覚えながらも、企業の再生に情熱を注ぐ銀行員、芝野健夫(柴田恭兵)の対決からドラマは始まる。

病から復活し、何倍も渋くなって甦った柴田恭平もいい。
なんたって銀行員の役である。もはや「あぶない刑事」なんてタイトルを思い出す人すらいないだろう(思い出してるけど)。
そして、鷲津役の大森南朋の、笑みひとつ見せない引き締まった演技もかっこいい。

「ハゲタカ」とまでなじられる鷲津政彦が、無能な経営者に容赦ない言葉を浴びせる様は、本当に冷酷な人間に見えるはずなのに、
話など理解しているわけがない息子が「ワシヅって、いい人だよね。かっこいいよね」などと言っては、ワシヅのセリフを真似したりしているのが最初は不思議でならなかった。
しかし、回を追うごとに、
冷静で情けのかけらもない、外資の象徴のように描かれていた人間像が、息子の言うような人間像に少しずつ変化していくのだ。

実は、鷲津は、芝野と同じ銀行に勤務していた元後輩。
当時、駆け出し銀行員だった自分が担当していた町工場の社長が、銀行が貸し渋りを行ったことで自殺。
そのショックに蓋をするかのごとくアメリカへ渡り、純朴な銀行員から、日本を食いつぶそうとする「ハゲタカ」へと変身を遂げのだった。

当時高校生だった町工場の娘がテレビ局の経済部記者になって、また、鷲津に倒産に追い込まれた老舗旅館の息子がIT社長へと変身を遂げて、ストーリーに絡んできたり、
数々の企業買収を舞台に鷲津と芝野の二人が応酬を繰り返しては、それぞれに挫折を味わい限界を目の当たりにする中で、
鷲津や柴野もまた、「失われた十年」の犠牲者であることが浮き彫りになってくる。
そして最後は、かつての戦友が、再び戦友として、どん底の日本経済と共に戦っていくことを確信しつつ、ストーリーは終わる。

単に、買収ビジネスを描いた社会派ドラマでもない。
家族や恋愛感情などをネタにした視聴率稼ぎのドラマでもない。
むしろそうした要素は一切排除されているのに、どんなヒューマンドラマを見るよりも、随所で、じ~~~んと心を打たれるのはなぜだろう。

日本人としての誇り、郷愁、人間関係…
そんなことに、ふと立ち返る。
単に、アメリカ的なものさしだけでは立て直すことのできない日本企業・日本経済に渇を入れると同時に、
自分たちがダメにした日本社会は、自分たち自身で新たなやり方を編み出さなければ治らないことを思い知らされるドラマだ。

物語は、あと3回。
いつもは11時近くにやっと眠ってくれる宵っ張りの息子も、
時差ボケの名残か、今週は、9時過ぎに毎日寝てくれているので、連夜、集中して見ている。
共に鷲津ファンの息子には申し訳ないが、今日も10時までに寝入ってもらうべく、
さあ、今日もとっとと帰って、とっとと夕めし作って、とっとと風呂に入れるぞー。
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コメント

tsu

見てみたいですこのドラマ。
逆にイタリアにいると、ふとした時にどううしようもなく日本が恋しくなることがあります。

ritz

送りましょう!
tsuさま
dvdも出てるみたい。PCでなら、イタリアでも観られますよね。なんでしたらお送りしますよ!
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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