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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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予期せぬプレゼント

2011_6_1
出張じゃないってのに、つい、クセで領収書をもらってしまう。
東京~名古屋往復の新幹線。2万円もするんだ。高っ。誕生日にプレゼントももらえなかったくらいなのに(しつこい)出費ばかり続くな。

行ってきました。
メトロポリタンオペラのゲネプロ@愛知芸術劇場。
素人の私がなぜゲネプロに行けたかというと…
息子の所属している少年合唱団が「ラ・ボエーム」に駆り出され、息子たち総勢30名が出演することに。保護者もゲネプロを見られることになり、すでに本公演のチケットは購入済みだったけれど「ネトレプコのミミが間近で聴けるまたとないチャンス!」と勇んで駆けつけてしまった次第。

ところで、原発事故のとばっちりを受けたのは、今回のメトロポリタンオペラも例外ではない。
事故以来、思わぬ痛手を被りつづけている海外オペラの引越し公演。
3月のフォレンツエ歌劇場のように、公演自体が中止に至ることはさすがになくなりつつあり、今回の公演に関しては天下のメトロポリタンのプライドをかけた説得もあって、メインのキャストはほとんどが来日する予定だった。
さすがにプロ意識の高い音楽家たちは違うな~なんて、感心までしたりして。
それなのに、それなのに、指揮者レヴァインは早々にキャンセルとなり、イタリア人指揮者のファビオ・ルイジに変更。
これはまあ、個人的にはファビオ・ルイジのほうが好きだから大歓迎としよう。
ところが、ゲネプロ前日というこの期に及んで「ラ・ボエーム」のミミ役、ネトレプコがドタキャンという緊急発表。理由は故郷ロシアのチェルノブイリ事故の記憶が新しく正常な精神状態で演奏困難だからとか。まあ、さすがにこれだけ「メルトダウン」が次々と明らかになれば来日拒否は仕方がないのかもしれだいけれど、正直、その行動にちょっと落胆したのは私だけではないと思う。
で、彼女に代わってミミ役を演じることになったのが、同じくメトロポリタンの「ドン・カルロ」でエリザベッタ役をやることになっていたバルバラ・フリットリ。
こちらも私が大好きなソプラノ歌手だから個人的には悲しいわけではない。
しかし、手放しで喜べないのは、フリットリが「ラ・ボエーム」に出ることになった代わりにエリザベッタ役は代わりに全く知らない歌手が演じることになってしまい、「ドン・カルロ」のチケットも早々に買っていた者からすると、お金返して~っ!という気分も否定できない。

そんなわけで、なんともいえない悶々とした思いのまま「ラ・ボエーム」のゲネプロに行ってきたのだが…
これが素晴らしかったのだ!予想していたより何倍も、何十倍も。
フリットリのミミは、期待を裏切らない素晴らしさ。お色気ネトレプコより、フリットリの正当派ミミを聴けたのはむしろラッキーだったかもしれない。少なくとも、お針子ミミが今までにない知性と理性にあふれたキャラクターとして輝いてみえたのはフリットリならではだろう。
さらに、ファビオ・ルイジの指揮は鳥肌もの。幕間にルイジが少しずつ注文を加えながら音づくりを完成させていく様子を目の前で聴けたから余計にそう思うのかもしれないけれど、最初と最後ではまったく別物のメトロポリタン歌劇場楽団になっていたといってもいいくらい。

出産、育休としばらくオペラから遠ざかっていたこともあり、どんな演奏でも素晴らしいと思えちゃうんだろうか。一年ぶりにお寿司を食べて、大したネタじゃないのに美味しい美味しいと叫んでいる状態ではないだろうか。
と、何度も自問自答しだけれど、うんにゃ、そんなことはない。やっぱり素晴らしい演奏だったと、心からそう確信する。

考えてみたら、イタリア人の指揮者に、イタリア人の主役。
日本が世界中から「放射線漬け」扱いされて、後ろ指さされて、私たちがなんともいえない屈辱感を味わう中、真っ先に代役を買って出てくれた二人の偉大なるイタリア人音楽家。
ルイジとフリットリの息の合ったハーモニーと彼らの気持ちのよい心意気に、きっとほかのキャストもぐいぐい引き込まれて、巻き込まれて、気がつけば、NYメトロポリタンがすっかりイタリア人魂に乗っ取られていた、みたいな。イタリア馬鹿から言わせてもらうと、そんなところだろうか。
もとはといえば原発のせいで二転三転した出演者や指揮者、でもこうした不意のキャスト変更があってこそ誰もが予期できなかった素晴らしい才能と才能の組み合わせに出会えることもある、それがまたオペラの未知なる魅力でもあったりするのだ。
新幹線代だけでこれだけレベルの高い演奏が、おまけにプレス席のようないい席で聴けちゃったのだから、大ラッキー。あれ?いつの間にか2万円が「高っ」から「安っ」になっている。

ちなみに、息子たちが登場した第二幕はというと…
これまたゼフィレッリ演出ならではのオーセンティックで、それでいて細部に職人魂を感じる舞台。
衣装合わせの際に、「スクールボーイの何番目」とか「屋台のだれそれの息子役」とか、ただのエキストラなのに子供たちひとりひとりに「役柄設定」が決められていたのも、身長や足のサイズに至るまであらかじめ申告させられていたのも納得がいく。
子供たちが見事にカフェ・モミュス前の広場での風景に溶け込んで、1830年代のパリに自然にタイムスリップしている。
少年合唱団30名の中で一番小さいうちのMは、貴族の女の子役。親の私が言うのもなんだけど、ふわっと膨らむ赤いドレスと大きなつば広帽がとってもお似合いで、どこからどう見ても女の子そのもの。
4年生のHくんと兄妹として手をつないでいる二人を見ると、「君たち、そのまんまスタジオアリスに行ってらっしゃい!」という感じ。いや帝国ホテル写真館のほうがいいな。
親は舞台裏には一歩も近づけないし、撮影も禁止だから、息子の稚拙な報告から感じ取るしかできないのだけど、
「おチンチンが蒸れそうなんだよ。3枚も4枚もスカート重ねて穿くからさ」「靴はね、O君たちが履いてるみたいな革靴なの」「靴も洋服も、ぴったりなんだよ。どうせボクは最初から女の子役って決められてたんだ。ぶつぶつ…」
なるほど、ペチコートを幾重にも重ね履きするわけね。靴は学習院の革靴みたいにブーツなんだ。などなど想像するにつけ、まとたない貴重な体験を、しかも8歳にしてさせて頂いているありがたみを痛感する。
一度でいいから我が子を女装させてみたいという願望が思わぬところで果たせたのもうれしいけれど、名古屋・東京での全5公演を無事に終えてほしい、ピットに落ちたり馬にひかれたりすることなく、この素晴らしい「ラ・ボエーム」を妨げることなく立派にお勤めを果たしてほしいと、ただただ祈らずにいられない。

そんなこんなで2幕が開いた瞬間に、不覚にもすっかりステージママと化してしまい、2幕に関してはムゼッタのアリアさえほとんど記憶になく、オペラファンとして誠にお恥ずかしい限り。
本公演では、最初から最後まで理性を保って、しっかりと堪能しよう。
しかし、4万円も払って手にした席も、C席だし、おまけにNHKホールだから期待できない席だよな…。
何十倍ズームの双眼鏡買っちゃおうかな…
はっ!そんなことしたら、再びステーージママに成り下がってしまうではないかっ。

ステージママと、オペラファンとの狭間で葛藤しつつ、興奮さめやらないまま新幹線に。
品川駅にて解散時に、これまた興奮に輪をかけられる事が。
先日の日曜日に、合唱団からオーディションへと派遣された海外アニメの吹き替え役、他のタレント事務所を含む数十人(本人いわく)の中から、なんと我が愚息が選ばれたことを先生から告げられる。

う、涙…。
別にアニメの吹き替えをやらせてもらえることがうれしいのではない。
アニメといってもCSでしか放映されない、おまけに短編アニメだし、これといって大きな役どころでもない、どちらかというと地味な仕事だ。
しかし、今までこれといって成果もあげられず、途中から入団してきた才能ある子供たちに追い抜かされて外部出演も補欠に甘んじたりと、8歳児なりに悔しい思いをしてきたであろう息子が、こうして何十人(本人いわく)もの中からたった一人選ばれたということが、彼の努力が小さい形ながらも一つ実ったということが、親としてうれしいのだ。
先生から決定の旨を告げられて、はにかみながらも頬を紅潮させているMの顔を見るにつけ、思わず涙が出てきそうになる。

彼をこうして過大評価をしてくれるのは、しかし合唱団の先生方ではなく、商業ベースってあたりが、しょせん広告屋の息子という感じがしないでもないが、それとて一つの評価に違いない。

誕生日にはなんにももらえなかったけど、二日遅れで、我が息子から大きなプレゼントを二つももらってしまったような、そんな気分。
がんばれM! そして、ありがとう。

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コメント

あああ~楽しい記事でした♪
いいですね~ゲネプロ観れたなんて!
今日の新聞に出演者の変更が原発事故のためと載っていて、ちょうど「ちっ!」って思ったところだったのが、吹っ切れました。
私はオペラには詳しくないけど(観たいけど観れない理由が・・・↓)・・・
この記事を読み観たい!!としみじみ思いました。
本番のM君、素敵だったでしょうね~

それにしてもM君!すごい!!
アニメの吹き替えにも選ばれたなんて!
「持ってる男」ですね。
頑張れM君!

stellaさま
そうですよね、「ちっ」て思いますよね。でもこうして、きっと家族の反対を受けながらも日本に足を運んでくれた指揮者や歌手たちのプロ意識を、まざまざと見せつけられたような、そんな気がしました。
そんな素晴らしい舞台を汚さぬよう、息子には力いっぱい頑張るように…と言いつつ
いかんせんチビな息子をエキストラの中で見つけるのが一苦労なもので「できるだけ舞台の前の方を歩くのよっ!!」とか言ってる私。
きっと他のお母さんもみんな息子に同じこと言ってるんだろうな~。
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Profilo

ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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