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イタリア回顧録2012夏⑫ Vacanze Romane(3)

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大人が3人、縦に並んでいっぱいいっぱい。間口も狭くてベビーカーだって広げたままだと入らない。そんな超狭小エレベータにもすっかり慣れた子供たち。兄が手早く手動ドアのカギを開け、ベビーカーたたんで乗りこめば、そのあとをスタスタと弟がつづく。

テルミニ駅に比較的近いながらも観光客には無縁のこの地域には、ローマの人々の普通の日常生活がある。おしゃれな店はないけれど、逆に繁華街にはないような庶民派スーパーマーケットで紙オムツをパッと買えたり、FIATのショールームをひやかしてみたりと、なんだかローマで暮らしてるみたいな、そんな気分になれたりして。
宿自体も、B&Bといっても、大きな複合アパートの、ワンフロアのうちのたったの一世帯分を改造し、3つしかない各部屋にトイレとシャワーを設けただけというもの。私たちが旅人かどうかは傍から見れば区別がつかないと思う。
そんな生活感たっぷりのアパートの、通りに面した大きな扉の鍵、エレベータの鍵、B&Bの入口の鍵、そして個室の鍵と、4種類もある鍵の見分けがやっとつくようになったところなのに、ああ、ローマ滞在も、つまりイタリア滞在も、残すところ一日となってしまった。

昨夜はロレッラの仲間と、近所のエノテカで開催中の試飲会へ。学生時代をローマですごした彼女には電話ひとつで集まれる女友達がたくさんいる。
enoteca_1
Nがちょこちょこ歩道を走り回るので私は試飲どころじゃなかったのだけど、Mはおつまみのパンやフルーツを存分に食べられて大満足だし、なにより、オルヴィエートでひとりでアグリトゥーリズモを切り盛りしていた頃には見られなかったような、緊張感から解き放たれた穏やかな表情のロレッラが見られるのが私は嬉しい。ローマでは今回は完全に料理修業はナシだけど、でもこれこそ、私たちのローマの休日だ。
enoteca_2
試飲会の後はみんなでPizzeriaへ。当然、テーブルは外の歩道。となればまたもやNにとっては絶好の運動場。街路樹の根っこで盛り上がった地面を登っては、ちょっとスピードつけてタタタ…と降りるのを何往復もやっている。同じ動作を何十回も、10分も20分も繰り返す、この一点だけは本当に尊敬に値するのだが、道路に面しているだけにこちらは目を離すわけにもいかないし、いいかげん飽きてほしいと願わずにいられない。
そんな時に、「ブラーボN!すごいぞ~、もう一回やってみようかN!」と名前を教えたわけでもないのに名前を呼び、助け船をだしてくれたのは、従業員に店をまかせ、空いてるテーブルで近所の人と夕涼みしていたこの店のおっさん。
ローマの下町には、こんな光景が至る所で見られる。
(おっさんの腕を瞬時にすり抜けたNが心霊写真のように写ってるけれど…)
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さて、一夜明け、ついに訪れてしまった最後の一日。
私たちへの花向けだろうか、今日は珍しくチェックインのお客さんも、チェックアウトのお客さんもいない。要するに、ロレッラが一日中フリーになれる日ということ。
「ああ、やっと、MとNと思う存分デートできるわ!さ、リッツ、何したい?」
彼女のオルヴィエートの家を、一昨年はお腹が大きい時に、昨年はまだ8カ月のNも連れて訪れた時もそうだったけれど、答えは二人とも最初からわかっている。ふふふ、それは、か・い・も・の~!

とはいえ、ブランド品も卒業して久しい私、長年のイタリア通いを経て得た結論は、小さな店にこそお洒落な掘り出し物がたくさんあるということ。それこそ、田舎の街のほうが、そうした買物には最適なんだけど、駆け足だったシチリアでも、トラブル抱えていたマリオの家でも、まったくそんな余裕もなかった今回の旅では、このローマがPrima spesa(最初の買物)でありUltima spesa(最後の買物)。Mに観光名所を見せてやりつつ、路地裏をぶらぶら歩いてみることに。

まずはタクシーでポポロ広場へ。ここからベビーカーを広げNを乗せたら、街歩きのスタートだ。
子供連れて、どうして街歩きなんてできるの?退屈しないの?
なんて質問されることが多いのだけど、答えはとっても単純。実はM自身が、子供らしからず、男子らしからず、大の物色好きであることに救われている。だ、だれに似たのかしらん(汗)。

まずはMにサングラスを購入。日傘より帽子より何より、まずは目の保護を重んじるイタリア人、子供であろうと同様。石畳の道路からも容赦なく太陽が照り返すからだろうか。ローマの街歩きにはいっそう必需品だ。

お店をひやかしながらスペイン広場へ。ここでローマ在住のお友達で二期会所属のメゾ・ソプラノ歌手、三角枝里佳さんと待ち合わせ。翌日からスイス行きを控えた忙しい中、わざわざ時間を作って出てきてくださる。なかなかお目にかかれる機会のなかった枝里佳さんと再会がかなったのも、こうして予定も立てずにローマに滞在することにしたからこそ。ランチをご一緒する。
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高級ブランドが立ち並ぶこの地域、地元の人が好んで足を運ぶような美味しいリストランテがあるはずがない。それでも、3人の嗅覚を寄せ合って、なんとか入ってみる気になったのがこの店。
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ローマ名物カルボナーラ。不必要に洗練させたりしてないオーソドックスな味わい。グアンチャーレ(ベーコン)もたっぷり。うん、ローマらしくて合格。

ランチのあとは、トレヴィの泉へ。
ますます人通りが多くなってくるこういう“ド”観光スポット、本来はあんまり好きじゃないのだけど、唯一、めざすべき店がここいらへんには集中して存在する。それは“ド”土産屋。こういうところにはサイズもチームも揃ってるのよね~、バッタもんサッカーシャツ。ほら、あったあった!Mのお目当てのイブラヒモヴィッチのACミランシャツ。サイズもばっちりで無事ゲット。ついでにNにもPoliziaミニカーでも買ってやるかな。お!チンクエチェントのパトカーがある。これは喜ぶぞ!
てな具合に“ド”土産店には、なにもIlove RomaのTシャツやボールペンだけじゃない、それなりの楽しみが存分にある。
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何時にどこにいかなくちゃいけないわけでもない行き当たりばったりの街歩き。何を買わなくちゃいけないわけでもない義務感のない買い物。これこそ街歩きの理想形。
ロレッラは宝探しの名人で、目利きの名人でもある。「リッツ、これ、あなた絶対似合うわ。試着しなさい。Nは私が見てるから」と私に指図。えー、いいよー、こういうの、別に欲しくないしー、と内心つぶやきつつ一応試着…してみると、なんだかすっごく似合うよ、あたし!なんてことばかり。
そういえばオルヴィエートのときもそうだったな。そして自分たちが買い物した紙袋を手際よくベビーカーの手すりにひっかけていって、どんどん重くなっていくベビーカーを再びガシガシ押していくのもロレッラだったっけ…って、今回もまったく同じ光景がローマで繰り広げられているじゃないの。

それにしても、ローマの日差しは半端ない。コロッセオだろうがチェントロだろうが変わりない。シチリアの38度よりローマの34度のほうが何倍も暑く感じるのは湿気があるせいだろうか。そんなとき、喉をうるおしてくれるのが、街のいたるところで見かける湧水。ローマの水はイタリアでも指折りの水質の高さを誇る。
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ローマで一番有名なジェラート屋でも、ちょっと一休み。
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もはやロレッラの後をくっついていくだけの私は完全に方向感覚ゼロ。くねくね路地を歩いていたかと思いきや、突然パンテオンの前に出たり、細い路地の小さな店を転々としてるうちに今度はカンポ広場に出たり…。

piazza_1
ナボナ広場に着いた頃には、ベビーカーの左右の取っ手は紙袋の山でNの姿も埋もれるほど。
さすがに全員くったくたで、倒れこむようにベンチに座ってしまう。元気いっぱいなのはベビーカーに乗っていたNだけ、兄の腕もすり抜けて、待ってましたとばかりに広場中をかけまわる。そういえば、最初に買ってやったチンクエチェントのパトカー、ずーっと手に持っている。気に入ったようだ。
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Nちゃん、このパトカーで遊ぼっか。ほら、ピーポーピーポーって…とMがとりあげた瞬間、この表情。兄の想い、今回も弟に届かず…の図。
neomondo

最後にもう一歩きしてから広場(もう名前すら覚えていない…)に出てから、タクシーを拾ってB&Bへ帰る。
ただでさえ狭いエレベータは、完全に人間より紙袋の方がかさばっている。
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それでも大したものは何も買ってない。名もない店の、安いスカーフとか、Tシャツとか、エプロンとか、カバンとか…。値段だって、最初に買ったMのサングラスを上回るものは一つもないんじゃないかと思うほど。当然、人様のお土産になる価値もない。
それでも、ローマでこうしてロレッラとぶらぶら歩きできたからこそ出会えた、私と息子たちにはかけがえのないモノばかりなのだ。


最後の最後の晩御飯はロレッラの作ってくれた小エビとトマトのスパゲティ。
荷物整理もあり、一緒に料理できなかったのが悔やまれるけれど、今回はローマの休日ということで甘えてしまおう。そういえばロレッラの手料理で海の幸ははじめてかも。これも新鮮な魚介類が手軽に手に入るローマだからこそ。殻つきのエビを丁寧にむいてつくってくれただけあって、エビのダシがしっかり効いている。普段好んでエビを食べないMがおかわりしてる。うちのムキエビのパスタとはやっぱり違う味がするんだろうな。

scarpe
夜、シャワーを浴びようとNの靴を脱がせてみてびっくり。つい先日、シチリアで買ったばかりの靴なのに、靴の中が真っ黒だ。足が真っ黒になるならまだわかるが、靴が真っ黒になるって、どういうこと?靴にまで汚れがうつっちゃうくらい、足が真っ黒に汚れちゃったってこと?
つづいて鏡の前で自分の身体を見て二度びっくり。腕も首も足も、見事に日焼け跡が。シチリアであんなに死守したのに、ローマでこんなに焼けてしまうなんて。
最後の宵に浸る間もなく兄弟はバタンキュー。おかげで母は荷物のパッキング、はかどりました。
dormono
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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