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大きな赤ちゃん×2

shokkiarai
「ママ、今日も一緒にお風呂入ろうよ。アレしない?」
Nが生まれてからそのお風呂は基本的に夫の役目。当初はMも弟と入りたがって、もっぱら父子3人で狭いお風呂に入浴。一方、私は外で待ち受けてNを引き取りオッパイをあげ…そして最後に一人でバスタイム。
というパターンがずっと続いていたのだが、最近のMは、私が入浴するタイミングまで待ち続け、一緒にお風呂に入って「アレをしよう」というのだ。

「アレ」とは、なんと“乗り物ごっこ”。彼が3~4歳のころに私とお風呂の中でやっていた遊びだ。
「今日は何にしよっかな。昨日はバスだったから、今日はタクシーかな。じゃ、ママが運転手さんね」
そして私は、回れ右をさせられ、湯船の中で同じ方向を向きながら、ブ、ブーとかやるのだ。
し、しんじられない。
あと2~3年もしてNが乗り物に興味を持ち始めれば、Mと遊んだ同じようなことを繰り返すこともあるのだろうと思っていたが、まさか、同じMのほうで、同じ遊びをくりかえすことになるとは思わなんだ。
私は動揺と笑いをこらえ、ハンドルを握る動作をする。
「すみません、渋谷までお願いしまーす」
「渋谷はどの道でいきます?」
「お任せしまーす。今日は寒いですね~。なんでもインフルエンザが急にはやり始めたそうでねー」
客役の口調は、私の母にそっくり。タクシーごっこの具体性だけは、さすがに進化しているものの、いやはや、びっくり。歳も8つも離れ、なんといってもあんなに弟をかわいがっているMでさえ、赤ちゃんがえりってあるものなんだ。
狭い湯船の中で二人そろって回れ右をし、運転手役を交代すると、Mはお客役の私の膝の上にちょこんと座ってハンドルを握る。
5年前とは比べ物にならないくらいゴツゴツと骨っぽく、重たくなったMのお尻を膝の上に載せていたら、この“大きな赤ちゃん”がなんだか急に愛おしくなってきた。

その後もMの赤ちゃんがえりは、いたるところで露呈するようになる。
入浴後、私は明日のお弁当の下準備をしたりNに授乳したり、夫は食器の残りを洗ったりと、Mの就寝支度をかまってやる余裕がないときがあると、決まって「ママ…いっしょに寝ようよ。ひとりじゃ寝られないよ」となる。
「ママは先にNちゃんを寝かしつけちゃうから、Mは早く歯磨いて、先に寝室で寝なさい」となだめるも、
「いやだ。じゃ、Nちゃんも一緒に寝室に入って3人で寝ればいいじゃん」と提案される。
仕方なく、大人用ベッドに、Nを真ん中に挟んで母子3人で川の字。
私はNのお腹をトントンしていると、小声でMが
「ママ、NちゃんのトントンはMがやるから、ママはMのことトントンしてくれる?」
ときたもんだ。
ええーっ、まじーっ!?トントンしなくちゃ寝られないの!?
私の手とMの手が不自然に交差しながら、トン、トン、トン…。なんとも不思議な光景だ。

かと思えば急に
「あのさ、ママにだけ言うけどさ…」と突然何を言うのかと思えば
「Mさ、最近、なんだかNちゃんにみんなを取られちゃった気がして仕方がないんだよね…。ママだから言うんだけどね」
ママだから言うけど、とか言いながら、それって要は、超ストレート直訴ではないか。

私としてはことさら赤ちゃんをかわいがっているつもりはなく、むしろ暗い授乳生活の中ではMとのたわいない会話が救いなだけに、Nが生まれからは今まで以上にMと密に接しているつもりなのだが、挙句は
「ママって、最近、なんだかちょっとMに冷たくなった気がするんだけど…」ときたもんだ。
そんな母にゴマをすろうと思いたったのか、今夜は私がほうれん草をゆで始めると「胡麻和えつくるの?やってみたい!お手伝いさせて」と、文字通りのゴマすりにせっせと精を出し、食事が終われば、椅子に上って自ら率先して食器洗い。
ここまで来ると…泣けてくる。
gomasuri

きっと今のMの心の中には、赤ちゃんが生まれてカワイクてカワイクて仕方がない気持ちと、みんなの視線が一転して赤ちゃんに注がれるようになったことへのさみしさと、相反する心情が絡み合っているに違いない。
「ママ。赤ちゃんがいるって、いいね。Nちゃんは、どうしてこんなにカワイイんだろうねえ、まったく」と言っていたかと思えば
「いいなあ、Nちゃんは。学校も合唱も行かなくていいから」とか「Nちゃんの新しいお洋服、Mも着てみたかったなあ」などと言ってみたり。
それでも、スーパーに行けば私に代わって荷物を全部持ってくれるし、ベビーカーをひとりで押すといって譲らないし、リビングのおむつケースには気がつくといつもおむつが補充されているし、Nの着替えも手伝ってくれる。Nが泣き出せば飛んで行って抱っこして、親のやりかたを見よう見まねでゆすったりお尻をトントンしてあやしたりする。
まだまだ一人っ子時代の自分がすてきれないのに、彼なりに一生懸命お兄ちゃんになろうとしている、そんな繊細さと健気さに思わずぐっとくる瞬間がある。
上の子の赤ちゃんがえりも、なかなかいいもんだ。
しかしこの赤ちゃんがえりが終わってしまうと、急に大人びてしまうような、手元を離れて行ってしまうような、そんな気がして、このまま時がとまってくれたらいいのにと願わずにいられない。

さて、そんな繊細な兄にお構いなしに、弟というのは世間一般でいわれるように図太い生き物に着々と育っているような気がする。
親に抱っこで寝かしけてもらえずにたった一人で暗闇の部屋のベビーベッドに放置されても、「アー、ウングー、ホエ~」と独り言をひたすら言い続け、静かになったなと思えばもう寝ている。
お風呂ではジャッバーンと勢いよく湯を腹にかけてもビクリともせずニタ~っと笑い、
お腹にガーゼを当てずに湯船に入れても怖がりもせずさらにニタ~と笑っている。
相変わらずブルーをひきずる私が腕の中の我が子をあやすことも放棄してワイドショーのエリカ様にくぎ付けになっている中、ふと視線を覚えて我が子を見下ろすと、そんな私の目をじーっと見つめて「ヘヘン…」と鼻で笑ったりする。
まるで、赤ちゃんがえりする兄と、かまってくれない母に、早くも愛想つかしてるような…。
寝る子は育つというのは本当のようで、性格も図太ければ、体もどんどん太く大きくなっていく。
こっちは、まさにほんとの“大きな赤ちゃん”。
成長が楽しみというより、ちょっと末恐ろしいかも…。

大きな赤ちゃん×2人。
きっと私にとっては、どちらも、きっといつまでも赤ちゃん。で、いてほしいな。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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Author:ritz
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