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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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親バカ、もとい、「カブトムシ」バカ。

先週の前半のことだったと思う。
10時半くらいに帰宅すると、夫と先に寝ているはずの息子がまだ起きている。
「あのね、ママ~ん」と、別人のような甘い声で駆け寄ってきた。
「あのね、あのね。ごめんね~。ほんっと~に、ごめんね~」
いったい何を謝っているのか、とはいえ、満面の笑みで、申し訳なさそうな気持ちのかけらも見えない。
「あのね、きょう保育園の帰りにね、道の植木のところにね、カブトムシがいたの。でね、パパがね、拾ってきちゃったの」
私の虫嫌いは周知の事実。しかしまるでうちに犬でもやってきたかのような喜びように、さすがに嫌とは言えないし、母の弱みを見せるわけにはいかない。
「よかったね!ちゃんとお世話しなくちゃね」
こちらも精一杯の笑みで快諾のふりをする。

男が生まれた日から、いつかやってくるとは覚悟していた日が、
ああ、ついにやってきてしまった。
しかし、こんな都会のど真ん中にカブトムシがいるなんて、不思議な話だ。
翌日も遅くなり、二日続けて父子家庭にしてしまう。
深夜に帰宅すると、今朝までは虫かごの仮住まいにいたはずの我が家のカブトムシは
新品の水槽に、ふわふわの土のベッドまで完備された中に鎮座ましましている。
その横には、買ったばかりと思しき、培養土の袋やら、カブトムシゼリーの袋やら…。
母には入り込めない、男の世界を、父子で満喫している様子が伺える。ちょっと、悔しい。

その翌日、真昼間に、夫から携帯にメール。
今朝、保育園に送りとどけた際に、隣のクラスのSくんRくん(双子です)のお父さんが、他のお父さんとカブトムシの話をしていて、どうやらうちの裏手にある寺の境内にカブトムシがいるらしい、と。ついては、今日、迎えの際にSくんRくんのお父さんにあったら、どのあたりにいるのか聞いてきて欲しい、というメールだった。
そんなの、自分で聞いてよ。しかも、必ずしもお迎えの時間が重なるわけじゃないし。
と呆れたまま返事も書かなかったが、こういうときに限ってばったりと「SくんRくん父」に会ったりするのだ。
「すみません、夫が聞け聞け、ってうるさいもんで」と尋ねると
「SくんRくん父」は、まるで新しい仲間を大歓迎してくれるかのような反応。
「そう、いるんですよ、いるのっ。女坂の階段を上った途中に、いや、踊り場まで行かないところですよ、右手に湧き水があるとこ、知ってます?そこの左手にね、一本大きな木があって、そこにだけいるんですよ。垣根を入らないといけないから、ちょっと大変だけど。うち、今朝も6時に起きて捕まえてきましたよ。もしいなかったら言ってください。うちの、あげますよ…」
この間、私は足に3箇所も蚊に刺されてしまった。それくらい克明だった説明を、そのまま夫に伝える。

そして、翌、土曜日。
明け方、まだ空が明るくなりきっていない時間だったと思う。
夫が突然起き上がって「ちょっと、行って来る」と。
な、なにごと?行くって、どこ? 夢うつつの私に
「カブトムシ」
そういい残して、家を出て行った夫は、30分後、なんとカブトムシを6匹も捕まえて帰ってきたことを、私は息子と一緒に8時過ぎに起きたあとで聞かされた。
「おい、パパがお嫁さん探してきてあげたぞー。これで卵産んでくれるぞ」
起き抜けの息子は、喜びという以前に、何が起きたかわかってない様子である。
しかし、大のオトナがひとりでカブトムシとは、妙な光景に違いない。
生垣を越えて木に登る40代男の姿、近所の人に見られはしなかったのだろうか。
「もっと採ってこようかと思ったんだけどさ、子供二人連れた家族連れが来たから、そそくさ帰ってきちゃったよ」
とまったく恥ずかしげもなく頬を紅潮させながら答えている。
「しかし、ずいぶん親バカだね」
「ほんとだよなー。父親母親揃って子供とカブトムシ取りにくるなんてさー」
違うよ、あなたのことだよ。
「え?オレ?なんで?」

私に親バカを指摘された意味がまったくわからない夫が意外だったが、
その理由は翌日明らかになる。
朝8時過ぎに目が覚めた夫は、開口一番、
「ちっくしょー。寝坊した。もうダメかもしんない」
え?なにが?
「おれ、一応、ちょっと行って来る」
と寝巻きのジャージのまま家を出て、今度はたった5分で
「ダメだ、もういなかった」とがっくりと肩を落として帰ってきた。
確かに、これは親バカの姿ではない。子供のためにではなく、自分がカブトムシを捕まえたいのだ。
少年魂が、ふたたび甦ってしまったらしい。

この週末は、息子と同世代の子を持つ大学時代の同級生の家族が遊びに来たのだが、
帰り際、「これ、お土産」と夫が各家庭に紙袋を渡している。
「いやあ、みんなにあげようと思って。うちにはメスが二匹いれば、確実に産卵まで見れるかなーと思ってたから、まずメスを二つ捉まえて、あとはみんなにあげようと思ってペアで捉まえといたんだ」
私が、手づくりケーキを人に差し上げるときにと取って置いた綺麗な紙袋の中で、ごそごそと音を立てているのは、朝つかまえたカブトムシたちがペアにされて入っているのだった。
まったく、これが、普段はまったく気の利かない人間のすることとは思えないほど、マメである。

今夜も、恐る恐る水槽を覗き込む私をからかうかのごとく、
がさごそと音を立ててみせるカブトムシ。たったひと夏生き延びるために、果敢にゼリーによじのぼる甲冑をまとった虫と、たったひと夏のために木に登りつづける男。
どっちも同じくらい不思議な動物だ。
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コメント

もーー爆笑!! 
やっぱりritzの書くものはおもしろくて好きだぁ~
いつの間にブログを始めていたんだね。
9月から長期間、日本を離れることになりました。
行く前にまた、伺いたいなぁ。

ついに、彼らの面倒をみるはめになったわけですな・・・。
我が家にも昨秋まで彼らがおられましたが、夜中にギーギーうるさく、コバエも発生していたため、昇天された時は内心ガッツポーズものでした。
それにしても、パパ、少年のハートでステキ!

Eriさま K太郎ママさま

うちの夫をご存知の方なら、相当笑えると同時に、ある意味納得していただけるらしいです…。
こういうコメントを頂いた旨を話したら「えっ。ブログに書いたの!?まさか、どこにある木とか、書かなかっただろうね」だって。
重ね重ね呆れました。

カブトムシの話なら

カブトムシの話なら,男性も発言しないとバランスが悪くなりますよね.
この話で驚いたのは,都心でもカブトムシが捕れるという1点のみ.とくにそれを発見した人には敬意を表したいと思います.一方,ご主人の行動は僕には当たり前すぎて,どこかオカシイのか,どこがイケナイのかよく分かりませんでした(本当).
僕もかつてはかなりの昆虫少年でした.小学校時代,千葉県の船橋市に住んでいましたが,当時はまだ雑木林も残っており,クヌギの木がありましたので,家の近所でもカブトムシを捕まえることができました.しかしライバルも多く,とくにオスを捕まえるのはなかなか大変でした.ただ僕は虫を発見する「眼」に関しては,天才的なものを持っていました.ある時,木登りをしていたときに,上からふと眺めると,何でもない生け垣にカブトムシそれもオスがとまっているのを発見したのです.「おれが見つけたんだから,おれのだぞ.おまえら手を出すなよ」と叫びながら,木から駆け下り,いや駆け下りるのは無理ですから,滑り降り,あっけにとられている友達を尻目に,その生け垣のカブトムシを捕まえました.その時の興奮は今でも鮮明に思い出すことができます.
あの珍しい昆虫を捕まえたときの気持ちは,女性にはまったく理解できないものの一つでしょうね.脳内ホルモンが一気に放出されるに違いないあの恍惚感.女性が「バーキン」を手に入れた時よりも幸福であると断言できます.

なるほどー

橋都先生のコメント、プリントアウトして夫に読ませます。

都会のど真ん中の「カブトムシの木」。
こっそりお教えしますので、来年はぜひ、夫と木登りにおつきあいください。

つかまえたときの恍惚感、
来世はぜひ男に生まれて体感してみたいと、真面目に思いました。
そんな折ですが、今朝、ついに、うちのカブトムシの、メスの一匹が昇天しました。
我が家の夏も、終わりに近づいています。
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Profilo

ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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