2014
Feb
05
2
今年もとっくに明けておりますが…。

節もとっくに明けておりますが、誠に遅ればせながら今年もよろしくお願い致します。
今年のお正月は元旦を家でささやかな手作りおせちと雑煮を食べて過ごしたあと、2日から3日にかけて温泉へ。
今年と来年は、一泊で出かけるチャンスすら正月と盆休みくらいしかないことはわかっているのだけど、雪見温泉好き一家の名がすたるとばかりにスタッドレスに履き替えているくらいなので、目指すは雪国。
再訪したかったお気に入りの宿はどこもいっぱい。結局、夫がかねてから「気にはなっていた」という初めての宿の予約が取れた。こんな間際になっても空室がある宿ってどうなの?と、それはそれで貴重な機会なのにハズしたらどうしようと不安が残ったものの、これがまた、素朴で飾り気のない、実に居心地のいい宿だった。
新潟県は奥只見にある栃尾又温泉「自在館」。ゴールデンウィークの頃でも豊富で状態もいい雪質でスキーが楽しめるような場所に、冬真っ盛りに来てしまうとこうなのか。折しも寒波到来でとてもシーズン初めとは思えないほど見事な積雪。

道案内の看板も見過ごしてしまい、引き返したものの結局雪で読めないんだけど、ま、こっちかな。とクルマを走らせると、山のどんづまりに二軒の宿が向かい合わせに。その一つが自在館だ。



古びた建物だけど、連泊中と思しきおばあさんたちが、無料で自由に飲めるコーヒー片手に寛いでいるロビー、赴きある手書きの文字で湯治の説明書きが貼られた壁、好きなサイズ(3歳児のものも!)や色を自由に取って行ける作務衣や浴衣、狭くて古いけれど掃除がしっかり行き届いた部屋、目に入るもの全てに宿の人のぬくもりを感じる、そんな宿。
まずは貸し切り露天風呂へ。

久しぶりとはいえ、あんたたちはしゃぎすぎでしょう。雪をいじって、また入り、雪で遊んではまた浸かり.かと思えば今度は歌合戦。こんだけ風呂好きの子供も珍しいと思うけど、ありがたいことだ。体型も髪型も中性的ゆえ湯船に沈んでさえいれば女子風呂もまったく問題なかったMだったが、小5ともなると周囲の目が気になってさすがに難しくなってきたこともあり、こうした家族風呂は私にとってはとっても嬉しい。一組あたり45分間までの貸し切り風呂。え~、それ長過ぎでしょう、と思ったけど結局めいっぱい入ってしまう。
特にゲームやテレビが置いてある訳でもないのに、なぜかだらだらとしたくなるロビーというのも、いいお宿の証。窓の外はしんしんと降り積もる雪景色をただただぼーっと見つめながら、アイスクリーム。うん。冬の温泉はこうでなくちゃ。


さて、貸し切り露天もよかったのだけど、ここの温泉の特徴はなんといっても宿の真下から湧き出るラジウム温泉の大浴場。源泉100%、36度の湯は「霊泉の湯」と名付けられていて、1時間ほどゆっくり浸かるのが湯治のスタイルなのだとか。
男女入れ替え制で「したの湯」と「うえの湯」というのがあるらしい。夕食前までは女湯になる「うえの湯」の方へ、寂しいけれど一人で行ってみる。
館内の渡り廊下を渡るといきなりギシギシと音のする古くて真っ暗の建物。これは大正時代からある旧館とか。窓の外の雪明かりを頼りに進むと、今度は階段を降りるよう記されている。「霊泉」の名のごとく、お化けが出てきそうで、こ、こわい。



この先で待ち受けるのは、どんだけ風情のあるお風呂なんだろうと自分を励ましながら最後の格子戸を勇気を出して開けるも、がくっと拍子抜け。結局一度外に出て隣の建物へ誘導されるだけにすぎなかったのが「うえの湯」。

言うなれば町の銭湯みたいな感じ。ロッカーも用意され、おまけに自在館の浴衣でない客も。ここで初めて、宿と迎え合わせに建っていた建物が、同じ経営ではあるけれど長逗留の湯治客用のものであることを知る。なるほど、そういう作りになっていたのね。
まずは36度の湯につかるも一瞬ひやっとする。考えてみたら体温より低いくらいなのだから当たりまえか。これに1時間も浸かってたら風邪引きそうと思ったけれど、15分ほど浸かってるうちに不思議と慣れて来て気持ちよくなってくる。夕食の時間も迫っていたから1時間とはいかなかったけど、お薦めどおりに最後は熱い湯船に入ってから上がってみると、身体から毒素が抜け出たみたいな爽快感。なんだか不思議。
夕食は部屋ごとに個室が用意された夕食どころにて。廊下のいろり焼き場でせっせと岩魚を焼いているおじさん(といっても同世代だろうな)、あとで知ったけど宿のご主人だったみたい。この岩魚がまたおいしいこと。だいたいこういう山の宿に来れば必ず川魚の炭火焼が出てくるものだけど、こんなにふわっとしていて、小骨も気にならずにかぶりつけてしまうのはめったにない。
岩魚だけじゃない。鴨鍋もある。天ぷらも、新潟牛のステーキも出て来た。素朴だけど、豊かな山の幸のごちそうが次から次へと。


卵の、特に生卵の、もっというと気味が好きな変わった3歳児Nが、鴨鍋の最後のぞうすい用に用意された卵を発見し、「あ~ん、たまご~。んもう、たまご頂戴ってば~っ」と駄々をこね、仲居さんにもうひとつ頂いて卵かけご飯にし始めた。これだけおかずがあるのになんて奴、と呆れるものの、卵ひとつとっても美味しそう。そしてそして、なんといってもツヤツヤのこのご飯、最高。さすが米どころ新潟だ。


お湯よし、ご飯よし、宿の人感じよし、居心地よし。ゴージャスさはまったく必要としない我が家の温泉指標に、まさにぴったりの宿。これで1万5000円もしないのだから申し訳ないくらいだ。
夕食後はまたまたロビーで、窓辺からしんしんと降り積もる雪をただただぼーっと見つめながら、アイスクリーム。さっきと同じことのリフレイン。

就寝前は、頭や身体を洗ったりしないといけないので内湯の方の貸し切り風呂に行ってみる。すでに闇に包まれた窓の外を見ることはできないので、ぱっと見、ただのだだっ広いお風呂。この広さを家族風呂にしてしまうなんてかなりもったいない気がするのだけど、これもひとえに宿泊客に本当のくつろぎを提供しようという宿の志あってのことに違いない。

「しようがないなあ」と弟の身体をふいてやる兄の図。でも実際は、「しようがないなあ」と兄に身体を拭かせてあげてる弟の図。Mも高学年になり、本当なら家族でお風呂なんて嫌だと言い出す日がいつ来てもおかしくないのだけど、Nが生まれたおかげでこうしてその日がまた先延ばしになった。私と夫がMに対して注いできた愛情を、同じ接し方を、今は再び、私と夫とMの3人でNに注いでいる。年の離れた、そして男同士の兄弟ってのは、やっぱりいいもんだなとこういうときに思ったりして。

翌朝はすっきりとした晴れ。昨夜降り積もった新雪がきらきらと輝いていて本当にきれい。
皆が寝ている間に、朝は女湯の時間帯になる「したの湯」に行ってみる。その名の通り、こちらはひたすら木の階段室を延々と降りた、渓流沿いに設けられた浴場。昨日の「うえの湯」と違い、湯治客もいないし、木の浴槽で風情がある。他にも人がいたので写真に撮れなかったけど、三方をガラス窓で囲まれていて、室内にいながら雪景色の中に身を投じてるよう。同じラジウム温泉ならこっちの方が断然いいな。
脱衣場で一緒になった、東京からいらしたというおばあさんと話が弾む。なんでも20年も前からご夫婦で通っていて、長年患っていた病気も治ったのだとか。数年前にご主人に先立たれてからは、娘夫婦に気を遣わせたくないから毎年ここで一人で年越しをしているのだそう。おしゃべりも上手でとっても福のあるお顔立ちをしてらっしゃる。あれだけ降りた階段を、私との会話に息切れすることもなく、ひょいひょい上がって行くからすごい。これで85歳とおっしゃるのだから、ただただ感心するばかり。
さて、全員が起きたところで今度こそ最後のひとっ風呂。昨日の内湯の家族風呂へもう一度。窓からこれだけ雪が見えれば、これだって立派な雪見風呂だ。

そしてまたまたロビーへ。すっかり子供たちの定位置になってしまった、窓の外に向かって並ぶ二つの椅子でまたのんびり。いたずらっ子と、それに翻弄される兄の、貴重な心穏やかなる時間。なんだか、スヌーピーとチャーリーブラウンみたい。

帰りは宿のすぐ近くの、リフトが一本しかないスキー場へ。スキーももしかしたら今シーズンはこれが最初で最後かもな…。せっかくなら私も滑ろうかと思ったけれど、今回も「ふなっしー」とそり遊びに甘んじるのであった。


たった一軒しかないレストハウスも満席だったため、せっかくなので八海山が経営する泉ヴィレッジまでクルマを走らせ、遅い昼ご飯。気がつけばもう日も傾きはじめ…。ああ、これでもう一度宿に帰ってあと一泊できたらいいのにな。連泊への憧れを果たせぬまま家路につく。
今年は久々に正月休みの長い年だというのに、早々に冬期講習が始まって、結局、あとは八王子の母の実家を訪ねたくらいで我が家の正月は終わってしまった。叔母がいなくなって初めてのお正月だけど、女系一族に生まれた我が息子たちが必ずいじられる正月遊びは、かるたでもすごろくでもなく、変装。うん、いいね、りりしいね。今年は家族それぞれにとって、いろいろ過酷な一年になるのだけど、こんな感じで、頑張ろうね。

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