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イタリアスマホ通信(2011秋)2


秋のイタリアは料理に携わる身にとって最も外せない季節。
特に、ランゲ丘陵のど真ん中のあたるこの地域は、白トリュフにチョコレート、バローロやバルバレスコといった世界の食通たちを唸らせる秋冬のブランド食材に事欠かない。
10月から11月は観光客で一番賑わう言ってみればハイシーズン。ピエモンテらしい料理も一番堪能できる季節だからこそ、
私も秋には足繁く通っていたけれど、子供が小学校にあがってからというもの、もっぱら夏休み期間を利用した夏のイタリアに甘んじてきた。
今回、幸いにもまとまった休みを家族で取ることができ、こうして秋のピエモンテ行きが実に六年ぶりに訪れることが実現したわけだ。

しかし… トリュフ祭の期間中だったなら、それならそうと言ってくれればよかったのにぃぃ~。
「いいわよ。いつでもあなたの都合のいいときにいらっしゃい!部屋もキープしとくから」
ピヌッチャも、カステロのリゼッタもそういうから、特に何も考慮せずに来てしまったけれど、せめて土日を外せばよかったと心底くやむほど、街にちょっと買い物にでるだけで道は渋滞、スーパーの棚ばガラガラ、そしてピヌッチャの宿もカステロも毎日満室。
まあ、トリュフ祭の期間であることすら気づかないでアルバに来てる人間なんて、私くらいだと思うけど…恥…最ももどかしいのは、修行時代ならむしろ忙しい彼らの手伝いに身を投じていたものを、乳児連れで押しかけてる分際にはそれしらままならないこと。
それでも、こうしていつものかわらない広くて温かい懐で私たちを歓迎してくれる彼らに、改めて感謝しきりだ。

さて、イタリアで迎える最初の朝が、ピヌッチャの朝食で始まるのは、幸先がいい。
夫婦二人で切り盛りするアグリ、朝食しか出してないけど、料理好きのピヌッチャの腕が存分にさえるテーブルには、ズッキーニと生ハムを巻き込んだクレープ、フルーツやトルタ、フリッタータまで。
朝は菓子パンとカプチーノで済ませるイタリア人からみれば信じられない光景だろうけど、スイス人やドイツ人の宿泊客を満足させようと始めたこの朝食スタイル、私は世界一おいしいイタリアマンマの朝ごはんだと思う。
12年前、ここに一人で居候しながらカステロのリストランテに修行にいっていた時、どんなにヘトヘトになっても、毎朝このご飯をチャージすれば、また深夜までの過酷な労働に耐えられたものだ。

その朝食を、いまはこうして家族四人で食べているのがなんだか不思議。
ゆっくりくつろいで食べつづけていたら、いけない、もうすぐマリオ夫妻が迎えにきてくれる時間ではないか。

サンモリッツの有名なホテルでマネージャーをしているピエモンテ出身のマリオおじいちゃんとは、Mが四歳のときにここからすぐ近くのカンティーナで知り合った。以来、日本に出張に来たときは日本で、私たちがピエモンテに来たときはマリオがピエモンテの実家に出て来てくれて、こうして再会を重ねている。
今回はマリオおじいちゃん最愛の奥さんも一緒。


夫妻が連れていってくれた、地元の人しかこないようなトラットリアも、とにかくすごい人、人、人。
前菜からパスタ、メインまでのフルコース、大皿に並べた料理をひとつひとつテーブルを回りながら配られて、食べたい分だけ食べるのがこのトラットリアのスタイル。ただでさえ時間がかかる方式、今日はいつもの十倍の人で賑わっているといっても言い過ぎではなく、全部制覇するまでに、なんと四時間も!
店を出たときには五時。早くも日が傾いている。

そんな私たちの胃袋を心配してくれて、夜はピヌッチャのあっさりリゾット。
作り方は極めてシンプルなのに、これがまた、荒れた胃袋にやさしく染み渡る味わいで、結局また食べ過ぎてしまう。

今年のイタリアは、日本と同様、夏が長く、雨も少なく、栗もキノコも例年にない大不作。
ここアルバの白トリュフ祭りで売られているトリュフも、プーリアやウンブリア、中には中国産のものも紛れ込んでいるとか。
ゆえに、こうして地元の人たちのタダメシにあやかっている限り、今年はトリュフも食べさせてもらえない雰囲気なのだけど、ま、いっか…。

そうして今日も、食べてるだけで一日が終わったのだった。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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