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春まっさかりの九州③ 雨の熊本、霧の阿蘇

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朝起きてカーテンを開けてがっくり。ああ、やっぱり雨だ。となるとNは抱っこ紐で行くしかないな。母子旅には天候ひとつが大きく影響する。とほほ。

父親がいつの間にかいなくなっていることにもNは特に気づかず。でもなぜか興奮気味でホテルの朝ごはんビュッフェを食べさせるのも一苦労。わざと食べ物を床に落としたり、一度口に入れたものをペッと出したりでほとんど食べない…。ああ、朝ごはんだけで早くもぐったりの私。
いかん、いかん、こんなことではいかん。気を取り直していざ熊本城へ出陣じゃ。
雨ゆえに、昨日に引き続き今日もタクシーで頬当御門に乗りつける。
城郭内だけで東京ドーム21個分の広さがある熊本城。城好きの中でも熊本城のファンが多いらしい。くまなく回ると一日がかりと聞くが、私たちに与えられた時間は午前中だけ。まずは天守閣から攻めてみるか。

門を入ったところにある案内所で所要時間を訪ねた際、2歳児を抱っこ紐にくくりつけた私の姿を見て、係の女性が不憫がるように「エレベータはありませんからね~」。へ?エレベータ?エレベータなんてもちろんあるわけないじゃん。と不思議に思う。そりゃ、近年再建された建物だけにすべてが当時のまんまの造りではないにしても、いわゆる転がり落ちそうな急で狭い階段がひたすら続くのだと、そして私は次男抱えながら手すりにすがりつくようにして上り下りするのだと、そんな覚悟もとっくにできている。それなのにエレベータだなんて。
しかし中に入ってみて係の女性の言葉に納得。見た目は戦国時代の本丸でも中は鉄筋の立派な資料館、靴も脱がなくていいし、階段だって床だってなんだって近代的な造り、いってみれば普通のビルだ。確かに、エレベータがないのが不思議になってくるが、想像していた城内とまったく違ってちょっと拍子抜け。6階分の階段もこれなら楽勝じゃん。と言いたいところだけどさすがに息が切れる。
ぞろぞろと人の流れにそって、1階は加藤家時代、2階は細川家時代、3階は西南戦争関係と、豊富な展示資料を見ながら最上階へ。晴れていれば阿蘇山まで臨めるらしいがこの天気じゃ何も見えない。それでも城郭内をこうして天守のてっぺんから見下ろしてみると、さすがにいい眺め。雨に濡れた桜までもが絢爛に見えるのはさすが熊本城。3月末とはいえ今年はすっかり咲き終わっていると思っていたけどまだまだどうして、雨が降っても散る気配さえない。さすが熊本銃の桜だ。
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つづいて藩主の住まいであった本丸御殿へ。こちらも平成20年に50億円かけて復元した大広間、数寄屋、大御台所が公開されていて、近隣外国人のツアー客も続々と入っていく。長年の発掘調査をもとに精巧に再現されたものなのだけど、あまりにも、床の木も新品、台所の土間も光るほどきれい、広間の色彩も鮮やかすぎて、もったいぶってる割には風情も重厚感もない。なんだか広くて新しい旅館みたい、と言ったら怒られるかな。抱っこ紐にくくりつけっぱなしのNの靴までも「他の方へのご迷惑になるから」と脱がされ、でもそれって「ちょっとでも中を汚されたらイヤだから」でしょ?と言いたくなるくらい。靴を脱がされりゃ自分も中を歩いてよしの合図と思うのが子供、「おりる~、おりる~!」と叫びまくり、やむなく解き放つも、大事な展示物をこわさんばかりの走りっぷりで冷や冷や。

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どうしたものかと困窮したところに熊本城クイズコーナー発見。次々と正解してピロロ~ンと鳴らす兄の横で満足げにPCを覗き込んでる。ほっ。なんとかこれで事なきを得た。と思ったら今度は「うんち~っ!」。トイレ駆け込むも、きれいな身障者用トイレはあるのに、オムツ替えの台は無し。ここまでお金かけたんならオムツ台も付けろよっ、と八つ当たり。
そんなわけで、本丸御殿の印象はほとんど無し…。

外に出ると雨もやんでいる。傘をささなくていいだけで、だいぶラクだ。
つづいて、熊本城の中で唯一、創建から現存する宇土櫓へ。西南戦争の戦火も逃れ400年前の姿をそのままとどめる3層5階地下1階の木造櫓は、別名、第3の天守。
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宇土の地の小西行長が関ヶ原で滅んだ後、行長の家臣の一部を加藤清正が引き取り、この櫓の管理をまかせたことから宇土櫓というらしい。
国指定の重要文化財、でもさっきの天守とは打って変わって団体客はゼロ、個人の観光客がポツリ、ポツリと来る程度。
入口のボランティアのおじいさんも「そこの椅子に座って靴脱ぎなさいよ。気を付けてね」といろいろ世話をやいてくれてとってもやさしい。

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薄暗い櫓の中、石落としからさしこむ光を頼りに、みしみしと音がする床を進む。ひょいひょいと慣れた足取りで上っていくMのあとを追いながら、子供もろとも落っこちないよう、黒光りする400年前の手すりにしがみつきながら、狭くて急な階段を一歩一歩よじのぼる。そう、そう、私がやりたかったのは、これよ。お城はこうでなくっちゃ。腿をひくひくといわせながら、どこか悦に入ってしまうのはなぜだろう。
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最上階からの眺めがすばらしい。400年もの時の流れをずっしりと受け止め続けた櫓。ここから、こんな風に天守閣が焼け落ちるのも見届けたのだろう。熊本城の神髄に、宇土櫓でやっと出会えた気がした。
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それにしても、さすがに抱っこ紐だとカメラを持つ余裕もなくて、巷で話題の「おもてなし武将隊」や「くまもん」の着ぐるみの写真も、熊本城といえば急こう配の武者がえし石垣の写真も、撮りそびれた。ま、Mがたくさん撮って満足してくれればそれでいい。


ふと携帯を見ると、タクシー会社から着信あり。
今日はこれから、阿蘇山まで行くべく貸切タクシーをお願いしたのだ。なんという太っ腹。しかし、夕方の福岡行き新幹線に間に合うよう戻ってこないといけないという時間のない中、そして男親のいない旅には、この際、背に腹は代えられぬ。
一度ホテルに戻り、荷物をまとめてチェックアウトしたら、今度は阿蘇へ。

博多の友達から評判を聞いて予約した肥後タクシーの運転手さんは、物腰もしゃべり方も穏やかでジェントルマン。
「あのぅ…お昼はもうお済でしたか?」
あ、そういや、まだ食べてなかった。
「さくっと食べられるところでどこかあります?」
お勧めをお願いして運転手さんが案内してくれたのは、蕎麦好きのご本人もお気に入りのお蕎麦屋さん。しかし、なんとその店が
「あ、今日はお休みみたいです。ああ、困ったな…。自分が食べたことのある店じゃないと、私は本当はお連れしたくないんです。でも、このあたりで食べないと、山を登りはじめちゃうと何もないので…。上司が結構おいしいって言ってた店ならこの先にあるんですが…。肉でもいいですかね?」
ええ、ええ、肉でもかまいません。てか、肉うれしいっす。と横でMはヤッターの表情。
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案内してくれたのは「あか牛」の専門店。運転手さんもどうですか?とお誘いするも、「私は遅番だったのでもう済ませました。ごゆっくりどうぞ」と。
子供二人とはからずも優雅な焼肉。背後には外輪山の雄大な景色が。雲はかかっているけれど、なかなか気持ちのいいロケーションだ。

つづいて向かうは阿蘇山の南山麓に位置する白川水源。運転手さんは駐車場にとめたあと、「もしかして、また降るかもしれないですから」と傘を二本持ってついてきてくれた。
環境庁の名水百選にも選ばれてる白川水源、なんと、毎分60トンのペースで湧き続けているという。
鬱蒼とした林の中を怒涛のように流れる渓流の美しいこと。
「まだまだ、これは序の口ですよ」
100メートルほど進み視界が開けると、渓流の音が消え、静けさにつつまれた池が。いや、池じゃなくこれが水源だ。毎分60トンもの水がここに湧いているとは信じがたいほど、水面は動いていないくらい静か。でも、限りなく透き通った水底をみると、ふつふつ、ふつふつ…と水が湧いているのがわかる。でも、あまりにも静寂で、穏やかで、毎分60トンとはまだ思えない。神秘的でまるで神様が現れそう。
汲んで持ち帰る用にペットボトルが売ってるのだが、Mは自分が背負っていくからいいでしょ、とお小遣いでさっさと大きいサイズのを購入。水を汲む際、ペットボトルを一瞬持ってやろうと受け取ろうとしたとき「あ、ママ、気を付けてね。キャップははずれてるからね」と言われたそばから、手を滑らせてキャップを水源に落としてしまった。
どうしよう!
「私、あっちに回って待ち伏せしましょう」
ぷかぷかと浮きながらゆったりとした水面の流れにまかせて移動し始めたキャップを、運転手さんは数メートル下のひらけた水汲み場で待ち受けてくれるも、キャップは、ちょうど流れをせき止めている木の陰に落ち着いてしまった。
どうしよう!手が届きそうで届かない。
運転手さんは再びこちらに戻ってきて、今度は草むらの中に入っていく。ああ、申し訳ない。一度身をかがめるも、何か思い出したように起き上がると、胸のポケットから携帯と手帳を取り出して石の上に置き、そして今度は草むらに膝をつき水源に落ちんばかりに身を乗り出してキャップを救出してくれた。
「取れました~」
ズボンの膝もお尻も汚れてしまったみたい。ああ、申し訳ない。口調だけでなく動作までも終始穏やかで冷静な運転手さんだけど、でもそういえば小泉首相にそっくりですね。
「あはは。よく言われます。小泉さんが現役の頃は、職場でも首相、首相、なあんて呼ばれました…」
と照れ笑い。水を汲むのも手伝ってもらってペットボトルも満タンに。ありがとう運転手さん。
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そしていよいよ山頂、中岳火口へ。
「なるべく後回しにした方が、少しでも天気がよくなると思ったんですが、なかなか霧が晴れませんね…」
それでも、悪天候の日やガスの量が多い時はすぐに立ち入り規制がかかってしまうとか。こんな風の強い中、火口まで行かれただけでもラッキーだと思わねば。
し、しかし、うう…寒いっ。吹き飛ばされないようNをしっかり抱えて火口へ。
予想通りすべてが霧で真っ白、でも
「あ、緑の湖がうっすら見えますね!」と運転手さんが声をあげる。
見ると、霧の切れ目から、エメラルドグリーンの湖がうっすらと。天気が良い日でもガスが邪魔をして緑の湖が見られる時のほうが少ないそうだ。逆に今日は強風のおかげでガスを吹き飛ばしてくれたということなのだろう。
「よかった~。それだけでも見られてよかった~。お連れした甲斐がありました」
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こんなに悪天候で見るべきものも見られなくて、それでこの代金ではもとがとれないだろうと、運転手さん自身も不憫に思ってくださる様子がひしひしと。確かに、米塚も霧の中、帽子岳も霧の中、それでも不思議と惜しい気がしないのは、ひとえに運転手さんの人柄だろうか。
実は私自身は、熊本は過去に一度、Mが小さい頃には阿蘇も2~3度訪れている。いずれも晴天で絶景が拝めたものだが、むしろ今回の方が何倍も印象に残る旅になったのもまた、運転手さんのおかげかな。

新幹線の時間まできっちり考慮してくれて、お土産屋に寄るのも「では、15分間で」と、どこまでも控えめな口調だけどきっちり指示をだしてくれる。
市内に戻り、最後はせっかくだからと、参勤交代の時に通ったという旧街道を通り駅に向かってくれる。しかし当の歴児は疲れ果ててぐっすり…。なんでも、肥後藩は大分の東端に「出島」を持っていて、そこから船で江戸に向かったとか。この道はその港に向かうための道だったらしい。古い杉並木が並ぶ広い街道、右手にはぴったりと線路が寄り添って延々と続く。そして線路わきには果てしなくつづく桜並木、その足元には満開の菜の花。これまら素晴らしい、本当に素晴らしい光景。こんな景色に見送られながらお侍たちはお江戸に行ったのかな。故郷がより一層愛おしくならないわけがない。故郷があるって、いいな。写真に収めるのも忘れてぼーっと見入ってしまった。

新幹線の発車時刻の30分くらい前には戻りたい、というリクエスト通り、ぴったり五時半に熊本駅着。たった半日ご一緒しただけだけど、なんだかお名残惜しい。
夫不在の子連れ旅、終始バタバタとしてしまった私たち親子にもずっと穏やかに接してくれた、小泉首相そっくりの運転手さん、ありがとう。

気を利かせて、新幹線口の新しい方の改札に付けてくれたのだけど、Mはお土産売り場にお目当てのものが見当たらない様子。
「最後にNちゃんにくまもんのぬいぐるみ買ってあげようと思ってたのに…」
てか、あなたが買いたいんでしょ?くまもんグッズ。
結局、私はベビーカーを、Mはスーツケースをガラガラとけたたましい音を轟かせながら地下道を通り、在来線のほうの改札へ。くまもんグッズ売る店を見つけ、熊本でのラストショッピング。大慌てでまたまた新幹線口に戻り、ぎりぎりで新幹線に乗車する。
ああ、まったくもう最後の最後まで時間に追いたてられてばかりだったけど、Nはくまもんのぬいぐるみを気に入ってくれた様子、めでたし、めでたし。
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九州新幹線の車内は、普通車でもまるでグリーン車みたいなインテリア、肘当てもテーブルもおしゃれ。素晴らしいな、JR九州。


博多駅では、15年来の友達、アッコさんと息子のゲンちゃんが出迎えてくれた。
ああ、急にほっとして、なんだか涙が出そうになる。なんだかんだ、やっぱりそれなりに気が張っていたのかもしれない。
明日はいよいよ九州最後の一日。


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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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ritz

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広告代理店コピーライター
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日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
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