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Mコレクション

20091217
「年賀状は25日までに出してくださいね」
天地人のせいで遅ればせながらやってきてしまったマイブーム小栗旬が、ニッコリ微笑みながら言っている。
年賀状引受開始セレモニーとやらに招かれた京橋郵便局での様子。息子を送り出してから出勤するまでのほんのちょっとの間に見るワイドショー。テレビの向こうから、小栗旬にやさしくそう言われてしまうと、重い腰を上げざるを得ないではないか。
年賀状、早く作らないと!

イタリアにはもちろん年賀状の習慣はなく、代わりにクリスマスカードがそれにあたるわけだが、師走の慌しい時期にイタリアの数十人の人々にカードを送るなんて余裕は到底なく、いつも思いきり年が明けてから、大量に印刷しておいた年賀状の残りをのんびりと出している。
でも、この年賀状が、私と息子がいつもお世話になっているイタリアのおばちゃんたちへの年に一度の感謝状になるのかと思うと、ついついイタリア人向きの体裁になってしまう。イタリア語のキャッチフレーズも欠かしたことがない。
子供がいる家庭なら大抵そうなってしまうように、うちもメインビジュアルは毎年息子のMなのだが、これまたイタリアのおばちゃんたちに大好評。正直、日本の親戚からよりもウケがいい。
海の向こうで、Mの成長の過程を年賀状で見届けるのを楽しみにしてくれているのだろうか。毎年のように訪れている家でも、行く度に、玄関先にまるで日本人が干支の人形を飾るかのごとく、その年の初めに送った我が家の年賀状が飾ってある、そんな家ばかりで、いつも再会した早々、有難くて、嬉しくて、涙が出そうになる。

今年の2月、息子と二人で私の料理修行の原点でもあるモデナの街を訪ねたときのこと。
モデナには働いていたリストランテを始め、お世話になった人がたくさんいすぎて、2年に一度は“里帰り”に立ち寄るものの、限られた滞在日数ではなかなかすべての人を一度に回りきれない。
「Boutique del tortellino」のアンジェラおばさんもその一人。その名も「トルテッリーニ・ブティック」という、エミリア・ロマーニャ地方伝統の生パスタ、トルテッリーニを始めとしたさまざまな手作り生パスタを販売しているこのお店。話し出すとおしゃべりが止まらないかなり風変わりなアンジェラおばさんのトルテッリーニづくりを一週間くらい手伝わせてもらったことがある。一人息子がいるけれど、私の知る限り、確かまだ孫はいなかったと思う。
そのアンジェラおばさんの店に、息子を連れて実に5年ぶりくらいで顔を出すことができた。
もちろん、アポなし。それが、イタリア流。
お昼休みの時間帯だったこともあって店は薄暗かったけど、奥の工房には明かりがついている。扉を開けると、奥から「Chi e`?(どなた?)」と言う声。エプロンで手を拭きながら出てきたアンジェラおばさんは…、私たちを見るなり駆け寄ってきていきなり抱きしめた。私を、ではなく息子のMを…。

そこから先は、もうこっちは「うん、うん」と頷く余地しかないくらい、「んまー!元気だった?!何年ぶりかしら、Mがまだ抱っこ紐の中に入ってたくらいだから、5年?6年?ていうか何歳になったのよ。まったくもう、あたしは毎日、あんたたちのことをここでこうして思い出してるのよ!ほれ、見てごらんよ!」
そういって、アンジェラおばさんが指差した先には…

なんと、店先の秤の横の壁に、毎年送っていた我が家の年賀状が、すべてきれいにセロテープで足されて、ずらーっと貼ってあるではないか。
自分たちの毎年の年賀状をこんな風に並べて見たことなんて、私でさえない。
これこそ、モンド・セレクションならぬコレクションといったところだろうか。
物心つかない時にしか来たことのないM自身は、「なんで?なんでこのおばさん、Mのこと知ってるの?なんでこのおばさん、うちの年賀状ぜんぶ貼ってるの?」とアンジェラおばさんに抱きしめられながら、ビビって腰が引けている。

こうして、不出来な我が家の年賀状を毎年楽しみに待っていてくれる人が、こんなところにもいる。5年、6年、顔も出さず、イタリアに来ることさえも事前に伝えずにふらりと訪れたというのに、そんな私たちの不義理をしかるどころか、ぎゅうっと抱きしめてくれる人がいる。

というわけで毎年、Mの写真をメインにした年賀状をやめられずに今に至っている。自分で言うのもなんだけど、その年ごとに、写真に合ったイタリア語のキャッチコピーまでいちいち考えているという懲りよう。
さて、今年はどんなMの写真を選んで、どんなフレーズをつけようかな。
年末に向けて山積みになっていく仕事をほっぽりだして、こっちの写真の方がかわいいんじゃないか、いや、こっちの方が息子らしさが出てるしな。なんてことをやっていたら今週もあっという間に金曜になってしまった。イタ馬鹿のふりをした、ただの親バカである。

しかし、こうして息子の写真を年賀状にできるのも、もうあと数年だろう。そう思うと、思い切り親バカでもいいではないか。
そんな我が家のイタ馬鹿&親バカ年賀状、今年もいつもの皆さまのところにお送りします。ご住所変わった方はぜひご一報のほど。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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