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イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

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名残り雪さがしの旅② 白川郷

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えーっ、雪―っ?!聞いてないよーっ。
快晴の奥飛騨温泉から1時間、高山インターから縦貫道、つづいて東海北陸自動車道へと乗り継いで北上し始めると、トンネル、トンネル、またトンネル。
一つトンネルをくぐるたびに、青空が薄曇りになっていくのは気のせいと思いたかったが、最後のトンネルを抜けると、そこは…吹雪だった。

白川郷は高速出口で降りてすぐ。こんな便利なところに世界遺産があっていいんだろうかというほど近い。続々と観光バスが目指していく巨大駐車場は避け、乗用車だけが進入を許されている白川郷のメインストリートに入り小さな駐車場にとめる。
「いやあ、この雪には参ったー。天気予報で降るなんてひとっことも言ってなかったよ」と駐車場のおじさんも、びっくらこいてる様子。
しかし、雪だからといって諦めるわけにもいかん。車に積んであったスノーブーツを履き、完全防備で歩き始めるも、ちょっとだけ傘からはみ出たガイドブックが水分をたっぷり含んだ雪で早くもぐしゃぐしゃ。名残り雪を求めて来た旅ではあるが、ここまですごいと大はしゃぎなのは息子だけだ。

それにしても、こんなに外国人観光客が多いとは。桜の時期狙いで来日する外国人が倍増しているとは聞いていたが、こんなところにまで観光とは。しかも、そのほとんどが中国人と台湾人の団体客。彼らにとって、萱葺屋根の光景がそれほど珍しいものとは思えないし、関西方面からも容易にアプローチできる場所とはいえ京都や大阪からだって遠すぎるだろう。不思議だ。
訪れる人はさておき、観光客を迎え入れる白川郷自体が、思いのほかあぐらをかいていることに、正直唖然とする。
県の重要文化財指定の家がいくつか点在しているが、有名どころは団体客が列をなしているばかりか、受け入れる家の方もすっかり客慣れしてるというか、バイトを大勢雇って、入場料を受け取る係、パンフレットを配る係、順路を案内する係と、すっかりシステマナイズ。挙句、勝手にカメラで人のことを撮っておいて出口で売りつける係までいたりして「おいおい、観覧車じゃないんだよっ」てな感じでちょっとがっかり。
息子も早々に飽きてしまい「もう見学はいいからさー、早くお昼ご飯食べようよー」とご機嫌斜めになってきた。

そんな中、路地裏に立つ小さな民家「神田家」だけはちょっと違う。
ほとんどの人が見学できることに気づかないと見えて、中に入るとひっそり。受付に座っているおじさんも特段愛想がいいというわけでもなく商売っ気ゼロだが、江戸時代後期に10年もの歳月を立てて作られただけあって小さいながらも風格がある。バチバチと勢いよく燃える囲炉裏の火が冷え切った身体を温めてくれるようで、何より、明らかに住人の息遣いがちゃんとする民家であることに思わず安らぎを覚える。
急な階段をのぼり中2階にあがると、階段裏には小さな番人部屋。一階の囲炉裏の火の番をするために設けられたという小さな“火見窓”がかわいい。
さらに急な階段をよじのぼって二階に上がると、家人とおぼしきおばさんが迎えてくれて、丁寧に説明をしてくれた。
一階の囲炉裏から立ち上る煙に燻され続けて黒々と光る柱、これが丸柱ではなく四角いのも神田家の特徴とか。四角くくり抜かれた柱の原木は、つまりはこれよちさらにぶっとい木なわけだ。家の4隅の地べたの部分から、4本の巨大の柱が見事に交差して突き抜けてるダイナミックな様を内側から見ているだけでなんだかドキドキしてくる。これが何百年も風雪に耐える家を支えているのかと思うとなおさらだ。

「よかったらこの上も見て行ってくださいね」
さらに屋根のちょうどてっぺん部分には、「3人まで」しか立てない小さな小さなロフトのようなスペースが。
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階段、いや梯子というべきか、怖がりもせず一人でとっとと昇っていってしまう息子のお尻を支えるように、でもこっちの方がよっぽど危なっかしい姿勢で上までのぼりつめると…
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小さい窓からは、小さな絶景が。ちょっとした宝物を見つけたような気持ちになる。
こういう籠り部屋のある家に住みたいな…。
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下りるときは、もちろん後ろ向き。でないと転がり落ちそうだ。

さっきまでぐずっていた息子も、神田家の“探検ごっこ”がよほど楽しかったようで今度は上機嫌。「さようならー」と愛想よく受付のおじさんに挨拶して靴を履こうとすると、無愛想だったおじさんの顔が急に一変して「お嬢ちゃん、いい子だからこれあげよう。ここに記念スタンプ押してき。な」と、売り物の絵ハガキを1枚プレゼントしてくれた。
…しかし、ここでもまた、挨拶すると「お嬢ちゃん」に間違えられる。なんでだろ。息子は、またか、といった感じでもう否定することもしない。
外へ出ると、みぞれ混じりの雪もやみ、薄日が差してきた。枝についた水滴がきらきら光って、まるで小さな蕾をつけているようにも見える。
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お昼御飯は、やっと見つけた気の利いた食事どころで、息子は飛騨牛コロッケ定食、私は「若鶏けいちゃん」という鶏の塩漬けをソテーした郷土料理を、夫は息子が残すのをあてにして軽く山菜蕎麦を注文するも、息子にコロッケを完食されてコロッケだけ追加注文する始末。男ってどうしてこうもコロッケ好きなんだろ…。
食欲に拍車がかかった息子は、店を出た後、さらに「飛騨牛まん」を買い食い。この「飛騨牛まん」、実は今回の旅の大ヒットのひとつで、翌日も高山市内で買わされる羽目になるのだが、どこで買っても定額420円とかなり高め。でも甘く味付けされた牛肉がびっしりと詰まったアツアツ肉まんでかなり旨い。
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体力チャージしたあとは、白川郷全体が見渡せる荻町展望台へ。
ここでも頼んでもいないのに人の写真撮っては1枚1,000円で売りつける商売が横行していることに辟易するが、さすがに、自分のコンパクトデジカメと父の一眼デジカメを左右にタスキがけして二台のカメラで撮影に夢中になってる7歳児には誰も声をかけてこない。息子に一眼をいじらせておくのも、悪いことばかりじゃないかも…。
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さて、だいたいの見どころはすべて制覇したが、宿へ向かうにはちと早い。もうひとつの世界遺産でもある五箇村に行くにはちょっと時間がない。
というわけで「合掌造り民家園」へ。
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さまざまな合掌造りを移築して集めた、言ってみれば古民家のテーマパークのようなところだと安易に思っていたが、昭和30年代に過疎化して人々が離村してしまった白川村の最辺地「加須良」に残された希少な合掌造りを保存するために、村が移築したものらしい。
そもそも白川郷が世界遺産に認定されるきっかけになった村の保存運動。その志の、まさに原点でもあるところなわけだ。
団体客の有り無しにこだわるわけではないが、園内には我々のほかにほんの数組だけ。白川郷で一番歴史ある江戸中期の価値ある民家が点在している園内はすみずみまできれいに整備されていて、さっきまでの喧騒が嘘のような静寂をゆっくりと味わうことができた時間となった。


さて、だいぶ陽も傾いてきたので今夜の宿へ向かうとしよう。
白川郷から南へ車で20分。小さな温泉町、平瀬温泉に到着。「藤助の湯 ふじや」が今夜の宿だ。
知り合いのご夫婦がこの宿の常連で、うちも何度か予約を試みたのだが、取れたのは今回が初めて。その理由はお風呂場が工事中だから。
しかし、改装したばかりの2つの貸し切り露天は使えるというし、5,000円も割り引いてくださるというし、他の宿泊客も少ないから貸し切り露天が混み合うこともないというので、ここぞとばかりに飛びついたのだ。
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身体があたたまるまでちょっと我慢すれば、洗い場もついているし何の問題もない。
なにより、ただでさえ11部屋しかない規模の小ささが売りの宿で、たった3組しかいないわけだから、そりゃ、もう貸し切り風呂どころか、貸し切り宿の気分。
これで飛騨牛の特別食を付けても14,000円台というんだから、申し訳ないくらいだ。

夕飯も、個別の囲炉裏部屋で頂く。
気の利いた器で出てくる一つひとつのお料理はどれも美味しい。難を言えば、せっかく囲炉裏なのに、着火剤で飛騨牛を焼いてしまうことくらいだろうか。
若いご夫婦が始めた宿のようで、つかず離れずの接客は最初はそっけなく感じたものだが、慣れれば自分の家にいるみたいでこれはこれで居心地がよくなってくるものだ。
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昨日、東京を発ったばかりだというのに、もう4~5日も旅をしているような気がするのは、濃い中身を過ごしているからだろう。
明日はあっという間に現実の待つ東京へ。でもその前に、宿を発ったらまずは朝いちばんで五箇村に寄り、そのあとは高山市内をぶらついてから帰ろうと思う。
さあ、東京にたどりつくのは何時頃かな。
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ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

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