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完璧ぞな。

2009_12_21
学校のお友達の誕生日に、今度は我が愚息も手づくりのものをプレゼントすると言い出した。なかなかいい傾向である。
お誕生日のそのお友達は、クラスで唯一の水戸黄門仲間。ということもあり、葵の御紋でカードをつくろうということらしい。
とはいえ葵の御紋を小学校1年生が描くのはなかなか難しい。水戸黄門シールが入っていたケースに印刷されていた御紋の上に薄手の紙を置き、試しになぞらせてみるも、なかなかうまくいかずに地団駄ふんでいる。
仕方がない。三つ葉のうちの一つだけでも母が手本を見せてやるか。となぞり始めたら、むむ、難しいっ。そういや今まで注視したことなんてなかったが、葉の葉脈(?)がまるで菊の花びらのように細かく重なり合っていて、すぐに線を見失ってしまう。息子がイラ立つのもよくわかる。途中からは下絵を無視して菊の花びらのつもりで描いていったが、うむ、その方が逆に描きやすいようだ。
「じゃあさ、菊の花びらが重なり合ってるみたいに書いてごらん。バランスよく描けば、なぞってなくても大丈夫だよ」
と息子に教え残し、私は別部屋に篭ってPCを開けていた。

「母上、母上~っ」
15分ほど後、息子が部屋に入ってきた。
「完璧ぞな!」
“坂の上の雲“が始まって以来、妙な松山弁が飛び交っている我が家である。
息子が完璧ぞな!と言って掲げるその手には、どうにかこうにか葵の御紋に見える絵が描かれている。色も雑だけど一応塗ってある。よしよし、ようやったぞなもし。

それ、厚めの画用紙か何かに貼ってお誕生日カードにしたらいいんじゃない?
そんな母のアドバイスも聞かず、
「いいのっ。いいこと考えたんだから、黙っててよっ」
息子はプリプリ怒りながら、超分厚い厚紙を、ガシガシとハサミで不恰好な長方形に切り抜くと、真っ黒のマジックで塗り始める勢い。
あああ…、それじゃさ、この上に黒い折り紙を貼るってのはどうかな?ほら、壁紙みたいにさ。
「…あー、なるほどね、うん、いいかもね。そうしよ」
ホッ。子供のやる気をそがないまま、先導するのは気を遣う。
さて、そうして私は再び別の部屋へ。すると10分ほどしてまた息子が入ってきた。

「すごいぞな、完璧ぞな~っ。ほら!この紋所が目に入らぬか」
厚紙を黒色の折り紙でコーティングし、その中央に、さっき切り抜いた葵のご紋を貼り付けたそれは、確かにパッと見、印籠チックである。
そうか、息子は、誕生日カードではなく、これを作りたかったわけね。ポケモンカードならぬ、黄門様カードってわけだ。

こうなってくると、さらに手を出したくなるのが親心というもの。
印籠に組み紐がついてるように、ちょっとした装飾を施したいな~と思って散らかったリビングを見回すと、なななんと、おあつらえのようにソファの横に、金の糸のステッチが入った黒いリボンが転がっているではないか。しかも、見た目も素材も、真田紐のようなしっかりとした地のリボンである。
これはいい!
「ね、例えばこれを上下にさ、こうやって両面テープで…」
「うわっ。それ、すんごいいいアイデアだね。いい、いい。それ、いただき!!」
二人で大いに盛り上がり、リボンに両面テープを貼り付けて、カードのでこぼこも隠れるように上下の縁を慎重にリボンで貼らせていくと…ほれ!この通り!
差し上げたお友達が喜んでくれるかどうかは、まったく度外視してるけど、なかなかよい出来ではないか。

「父上、父上~。見てくだされ。完璧ぞな!」
夫が帰ってくると、息子はさっそく駆け寄って自慢。
「お、いいじゃん」と誉めかけた夫だったが、縁取りした金の装飾入り黒リボンを見つめ
「これってさ…」と息子に聞こえない声で私にささやく。
「え?ここに落ちてたんだけど」と私。
「これって、あれじゃねえの?ほら、刀についてたさ…」

げげーっ。
そういえば、これは、日光江戸村で買ってやった、プラスチックのおもちゃ刀の持ち手部分に巻いてあった紐であった。遊んでいるうちに取れてしまったことまでは覚えていたが、まさか、それであったとは…
日ごろから、頂き物の焼き菓子に巻いてあったリボンなど、そこいらへんに転がしっぱなしにしているから、どうせこの黒リボンもその類いだろうと思っていたのだが、ああ、普段いかに部屋を散らかしたままにしているかを突きつけられる。と同時に、この場をいかに切り抜けようかとドキマギ。

そんな私と夫の「やばい…」的な雰囲気を見て取った息子はしかし、すぐに気づいてしまう。
え!?マジで…?!と困惑とも悲嘆ともつかぬその表情に、私は慌てて
「そっかー!江戸村で買った刀の紐だったんだ、これって。よかったじゃな~い。徳川家の魂が注ぎ込まれた、より一層立派な印籠になったってことよ!」
と思い切り元気に励ましてみると
「そっか、そうだね!Fくんも、きっと喜ぶよね。完璧ぞな、完璧ぞな~!」
と見事に方向転換させられた息子は、なんともご満悦の表情。
ああ、男子って、こういうとき、ホント、楽だわ。

さて、そんなわけでFくんへのプレゼントには徳川家の魂が無事に注ぎ込まれた一方、我が家の魂は12月に入ってからというもの、“坂の上の雲”に奪われ続けている。
昨夜は、阿部寛扮する秋山好古が清国陸軍と鉢合わせになった際、銃撃戦の中、馬にまたがり指揮刀ふりあげ駆け抜けていくシーンに母は完全に阿部寛に心酔、息子は突然イスにまたがり、ごらんの姿である。
20091221152619

しかし次の瞬間、今度はモックン扮する実之と部下が乗る戦艦の血まみれシーンに、息子はただただ、唖然…。

帝国主義の「て」の字も知らない小学校1年生の心にも、確実に何かを投げかけてくれていると思わずにいられない“坂の上の雲”。今年は残すところ、あと一回となった。

1年後にこのドラマの続きを見る頃には、いや、2年後にこのドラマの完結篇を見届ける頃の私は、いまより2つも歳をとっちゃってるんだよな。って、当たり前だけど。
もったいぶらないで一気に見せてよー。NHKさーん。

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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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