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名残り雪さがしの旅③ 五箇村~高山

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前の回に「別に団体客の有り無しにこだわるわけではないが」と書いたが、やっぱりこだわることを認めよう。そういやイタリアでも私は、人が集まる観光地はなるべく長期滞在せずに、いつも人のいない“田舎”を目指してることに相違はない。
価値ある見どころが詰まっているのに人があまり押し寄せない、そんな田舎町に出会うと、イタリアでも日本でも、それはそれは旅をしていてよかったと思うものだ。
ここ「五箇村」もなんとなくそんな村かもしれない。

4月最初の週末を利用した、名残り雪をさがす旅も最終日。
白川郷を発ち、渓流沿いにどんどん山奥に進むと五箇村に辿りつく。
もちろん、白川郷と並ぶ世界遺産なわけだから、観光客は来ることは来る。でも、短期間であっちこっちをバスでかけずり回っている団体客の観光リストからは確実に取り残されているようだ。

五箇村に2つある小さな集落はどちらも現存する、つまり代々受け継いだ人々が今でもそこで生活を営んでいる合掌づくりのコミュニティだ。
まずは、より奥まった場所にある「相倉(あいのくら)集落」へ。クルマを下り、さらに雪道をすぼすぼ歩いて小高い丘に登れば集落全体が見渡せる。
点在する23棟は民宿だったりお土産屋を営んでいたりとさまざまだが、山あいにひっそりと息づく静かなその姿は、観光擦れした白川郷より、イメージしていた白川郷によっぽど近い。

五箇村の入り口にほど近い菅沼集落に戻ってくる間、立ち寄ってみたいところがあった。「流刑小屋」というやつだ。
ガイドブックによると“庄川によって隔てられた山深い五箇山は流刑の地とされ、1667年から明治維新までの200年間で150余人もの罪人が送られてきた”のだとか。
白川郷からほんの20キロくらいしか離れていないものの富山県になる五箇山は、江戸時代は加賀藩の流刑地でもあったのだ。
雪解け水が勢いよくゴーゴーと流れる庄川を見下ろすだけで背筋がぞっとするような橋を渡ると、雑木林の中に小さな合掌造りの小屋を発見。これが流刑小屋だ。
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中をのぞくと、罪人の恰好をした人形が暗闇から浮かび上がって、家族全員で「ぎゃー!」と声をあげてしまう。
当時はもちろん橋などかかっておらず、罪人をこの小屋に運ぶ際は小さな籠に乗せ、紐で釣って川を渡らせたそう。すでにその時点で生きた心地がしなかったに違いない。罪人と言えど、か、かわいそう…。


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最後に菅沼集落へ。こちらはたった9棟の集落ながらも、資料館があったり、道路もきれいに整備されていたりと、ちょっとした公園のようなたたずまい。それでも、どの民家も無造作に洗濯ものを干していたり、布団を叩いていたり。
一棟の民家では、小学生の兄弟からお爺ちゃんまで家族総出で大掃除か、家の前を散策する観光客にわき目もくれず、古いステレオや家具をせっせとトラックに積んでいる。
モノクロテレビで「明るい農村」を観ているような、長閑で微笑ましい光景だった。



気がついたらもう午前中が終わろうとしている。五箇山を後にし、昨日来た道を再び戻って高山市内へ。お昼ごはんをさっと済ませ、残り数時間は市内観光を楽しむことに。
すでに3回目の高山であるが、息子にはまだ見せたことがない高山陣屋。ここ数年ですっかり時代劇好きになった彼をぜひ連れて行かねばと思っていた。
葵の御紋に迎えられ、早くも意気揚々といった風である。
takayama_jinya
ところで、夫と旅行をしていていつも不本意なのは、ガイドブック片手に家族を先導するのがいつも私の役目になっているということ。そもそも「地図の読めない男」だから仕方がないのだが、たまには私だって、人に導かれるままに何も考えずに優雅に街歩きをしたいものだ。
陣屋でパンフレットをもらってもすぐさまポケットにしまいこむ有様に思わずムッとする。
「あなたもさ、たまにはこういうの読みこんで、子供に説明してやったらどうなのよっ」
夫はしぶしぶ子供に説明を始めるも
「えーっと、ここが玄関の間で、ここが御白洲で…」
それって場所の名前を読んでるだけじゃん。
そんな父を差し置いて、息子はどんどん先へ行ってしまったかと思うと
「おっ、ここトイレじゃん」
と縁側の突き当りに厠を発見。
「昔はさ、水で流れるトイレとかじゃなかったから、こういう端っ子にあるんだよね。それでさ、1日1回人が来て、ウンチとかを運ぶんだよ。コエクミって言ってさ。それをね、肥料みたいに畑にまくんだって。江戸時代は街の中にも公衆便所みたいにコエダメがあったらしいよ…」と話が止まらない。こちらは、ただただ
へー、そーなんだ! 
と頷くばかり。で、なんでそんなこと知ってるの?
「だって『そーなんだ!』に書いてあったもん」
へー、そーなんだ!
こんなに役に立つとは思わず買い始めたディア・ゴスティーニの『そーなんだ!』だけど、いまや『そーなんだ!』さまさまである。
夫に期待するより、そのうち息子が私をガイドしてくれる日が来るのを待った方が、明らかに早そうだ。

陣屋を出て古い町並みをぶらぶらしていると、春祭りが近いせいだろうか、思いも寄らず「山車」にご対面。最後にちょとしたオマケまでつけてもらったような高山散歩。
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タダ泊がもとで突然計画した2泊3日の旅。なにもこんなに降らなくてもというほど雪の中の白川郷散策もできたし、後半は快晴のお天気にもめぐまれたし、冬と春をいっぺんに満喫できた気分。
満開の桜とはいえ寒の戻りでいまひとつ盛り上がらない東京の週末に、見切りをつけて旅に出た甲斐もあったというものだ。

ところで、中央高速に乗るべく松本インターに向かう帰途、ちょっと気になることが。
「中部縦貫自動車道の早期開通を目指して」といった看板があちこちに。
なるほど、長野県から奥飛騨へのアクセスを可能にしてくれたあの安房トンネルも、この中部縦貫自動車道の一部であったということか。
高山市内から一気に白川郷へと導いてくれた完成したばかりのバイパスもしかり。
なんと松本インターから、今回の旅で我々が辿った奥飛騨、高山、白川郷というルートが、すべて中部縦貫自動車道なる高速道路でつながってしまうというわけだ。
これなら奥飛騨温泉も、高山も、白川郷も、都内から高速一本で行けてしまう。ちょいと無理すりゃ日帰り圏内といってもいい。

ううむ、こんなに便利になっていいものか。
秘湯とは、何時間もかけて行く山の中にあるから秘湯なのである。
世界遺産も、辺鄙なところに自然のままの姿で残されているから世界遺産なのだ。
地方文化に目を向けているようで実はまったく無視している日本の土建体質、どうにかしないと日本は本当にやばいぞー。




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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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