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母さんが連れて行く下田②~とっておきの温泉宿、みっけ~

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思いっきり汗だくになったあとは、バッシャーンとプール?それともプライベートビーチ?
いやいや息子の場合は、バッシャーンと温泉である。
しかし夏休み最後の週に、伊豆半島の突端、下田くんだりまで来て、海にもプールにも一回も入らずに露天風呂につかっている小学2年生というのは、やっぱりどこか変わっている。
かえるの子はかえる、かなづちの子はかなづち、だな。

私としては、母子二人だけでどこかに一泊となれば下田東急ホテルとか、プリンスホテルとか、そのあたりが無難だろうと思っていたが、
「え?下田って温泉あるんでしょ?だったら温泉のお宿がいいよ」
「でもさ、ホテルにしたらプールとかあるよ」
「えー、プールより温泉のほうがいいよー」
息子にせがまれるものの、伊豆近辺は相場も法外に高く、温泉好きの我が家もめったに寄り付かない地域。なじみの宿もないので仕方なくネットでつらつらと宿探し。
そんな中、偶然見つけたのがこの宿だった。

南伊豆は下賀茂温泉、「藤波荘」。
8室だけしかないこじんまりとした宿。大浴場はなく、お風呂はすべて貸し切りの、露天風呂が3つと内風呂が1つ。なにより、電話したときの女将の口調がとっても感じがよくて…。
「うちのお料理はね…、お二人さまに一匹、金目の煮つけがついちゃうんですよ。だから、大人の方とお子様が1名ずつだと、申し訳ないんだけどお子様料金ってわけにもいかなくてね。でもね、少食の方用にお食事をおさえめにした、ちょっとお安い値段設定もあるんですよ。それだったらいかがですか?…お子さんとお二人だったら、下田を見たらできるだけ早くうちに来て、お坊ちゃんとゆっくりお休みになっていってくださいな」
下田から15分のタクシー代も、宿が負担してくれることになってるという。良心的だし、電話越しの優しい女将の姿が早くも目に浮かぶようで、即決してしまった。

さて、無事に宿にたどり着くと、想像していた通りの「やさしいばあちゃま」という感じの女将。
「ぼく、お手玉とか、するかしら?」とお手製のお手玉をMにプレゼントしてくれようとするも
「えー…、お手玉は、あんまりしない…」
「あらー、するでしょう~?」
「うーん…、しない…」
「じゃ、ティッシュケースはどう?いる?ハガキもいるでしょ?」
とMに握らせたのは、和生地で作ったお手製のティッシュケースと宿オリジナルのハガキ。
「あ、そうそう、こんなのも使うかしら…」
と、チリンチリンと鳴るベルの下になぜか鉛筆削りのついた、いったいどこで入手したのかも想像つかない不思議な小物までプレゼントしてくれた。なんだか世話をやきたくてしかたがないといった感じで、思わず、初対面とは思えない親しみを覚えてしまう。

部屋に通された後は、一休みする時間も惜しんで、一目散にお風呂へダッシュ。
幸い、今夜の客の中で私たちが一番乗り。片っ端からお風呂の扉を開けて中をチェック。
「ここもいいねー」「うわ、ママ。ここもすごいよ」「こっちはどんなお風呂かな?」…。
さんざん迷った挙句、私とMが最初に選んだお風呂は、つっかけサンダル履いて、数十メートル裏山を登っていったところにある広々とした屋根つき露天風呂。貸し切りといったって、ゆうに8人は入れる広さ。普通の宿なら、これだけで立派に「女湯」「男湯」の広さだ。
あれだけ全身汗だらけになったあとに、いまだ鳴き声も衰えぬセミの声を聞きながら、さらに熱い湯に入るというのも、めったにない体験。これはこれで気持ちがいい。
灼熱のアスファルトを歩いてかく汗と、温泉につかってかく汗とはまったく別物であることも痛感する。
「ママー、いつものさ、顔つけないで泳ぐ犬掻きみたいの、やってよー」
いいよ!といいかけて、自分が妊婦であることに気づく。さすがにこのお腹じゃできないよー。
そういえば今日一日、これだけ歩きまくってる間、自分が8ヶ月の妊婦であることなんて、頭の中にこれっぽっちも存在しなかった。ありがたいことである。

お風呂で汗を流した後は、冷房の利いた部屋で涼みながら、日記の宿題。それから部屋に置かれてあったオセロゲームなどなど。東京ではありえないような時間の流れ方。

そうこうするうちにいよいよ夕飯の時間。
大広間を襖で仕切った個室状態。大きな大きなテーブルをはさんで、小さな息子と向かい合わせ。なんだかちょっと淋しいくらい。
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目の前に置かれたおしながきを見ると、立派なフルコース。本当にこれで「お食事少なめコース」なの!? とビックリ。
次から次に運ばれる立派なお料理にさらにビックリ。
刺身あり、揚げ物あり、これだけでも十分なくらいなのに、メインの金目の煮付けも、身も厚く大きさも半端ない。二人でどんなに頑張っても、ここまででもうお腹がはちきれそう。
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その後はさらに合鴨の桑焼きが出てきて、最後はマグロの漬け丼まで出てくる。ところがこの桑焼きが、周りが少しカリっとしていて、ついつい食べてしまうから不思議。マグロもさっぱりとしていて、最後の締めにふさわしい一品。…でも、もう、さすがにお腹いっぱいで倒れそう。Mにいたっては、本当に座敷に倒れこんでいる。これこれ、お行儀悪いからここで寝っころがらないのっ!と叱る気力もないくらい、私もお腹一杯で動けない。
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「少なめコース」でこれだったら、「普通コース」だったらいったいどうなっちゃうんだろう。
なんて思っていたら、今度はデザートの「塩のジェラート」が運ばれてきた。これがまた…ねっとりと作りたての味で、う、うまい。ギブアップのMの分まで、なんと二人分も平らげてしまった私。
やばし…。
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浴衣も着くずれ、腹はぱんぱん、かろうじて腰骨あたりで止まってる帯は水前寺清子状態。お腹をおさえながら夕食処を出ると、女将さんに、
「あの…もしかして、お二人目??あーら、やっぱり!最初にいらしたときにね、お顔を拝見して、もしやそうかなと思ったのよ」
腹ではなく顔でわかったというのも、敢えて気を遣ってそう言ってくださってるのか知れないが、しかし身ごもっているときの「顔つき」って、そうも違うものなんだろうか。そもそも、普段の私の顔さえ知らないのに、このおばあちゃん、いよいよ他人とは思えなくなってくる。

お湯もよし、風呂もよし、ご飯も美味で、女将もやさしい。こじんまりとしていて、まるで親戚の家に来たみたいな居心地の良さ。
とっておきの温泉宿を見つけてしまった、こういうとき、なんともいえない幸せな気分になるものだ。
その喜びは息子のMにとっても同様だったのだろう、父と感動を分かち合うべく残業中の夫の携帯に電話して、お風呂の構造や様子を事細かに説明している。
最後に私が代わると、電話の向こうの夫は
「そこってさ…素泊まりとかできないよね」
えーーーっ。今から来たら何時になると思ってるのよ。近いようで遠いのが南伊豆。車でくればどんなに飛ばしても3時間はかかるだろう。
「じゃ、明日の朝、宿まで迎えに行ったらお風呂だけ入らせてくれたり…するかね?」
夫のその気持ちはわからないでもない。立ち寄り湯は受け付けていない宿だけど試しに女将さんに聞いてみると、
「まあまあ、そういうことなら、ぜひどうぞ。タオルも出しませんから、お金もいりませんよ。それより、よかったじゃない?!パパが迎えに来てくれれば、帰りも安心ね!」
と快諾してくれた。
しかし、我々のチェックアウトは10時。それまでに風呂を堪能するとなると9時には到着すべきであろう。となると、夏休み最後の海水浴客で道も混むことを考えると、少なくとも5時には家を出ないといけないんじゃないの?

まあ、そんな夫のことは放っておいて、私たちは腹ごなしにもう一っ風呂行ってくるとしよう。
次に選んだ風呂は、割と小さな湯船だけれど、昼間であれば遠く山並みを望むことができる野趣あふれる露天風呂。
夜は夜で、まっ暗闇に小さな明かりだけが浮かび上がり、空にまたたく星を見ながら浸かるのは最高に気持ちがいい。湯船のへりを、のそのそと歩いているのは、キリギリスだ。ううむ、このお風呂もなかなか素晴らしいぞ。
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お風呂上りに冷たいビール、といきたいところだけど、冷たい水でがまん。でもこれまた、とっても美味しい。
ふかふかの布団にゴロンと横になって電気を消すと、ここちよい疲労感と充足感に包まれて、ああ、幸せ…。
「パパ、明日の朝、本当に来るかな」
「さー、どうだろうね。起きれないんじゃない?」
「でも温泉入れると思ったら、起きるんじゃないの?」
そんな会話を2~3交わしただけで、珍しくMもコテンと寝てしまった。
ああ、楽しい一日だった。それもこれも、君のおかげだ、ありがとう。寝顔に向かっては、母は素直にこう言える。




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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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