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イタリア スマホ通信③ウンブリア秘境の宿へ。






オルヴィエートから北へ車で二時間。トスカーナとの州境にほど近い深い深い山の中にある宿に到着。
ロレッラが飛ばして運転してくれたけれど、夕飯の時間に20分ほど遅れてしまった。プリモピアットにぎりぎり間に合うタイミングだろうか。
この宿の雄大な自然と、年老いたマンマと三兄弟の長男パオロがつくる素朴な郷土料理目当てで訪れる宿泊客は、全員一緒に大きなテーブルを囲むのがこの宿のスタイル。
車から一歩降りると、ひんやりを通り越し、予想以上の肌をさすような寒さ。とりあえずNをタオルケットでぐるぐる巻きにし、おいしい匂いに誘われながらクチーナと食堂のある母屋へと進んで行くと
「お、着いたみたいだぞ!」
テラスのテーブルからがやがやと声が。
「M~っ、M~っ!」
と甘い声でうちのMの名を叫ぶ小さな女の子の声も。これは、去年ここで知り合ったレイラちゃんの声だ。

みんなが一斉に振り返り、リゾートから抜け出してきた裸みたいな格好の私たちを見て、
「そんな格好じゃ、赤ちゃんが風邪を引く!」
と、私たち用にパオロが室内にテーブルをセッティングしてくれる。
しかし、こんな寒い日でも、やっぱり夏はテラスでの食事にこだわるのね…
「いやいや、俺たちだってこんなに急に冷え込むなんて、想像つかなかったよ。子供達なんて服がなくて、お客さんの忘れ物のジャージを羽織らせたくらいだよ」
と三男のグイド。

さあ、みんなに追いつくようにプリモピアットを平らげなくては。パッパデルポモドーロに食らいつき始めると、
「俺たちも中に移動だ!」
と、みんな自分のお皿を持ってドヤドヤとやってきて、テーブルクロスを敷き直し、結局、全員で一つの食卓を囲むことになる。
特に全員でひとつの話題を共有したり話を合わせたりしなくちゃいけない決まりなんてないけど、一つのテーブルを共にするというこの宿の言わずとしれたしきたりを踏襲しないといけない、みたいな感じが、きっとお客さんの中にもあるのだろう。いつ来ても常連客ばかりなのに、こうして飛び込んで来たような外国人を全員があたたかく迎え入れてくれる。ここの居心地のよさはこんなところにもある。

みんなが腰をおろしたところで改めてあいさつを交わす。
「よく来たわね!Nくん!」
と真っ先に駆け寄ってくれたのはさっきのレイラちゃんのママ、バシャバシャとイタリア人らしからず一眼レフでうちのNM兄弟を撮ってくれてるのはレイラちゃんのパパ。ローマ近郊に住む彼らとは、去年の夏に大きいお腹でここに来たときに知り合い、その後もメールのやりとりをしていた。
「はじめまして、じゃないよね。確か2~3年前にもここで一緒になったけど覚えてるかな?」
きゃー覚えてる、覚えてるぅ、謎の独身男、マウリッツィオね!

空腹感にたえかねて一気にかっくらってしまい、肝心の料理の写真を撮るのも忘れてしまったが、どれも習ったことのあり料理だから、ま、いっか。
ふと、もしかしたら自分も常連客の仲間入りしてるかも?と図々しく思ったりして。

離乳食を用意してやる時間もなく、Nには昼間スーパーで勝った瓶入りのレトルトベビーフードをパオロに温めてもらって食べさせる。それでもトロリとしたトマトソースの中に小さなパスタがはいっている本格派で、Nもイタリアにきてはじめてペロリとたいらげる。

いつもは離れの台所つきアパートメントに泊まっていたけど、今回私たちが泊まるのは母屋の上、彼らの居住スペースよりさらに階上の三階の部屋。
ここに通されるのは初めて。
夏の中でも特に混み合う八月第二週のトップシーズン、通常なら週単位でしか受け入れないところ、たった四泊でも特別に融通してくれたことを改めて痛感する。

年老いたマンマ以外は女っ気のない男三兄弟の宿ゆえタオルも交換してくれるわけでもなく、シャワーの出もわるい、そんな男くさい宿に、自分がこうして子連れで何度も通うことになろうとは、ましてやさらに乳児づれで来る気になるとは、初めてここに足を踏み入れたときは思いもよらなかったけど、何にもまさる人の温かさとおいしい料理にこうして毎年吸い寄せられている次第である。

蛾を一匹やっつけてから子供達を寝かしつける。
Mは早くもイタリア時間に慣れてきたとみえすぐに熟睡してくれたが、Nのほうはいまだにリズムがつかめないらしく、昨夜にひきつづき異常事態。
寝かしつけては泣き出して、寝かしつては泣き出してを一時間おきに繰り返しながら、ほとんどねむれずにすごしていたら、げげっっ、暗闇に浮かび上がる白壁の上を、ささ、ささささっと見たこともないよな虫たちが行き交う。
フナムシみたいなかたちでたくさん足があるようやつ、一匹は授乳しながら歩みより、勇気だしてサンダルでやっつけたが、ムカデみたいなのも天井ちかくを這っていて、毒でもあったらどうしようとか考えだしたらキリがないけど、誰も騒がないとこみりときっと大したことないんだろうとおもうしかない。
私に似て虫嫌いなMにはひた隠しにしつつ、この際、まっくろくろすけだと思って仲良く暮らそうと観念したのだった。
そんなこんなで気がついたら白々と夜が明けて、パオロが家畜たちに餌をやりにいく音が聞こえてきた。
あー、徹夜状態三日目の一日が始まる。Nも心配だけど、そろそろ自分の身体も本気で心配になってきた。

そんなわけで、iPhone片手に寝かしつけつつ、授乳しつつ、キーをうちまくっていたらこんなに長文になってしまった。

そっけない内容のブログに変わったら、ああ、ようやくNも眠れるようになったんだなと思ってください。とほほ。


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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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