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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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クラシック月間2

2011_6_26_1
夫から借りた双眼鏡がなぜか片目しかピントが合わず、結局、双眼鏡を新調してしまった。
しかし威信にかけて一応言うと、倍率は決して超ズームなどにはしていない。
ただ、ビックカメラのお兄さんには
「舞台全体をきちんと見るなら倍率はむしろ8倍で十分ですよ。バードウオッチングみたいに、一人の人間だけをじっくり観察するという場合なら10倍でもいいですけど」と言われ、
「じゃ、10倍で」
と迷わず10倍を購入している私は…やっぱりただの親バカか。

さて、行ってきました。お客さんとして。
メトロポリタンオペラ「ラ・ボエーム」の最終公演。
いまやMの「叔母」でもあるイタリア仲間のM子さんもわざわざ高いチケットを買って、しかも双眼鏡まで買って、ご一緒してくださる。この時点ですでに、親バカ度、二乗である。

息子たちの登場する第二幕が開いた瞬間、二人して3階席から落ちんばかりに身を乗り出し双眼鏡越しに息子の姿をとらえる。
「Mくん、ど、どこ?!」
「あ、あそこです、あの階段の下の黒いドレスの人の左側!赤いドレスでベージュのストールしてる…」
「あ!いた~!あれ?また引っ込んじゃうの?」
「今度は馬車と一緒に上手からまた入ってきますから、あ、ほら…」
「あ、ほんとだ~!!」
てな具合で周囲を顧みずハイテンション。
しかし固唾をのんで見守るとはまさにこのことで、ゲネプロのときとは全く違う本番の臨場感にぐいぐい引き込まれていく。METのゼフィレッリ演出のこのラ・ボーエムといえば30年来受け継がれてきた伝説の名舞台。その名誉に恥じないメインの歌手たちや本場のエキストラ、そしてその名誉すらまったく理解していない少年合唱団32人がしかし、見事に一体となって歌い、楽しんでいるエネルギーが3階席までびんびん伝わってくる。
30分の第二幕もクライマックス、行進曲とともに広場が盛り上がり総勢200人以上が客席の方を向き大合唱のシーン。
ファビオ・ルイジ率いるオケのエンディングとともに幕が下りた瞬間、思わずじ~んとして涙が出てきてしまう。息子のMが、最近、何度のこのオーケストラのエンディングのところを「ジャン、チャカチャカチャン…、ジャン、ジャン!!」と髪をふり乱したファビオ・ルイジのマネつきで歌っていたのだが、なるほど、きっと舞台の上に立っている人間にとっても、合唱、そしてオケのクライマックスとともに第二幕の緞帳が下りる瞬間というのは格別の気持ちなのだろう。

そんな興奮を彼が味わうのも、ついに今夜が最後。
延べ一か月近くにわたり頑張った息子のために、公演終了後、歌手たちのサイン会に並んでしまう。舞台裏や舞台上で息がかかるくらいの距離で大物歌手たちと空間を共にしている彼らだけど、個人的にサインをもらったりできる機会などもちろんない。
今回の経験を少しでも焦ることなく彼の心にとどめておいてほしくて…というと聞こえはいいけど、ひとりのミーハーオペラファンとしての血も騒ぎまくっていたことも否めない。

「歌手たちは明日の早朝の飛行機で帰国しますから、みなさん話しかけたり、立ち止まったりしないですみやかに済ませてくださーい!!」など係の人が叫んでいるが、こうしてサイン会を毎回開いてくれるエージェトなどそうそうないのでもらえるだけでも有難い話。しかし、通常なら3000円はするパンフレットの無料配布といい、毎回公演後のサイン会開催といい、よっぽど今回の震災にる出演者変更は、ファンに対しては土下座ものの不始末だったことを、エージェント自ら語っているようなものだ。でも、そんな中でもフリットリとアルバレスがピンチヒッターとなってくれたおかげで、「ラ・ボエーム」に関しては従来のキャストによるものより何倍も素晴らしい出来栄えになっちゃったんだけどね、ふふふ…。

残念ながらマエストロ、ファビオ・ルイジだけはお疲れとあって帰ってしまったけれど、それでもサイン会に列をつくる大勢のファンから、彼の乗った車は「ありがとう!マエストロ、ありがとーっ!!」と見送られた。
「ブラーヴォ」より前に「ありがとう」という言葉が出てきてしまうのは、きっと誰もが同じ。今回の震災で、真っ先に代役を引き受けてくれたマエストロや歌手たちに、そして従来のキャスト以上の演奏を日本の地に刻んでくれた彼らに、感謝の気持ちでいっぱいになる。今回のメトロポリタンが日本で成功を収めることが、今後の日本における海外オペラの「復興」のためにどれだけ重要であるかを、きっと彼らもわかってくれていたに違いない。

厳しい係の人に反して、出演者たちが着くサイン会のテーブルは、とっても明るい。全公演が終了した解放感もあるのかもしれないが、とても直前まで緊迫の舞台に立っていた人たちとは思えないくらいフレンドリー。
マルチェッロ役のクヴィエチェン、ショナール役のパークス、ムゼッタ役のフィリップス、コッリーネ役のレリエと並び、順番にサインをもらっていく。そして最後にミミ役のフリットリとロドルフォ役のアルバレス。イタリア人とアルゼンチン人の二人ならばと、係のお兄さんの目を盗みイタリア語で「息子が今回の合唱団で…」と言いかけた瞬間、「んまあ!あの子供たち、すばらしいわ!」「ほんと、彼ら、すばらしかったよ!」とアルバレスからはなんと握手まで求められ…。
う、うれしい。息子たちが褒められたことも、アルバレスに握手してもらったことも。合唱団に、彼らの頑張りにも、「ブラーヴォ」より前にまずは「ありがとう」を言いたい。


さて、メトロポリタンの興奮冷めやらぬ間に、今度はマエストロ、パオロ・カリニャーニ第二弾。マエストロとは2年前のペーザロ以来2年ぶりの再会だけど、今回も明るく楽屋に迎え入れてくださった。
マエストロとの親交は、今は亡きKさんあってのこと。そのKさんがくださった貴重なご縁を大事にし続けたい一心で、図々しいのを百も千も承知の上でこうして楽屋に押しかけえている。
おまけに今回は、ふたつめの公演は話題の辻井信行との公演のためチケットが入手できなかった私のために、なんとMの分とあわせて二人分を斡旋してくださった。

今まで、車中私がクラシックのCDをつけていると「え~。クラシックなんてつまらないよ。徳永英明かサザンに変えて!」と言っていたMも、MET出演を機に、クラシックに俄然興味がわいてきた様子で、「行く行く!サントリーホール一緒に行きたい!」と別人のように意気揚々とついてくる。
息子と二人でクラシックコンサートに足を運べるようになるなんて…と感無量で席につくも、6分の演奏「フィデリオ」の序曲を前のめりで聴いていたのもつかの間、その後、辻井信行の演奏が始まると、見事にすとーんと眠りにおち、クークーと小さな鼾が聞こえるにいたっては、こちらは冷や汗もの。40分の演奏が終わり、拍手喝さいの渦、割れんばかりのその音にも起きもせず、アンコール演奏がはじまっても微動だにしない。
おいおい、この会場の中のほとんどが辻井クン目当てに来てるというのに…。
休憩時間をはさんで後半はヴェートーベン「田園」。ふつうならこっちのほうが退屈になるはずなのに、今度は身を乗り出して聴いている。
どうやら、今回のオペラ出演で舞台上からピットのオーケストラの演奏を間近に聴いたことで、オーケストラや指揮者のダイナミックな動きや音に、開眼したらしい。
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舞台裏を訪ねると、まっさきにMの姿を見つけて名前を呼んでくれたマエストロ。気を良くしたMはますます調子にのって「将来、指揮者になろうかな…」などと言っているが、さて、この夢もいつまいでもつのやら…。


長男Mとともに駆け抜けたクラシック月間の6月。
いっぽう、知らないうちに7カ月に突入していた次男Nはそんな母と兄を横目に着々と成長しているようで…。
床の上に転がせたままちょっと目を離しただけで、まだハイハイできないくせに部屋の隅から隅に一気に移動してたりする。
どうやら、寝返りもより活発になり、そしてお腹を軸にくるくると鉄道のターンテーブルみたいに方向転換することを習得したおかげで、お目当てのものめがけてどこへでも行ってしまう。
目下の獲物は、お兄ちゃんのカバン。
ただいまー!と帰宅するなりMがランドセルや手提げ袋をドサっとおいた瞬間、「獲物発見!」とばかりにムクっと起き上がり、寝返り、寝返り、ターンテーブル、もひとつ寝返り、ターンテーブル…と巧みに組み合わせながら、見事にカバンにたどりつく。そしてイタズラが始まるのだ。
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おもちゃなど、そういやこれといって買ってやっていないけど、Mのだらしなさのおかげで部屋の中は獲物に事欠かない。こうして下の子ってのは恐ろしいスピードで成長していくんだな。
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ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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