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年の瀬に今更ふりかえる今年後半のこと⑥ 歴児と行く海軍史の旅(2)砥部~呉

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(2日目:砥部~呉へ)

11月頭の海軍史の旅、夫も揃った二日目は午後3時過ぎのフェリーで東洋一の軍港、呉に渡ることになっている。
まずは、せっかく宿が隣に位置していながら昨日訪れる時間のなかった子規記念館へ。丁寧な展示と解説で大人も子供のどっぷりと子規の世界に浸かれるのが嬉しい。
その後は、まだまだ見どころ満載の市内をまわるか、もはや何度行ってもいい気になっている松山城ふたたびという選択肢もあったのだけど、せっかくレンタカーもしたことだし、折しも「砥部焼まつり」開催中の焼き物の町、砥部まで足を伸ばすことに。
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砥部焼は以前からじっくり窯元を巡ってみたいと思っていたが、焼き物市となってしまうと逆に窯元は出払ってしまうし、かといって本当に見たいものが市に出されるとは限らないので、実をいうと思い切り前向きな選択という訳ではなかったのだけど、言ってみるとやっぱり楽しい。ザ・砥部焼の代名詞ともいえる梅山窯も出店していてしかも安価な値段で売っている。有名でない若手作家の窯からも使いやすい形やかわいいデザインのものが出品されていて、ついつい買ってしまう。その歴史はものすごく古いけれど、もともと日常生活のために生まれた器、しかもひとつ一つ手づくりによる素朴さが特徴で、民芸運動にもその手仕事の技術が評価されたほどの砥部焼。だからこそ、こうして有名、無名の窯の区別なくずらりとテントを並べ、見る側も優劣をつけずに器を楽しめる。それは有田や伊万里の陶器市で残念な思いをするのとは正反対で、どの器も、家のテーブルに置いたときに生き生きと活躍する様子が想像できてしまう。

長居できないながらもしっかり堪能したあとは、一気に松山市内に舞い戻り、いや市内を通り越し、本当は真之や好古たちが小舟で旅立って行った三津浜港も行ってみたかったけど断念、どこかでお昼を食べて時間を費やすのも危険と判断して取り急ぎフェリーの乗り場へ直行する。
予約済みのフェリー桟橋のクルマの列もまだ一台もなし。先頭にとめて、さあ、海沿いの食堂で定食を、なんて想像していたけど見事に閑散とした港、しかたなくフェリー乗り場の建物内の食堂に入るが、地元のおばさんが切り盛りしている食堂といった感じでなかなか悪くない。
お昼どきをすっかり過ぎてしまった店内、知り合いのあばちゃんと賄いのおばちゃんたちが座り込んで喋ってる言葉が半分くらいわからない…。オーダーした海鮮天丼、決して上品ではないけれど手作りのぬくもりのある美味しさだ。
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浜辺は違うけれど、こうしてこの松山の海から、真之も子規も律も、ふるさとを後にしたのかあ、なんて感慨に浸りながら出港。瀬戸内の小島を縫うように海原へ滑り出て行く。さっきまでいいお天気だったのに、残念ながら予報通り天気は下り坂。瀬戸内の小島たちを見渡せないのが残念だけれど、フェリーに自分たちのクルマごと乗るという初めての体験にちょっと高揚する。
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クルマを積まない高速船と比べると一時間も遅いのだけど、船の中の、よくいえばホテルのロビーみたいな、悪く言えば場末のスナックみたいな不思議空間に子供達も大喜び。売店では松山名物のタルトやポンジュース、お菓子のみならず、肉まんやうどんなども出してくれる。Mはいったい何度、売店で買物をしただろう。
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でも、小さい子を持つ親にとって、また水泳がまったく苦手な私にとって、海の上というのはよく考えてみるとちょっと怖い。室中に入ろうともせず外のベンチでじっと座っている太った成人男性がひとり。こんな怪しい人を見てしまうとますます、デッキにちょろちょろと出て行く子供達を一時たりとも放置できず、その度に一緒にくっついていってしまう。
さて、外に出たり中に入ったり、お菓子食べたりテレビ見たりの船の旅も終盤に近づいてきた。船がスピードを落として慎重に呉の入り江に入って行くタイミングで甲板に上がってみると、おおおーっ!いるいる、あっちにもこっちにも、訓練中と思しきグレイや黒の鉄の塊が。蛇行しながら進む変な船、小さいパトロール艇のようなもの(母はよくわからん)までもなんだかかっちょいい。
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強風に吹かれながらMがパシャパシャとカメラのシャッターを切り始める、と、すぐ向こうでも同じくけたたましいほどのシャッター音が。ん?さっきからずっと外にいた怪しい人?…なんだ、その筋の大先輩だったのね。


呉に着港し、クルマにのって上陸するというのも新鮮な体験。宿もほど近いのだけど、閉館時間の迫る「大和ミュージアム」へ直行する。
明治22年に旧海軍が呉鎮守府を開設して以来、海軍最大基地として君臨してきた呉は、造船技術も当時の世界最高峰を極め、かの有名な戦艦大和を生み出した。その大和に関する資料を中心に、明治以降の呉と、日本海軍の歴史をぎゅっと詰め込んだミュージアムには意外にも老若男女であふれている。
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第二次大戦時の映像、現存する戦艦大和の設計図、東郷平八郎が使用していた懐中時計などなど…、貴重な展示もたくさん。実はここの正式名称は呉市海事歴史科学館とか。なるほど建物も展示も運営ももものすごく立派、市が力を入れているのがわかる。
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戦艦、駆逐艦から護衛艦まで、呉を母港にしていたあらゆる軍艦の写真が壁一面に。いやあ、ずいぶんいろんな名前があるのねえ。ふと昔の上司、T梨さんのことを思い出した。子供の名前に「大和(弟)」と「信濃(姉)」と付けたほどの軍艦オタク。数年前に亡くなってしまったのだけど、40代後半になった今の私にはその気持ちがちょっとわかる。生きていたらいろいろ語り合えたのにな。急にじ~んと来てしまう。あ、「栗」なんて名前の駆逐艦もあるぞ。
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閉館時間までめいっぱい、ミュージアムショップも堪能して外に出るとどっぷり日が暮れている。向かいにどーんと横たわるくじらのごとき潜水艦、翌朝行く予定の、その名も「てつのくじら館」の夜景を見ながら、ホテルへ。
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ホテルといっても、今夜の宿は日本船舶振興会などの出資による財団法人の宿舎。大型連休でもないのにどういうわけかこの日はどこのホテルも満室で唯一空いていたのがここの和室だったのだけど、ビジネスホテルのような素っ気ないフロントに合宿所のような無機質な部屋。4人で一泊数千円破格の値段だし、どうせ寝るだけなんだから良しとしよう。
少しだけ休んでから、夕ご飯を食べに外へ繰り出すも、さっきまで大和ミュージアムを賑わせていた観光客たちは一体どこへ消えたのだろうというくらい寂しい夜の呉の町。とりあえず市内の繁華街であろう商店街を目指す。アーケードにさしかかると、どこからともなく、はっぴを来た兄ちゃんたちと鬼の面をつけた酔っぱらいの行列が。どうやら地元のお祭りらしい。でもだからといってものすごく賑わうわけでもない。ほとんどがシャッターのしまったアーケードの中、居酒屋や飲食店がぽつんぽつんと開いているといった感じ。とりあえずきれい目な角の寿司屋を覗いてみるも…満席だ。
どうする?さっきの小汚い居酒屋にする?それもなんだかね~などと言いながらちょいと真っ暗な路地を入って行くと一軒だけ灯りのともる店が。
「江戸前寿司」の看板。呉まで来て江戸前もないでしょうと思いつつ、夫が遠慮がちに覗いてみると、とってもきれいな女将さんが出て来て「ちょっとお料理出すのお待たせするかもしれないですけど、どうぞ、奥のお座敷つかってください」と感じよく招き入れてくださる。ほっ。呉にきて、なんというか初めて人のぬくもりに触れた気分。

カウンターの向こうにはかっこいいご主人がひとり。狭いカウンターにぎっしり座る常連さん達のうしろを通り抜けて奥の小上がりへ。おや、こんな店によく初めてで入る気になったね~といった視線はしかし、MやNを見ながらニヤニヤと温かく迎え入れてくれる、そんな視線でもある。こういう店はきっといい店だ。
白板にずらりと書かれたメニューは、寿司屋なのにどれもこれもおいしそうなお料理ばかり。まずはお刺身の盛り合わせと、カキフライと、えーっと豚の肉味噌ソテーもおいしそう。フグの立田揚げもいいねえ。あとは…
「”ウニほうれん草“っていうのがおすすめですよ。この前たまたまケンミンSHOWでこの料理が取り上げられてたんですよ~。うちは全然そんなの知らなくて、店では先代からずーっとやってるメニューなんですけどね」
そうなのか。知られざる呉の名物料理、しかも、もしかしたらこの店が起源ってことか。よしそれも行ってみよう!
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どれもこれも、超一級の家庭料理という感じでやさしくて美味しい。

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豚肉の最後の一切れを、「戦艦大和」と名付けて遊ぶM…。

そしてこれがそのウニほうれん草。ほうれん草をたっぷりのウニソースで絡めた料理。ほうれん草を食べ終わったら残ったウニをパスタに絡めてくれる。うわ、おいしい~。でもここ、そういえば寿司屋だったよね??
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店の前が何やら騒々しい。
「ほれ。行列が来たぞ~。見て来たらええわ」
お客さんたちにそそのかされて、Nを抱っこしてちょっと見物に、と店の扉をガラリと開けた瞬間、男達に引きずり回されている、ぐでんぐでんによっぱらった鬼とばっちり鉢合わせし、Nより先に私が怖くなってとっさに扉を閉めてしまった。な、なんなんだ、この祭は。
しばらくすると、今度は年輩のはっぴを来たおじさんが店に入っていて、女将さんが慌ただしく「よろしく御願いします」といってゴソゴソと何かを渡している。どうやらご祝儀のよう。そして矢庭に私たちを呼ぶのだ。
「ねえねえ、せっかくだから。ね。」
せっかくだから、って、何が?
「そうそう、せっかく今夜は小さな子がいるんだから」
常連さんにも後押しすされ、訳のわからないまま追い立てられるようにNを抱っこして外に出ると、どっひゃー、怖い鬼が再び立ちはだかっているではないか。
「せっかくだから、抱っこしてもらって。丈夫な子供になるのよ。さあさあ」

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大人の私でも恐怖を覚えたくらいだから、Nにとってはかなりの恐怖だろう。この時のNの号泣ぶり、かわいそうだけど、でもおかしくってしかたがない。日頃、愛用させていただいてるアプリ「鬼から電話」も最近は「どうせ本当は鬼なんていないんでしょ?」くらいの余裕が出てきて効き目がなくなってきたのだが、やっぱり鬼は本当にいたのだと思い知ったらしい。

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「荒っぽいお祭りでびっくりしたでしょう」と女将さんに慰めてもらうも、思いもがけず、こんなところで急にお灸を据えられたNは、その後も放心状態でまるで貞操を奪われたかのよう。
この呉のお祭り、山の上の神社の祭で、町内ごとに鬼を出して競うらしいが、鬼役の男は面の上からストローで酒を飲まされながら練り歩くので、ぐでんぐでんに酔っぱらってしまうのだと、常連のおじさんが教えてくれた。

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お店のご夫妻には高校生の男の子が一人いるそうで、「こんな田舎だけど、やっぱり中学受験したのよ。ボクと同じように歴史が好きでね。へ~、あしたは江田島まで行くの?いいわね~」なんてお話も弾み、なんだかすっかり居心地がよくて根が生えそうだ。その後、やっとお寿司にたどりつき、握りをいくつか頂いたけど、鬼の衝撃ですっかり写真も取り損ねてしまった。
ああ、いいお店だったな。素敵な人とおいしい料理、切っても切れないこの関係に下調べもなしに偶然めぐりあうと、旅の思い出は何倍もいいものになるのだ。

さて、余韻に浸りつつ宿に戻ったその直後に、立て続けにNを災難が襲うことになるとは、ほろ酔い気分の帰り道は思いも寄らなんだ。
なにぶん安宿ゆえ、風呂は部屋についておらず共同浴場にて。女湯にひとりつかって、はあ~と足を伸ばしたその瞬間、Mが血相かかえて女湯に乱入してきた。
「マ、ママっ、Nちゃんが、Nちゃんが…」
その目には涙がいっぱいたまっている。いったいどうしたというの!?

なんと、夫がNの頭を洗おうといつものように膝の上で仰向けにした瞬間、手を滑らせて、大理石の角に頭を落とし、後頭部がぱっくり切れてしまったのだ。男風呂での事故直後の様子は想像しかできないけれどタオルが真っ赤になるほどだったとMが涙ながらに話してくれた血も、私が見た頃には止まっていたが、中が見えちゃうほどざっくりいっている。こんな悲惨な傷口、見たことない。本人はすっかり涙もおさまり「パパがね、あのね、Nをごろんって落っことしちゃってね、ごつんってなっちゃったね…」と私にちくるほど意識はしっかりしているが、これは一大事だ。
救急車を呼ぶべきだと言う私の意見に耳も貸さず、フロントで聞いた近くの病院にそのままタクシーで向かおうとする夫を引き止め、まずはその病院に電話してみるも「外科医の当直はいません」ときた。その次に挙げてもらった病院もダメ。ほらね、最初に電話で確かめるのは常識だよ。たらい回しになるとこだったよ。結局、少し離れた場所にある労災病院に今夜の当直に外科医がいることをつきとめ、事情と症状を話して受け入れ確認をとってから夫とNを送り出す。
待っている間、ずっとしくしく泣いているMに、大丈夫よ!とどっしり言い放たなければならないのに、私も不安で不安で震えがとまらない。
思いのほか早く対処してもらったようで1時間後くらいで帰って来た。白いネットを頭にかぶせられ、夫の腕できょとんとした顔をしたNはしかし、顔色もよく元気そう。
結局3針縫ったとか。その程度の高さからの落下なら、今夜異変がなければ脳神経に問題はないだろうとのこと。旅行中に旅先の病院で一回消毒してもらってくださいとだけ言われたらしい。

ああ、ひとまずほっとした。
それにしても自分で負った怪我ならともかく、本人は何も悪くないのにこれだけの大怪我を負わせてしまった、にもかかわらずこんなにあっけらかんとできるNの性格には救われる気持ち。
一方、自らの責任を痛感してるからこそだろうけど、意固地になってずっと不機嫌な夫の性格にはあきれる気持ち。この二人の性格、足して2で割れたら最高なんだけどな、まったくもう。
さて、その後も朝まで熟睡してくれたのでどうやら旅は続けられそう。嬉しい発見も、とんだ災難も、どっちももりだくさんすぎる一日であった。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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ritz

Author:ritz
広告代理店コピーライター
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著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
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