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復活祭に、復活を願う旅へ①まずはスタート地点から。

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昨夏のイタリア報告も初日の分で早々に途切れてしまったままだというのに、早くも次回のイタリア行きを決めてしまいました。出発は実はもうすぐ。

日本では桜の開花とともに新年度がスタートする3月末〜4月初め、イタリアではちょうどパスクワの季節にあたる。そのパスクワの頃のイタリアに、かねてから一度行ってみたかった。
パスクワ。いわゆるイースター。日本語でいうと復活祭。いうまでもなくキリストが復活した日。そんなパスクワならではの料理やお菓子は実はクリスマスより多く、ぜひとも習ってみたかったのが一つ。そしてもう一つは、キリストが生まれた日よりも、むしろ復活した日に宗教的な重きを置く、カトリックの、というよりイタリアの人たちは、パスクワにどんな思いを重ねたり、どんな祈りを捧げたりするのかを見てみたかった。

ところでここ数年の復活祭の時期の我が身を振り返ってみると、こんなこと言ったら敬虔なクリスチャンの方に怒られてしまいそうだけど、奇しくも自分自身の復活を願わざるを得ないできごとが続いている。
長男も次男も夜が一番長くなる11月に出産、夜中にオッパイで何回起きても、夜が明ける気配すらない真っ暗闇の中の授乳地獄、せっかくベビーカーで散歩に連れ出せるような月齢になっても外は寒風吹きすさぶ季節。手放しで幸せを噛みしめるような気持ちにはなれなかった。特に次男Nは40を過ぎてからの超高齢出産。周囲に「今度は女の子に違いない」と言われながら今度も男。男でも女でも天から授かった宝物、という気持ちに変わりはないのに、俗にいう産後鬱のような状態が続く。やっと抜け出せそうになったと思いきや今度は初対面のある夫人に「あら、また男だったの?それはお気の毒ね。私は二人目は女だったからよかったけれど」と信じ難い暴言を浴びせられ、再び奈落の底に落ちたりもした。多分に年齢のせいもあったのだろう。体力的にも精神的にも本当にきつく、どうしてもトンネルの出口の見つからない数ヶ月だった。そんな中、起きたのが東日本大震災だ。雷に打たれたように目の覚める思いがした。たくさんの命がなくなり、多くの人が生活を失う現実を目の当たりにし、ただただ猛省した。家族の貴重な命をなんとしても守っていかねば、そして力強く前を向いて子供達に恥ずかしくない背中を見せてやらねばと、4月から会社に復帰することを決める。0歳児入園の壁に見事にぶち当たり区立保育園に落ちても諦めず、近所の小さな無認可保育所になんとか入園。産後4カ月の体にはかなり無理があったし、たった4カ月の我が子を預けるのも勇気が要ったけれど、早々に育休に見切りをつけたのは、なによりも自分自身が母として無理やりにでも復活したかったからに他ならない。抱っこ紐にしっかりとNをくくりつけ、左手に保育園の手提げ、右手にカバンを持ちながら、保育所への近道になるお不動様の長い長い階段を一歩一歩登った初めての朝は今でも忘れられない。

昨年のちょうど今頃は、長男Mが中学受験を終えたばかり。合唱と塾との両立に悩み苦しみながら、両立を貫いたゆえに味わう羽目になったさまざまな屈辱にもひたすら耐え、黙々と現実を受け入れながら努力する本人を親として最大限応援してやろうと親子で邁進した成果は、必ずや第一志望合格という結果をもたらしてくれるだろうと信じていたけど、思いは叶わず。今となって見れば、先生や友達にも恵まれた今の学校を謳歌している姿をみるにつけ最良の結果に導かれたのだと心から思えるけれど、当時は何もかもが後悔ばかりで口では息子を励ましながらも心中は2カ月間ずっとどん底。入学式で迎えてくれた校門の桜を、すがるような思いで仰ぎ見たのを覚えている。

さて、今年はといえば、良くも悪くもこれといって大きな事件もなく、春の訪れを機に是が非でも這い上がらないといけないような谷底を経験したわけでもない。それでも振り返ってみると、夏前に救急車のお世話になったり、片目の不調は原因不明のまま医者にも匙を投げられたりと、体の隅々に年齢を痛感。会社員としても身のふりを考えたくなるようなことばかり。芳しくない一年だったのは紛れもない事実で、今年もやっぱり、自分の復活を願う「復活祭」になってしまった。

しかし今年の復活祭を迎える場所は、お不動様の階段でも、咲き誇る桜の木でもない。イタリアだ。
行き先のひとつとして真っ先に選んだのは、17年前、有給休暇をまとめ取りするという前代未聞のことをやらかして、2カ月間の料理修行に飛び込んだ街、ボローニャ。
もちろん、今でも時々訪ねているけれど、どちらかというと最近は当時のもう一つの修業先だったお隣のモデナを拠点とすることが多く、ボローニャに滞在するのは実は10年ぶりくらいになる。
しかも今回泊まらせてもらうのは、その17年前にホームステイしたネリーナとフランコの家。
住宅街の一角に庭付きアパートを持つ還暦間際の夫婦は二人ともインテリで家柄もよく、夫をおいて一人でやってきた私の心の内までも丸ごと察してくれた。帰国したら会社に席はないくらいの覚悟を迫られているニッポンの会社員としての状況、夫の両親には内緒で来た理由、そして、たった2カ月で一体何が学べるのよ、とわかっていながら、でも何かをものにして帰らなければ後がない30過ぎオンナの焦りまでも汲んでくれたのだろう。
私の料理学校がない日は、知人のシェフに話をつけて習いに行かされたり、料理好きの友達を入れ替わり家に呼んでは家庭料理を作らせたり、なんだかよくわからないまま別荘のある南のプーリアへ、今度は北のトレンティーノへと強制的に連れて行かれては、地元のリストランテに図々しく話をつけ「こちらの女性は日本から来た料理のジェーナリストなのよ。よろしくね」とホラを吹いては厨房に私をひとり置き去りにしたり…。一日として暇な日がないまま毎日が過ぎていくうちに、思えば言葉もろくすっぽしゃべれなかったはずの私がいつの間にかイタリア語をしゃべり、気がつけば一流の専門学校に通うよりも貴重な厨房体験をたくさん積ませてもらっていたのだ。そんなネリーナ自身は料理が苦手で彼女から料理を教わったことは一度もなかったけれど、なんたってそれ以上に、彼女自身がこうして身をもって示してくれた「要領」と「度胸」を彼女から学ばせてもらったからこそ、その後の私が自力でイタリア中の農家のマンマやリストランテの門を叩き、料理を習い、今の自分がある。いまやイタリア中に、私が子連れで里帰りするのを待ってくれているたくさんのマンマたちがいるのも、17年前のこの初めてのイタリア修行を、ネリーナ、フランコの家で過ごせたおかげなのだ。

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残念ながらその後ボローニャを訪れる機会があっても、彼らの家に寝泊りしたことはなかったのだが、それはこの17年という歳月の中で彼らにもいろいろなことがあったから。夫婦して患った病気はいまだ治っていない。身内の死もあり、夫婦の危機もあったと思う。元気なじゃじゃ馬母さんさんネリーナと、そんな母さんにふりまわされる私を気遣いながらオヤジギャグで癒してくれたお父さんフランコの姿はすでに遠い昔、決して順調な人生を送っているわけではない。何より、会うたびに年をとっていた。
今回、そんな彼らの家に17年ぶりに泊まることになったものの、そんなわけで不安材料も残る。しかも今回はプラス子供2人分が一緒に転がり込ませてもらうわけで、うんと迷惑もかけるだろう。
それでも、今回私がボローニャに行こうとしていることを共通の日本人の友達から聞きつけて真っ先に「うちに泊まればいいわ!」と言ってきてくれたのには、彼らにも、そして私たちにも、きっとなんらかの意味があるのかもしれない。そんな気がしてならない。

さて、せっかく彼らの家に泊まるのだから、当時、入れ替わり立ち替わり料理を教えに来てくれた人たちにも会いたいのだけど…、つぶやくふりしてそんなわがままメールをダメもとで送ってみたら「すべてオーガナイズ終了!三日目の晩に、みんなうちに集まるわよ。アンナはあなたに教えた懐かしのポルペッテ(肉団子)を作るって張り切ってる。フランコは焼き野菜なら俺も作れるぞって言ってるわ」と返事が来た。ああ、17年前のネリーナとフランコが少しずつ戻ってきたかもしれない。そんな期待がふくらんで思わず涙が出てきた。

17年前の原点にかえり、17年という時の移り変わりを共に受け止めながら、私たちと過ごす日々が、彼らに少しでも、あのときの夫婦の姿を取り返す小さなきっかけになってくれるといいなと、娘心でつい願ってしまう。そしてかくいう私も、そろそろ子育てを言い訳にするのはやめ、身体の老いを受け止めながら、料理活動も、会社の仕事も、いろんな意味でもう一線を超えるためにエンジンかけないといけないのだ。

復活祭に行く、復活を願う旅。まずは原点からやり直すことから。
そして、あの人にも、この人にも、そして私にも勇気を出して自分自身をリニューアルできる春になりますように。

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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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ritz

Author:ritz
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