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小布施の栗きんとん(リストランテ・リッツ作)

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ジャン!栗きんとん、家で作っちまいました。

毎年、秋のこの季節に長野方面の温泉に出かけるわけ。
その大きな理由の一つは、もはや毎年足を運ばなければ何か悪いことでも起きるような気がして、やめるにやめられない「小布施参り」。
その目的は名高い栗の産地、小布施にいくつかある老舗栗菓子屋のひとつ「桜井甘精堂」の茶巾しぼりの栗きんとんを入手しにいくこと。栗がいちばんおいしい今の季節、ほんの一ヶ月間だけの販売で、おまけに地方発送もしてくれない。つまり買いに行くしかないのである。
昨年は、息子のプチお受験も重なったため二年ぶりの小布施参り、気合も入る。
と、ところが、なんと昨年から「取り置き予約は一切受け付けなくなった」とか。
そこで高峰温泉を早々にチェックアウト。急いで小布施に向かい午前中には到着するも、なんと、「完売」であった。
なんだよ、それー。十数年前から通い続けてる上顧客なんだぞー。取り置きくらいさせてくれよー。

わなわなと震える怒りをおさえつつ、気持ちを切り替えて向かった先は、この辺りで一番古い栗農家。
栗菓子屋が立ち並ぶ街中を離れ、長野鉄道の踏切を渡った駅の向こうへクルマを進めると、あたり一面、リンゴと栗の林。その一角に、何度か訪れたことのある大きな屋敷の栗農家がある。
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クルマをおりると、あたりは小布施の町と打って変わった静けさに包まれた栗林。木漏れ日の中、その静寂を打ち破るように、時折、ドサ、ドサ、と栗のイガが落ちる音がする。
さぞ大きな栗の実がつまっていそうな、そんな音だ。
「ママ!拾いたい!拾っちゃダメなの!?」
ああ、その気持ち、まさに私も同じことを考えていた。ああ、拾いてえっ。しかし、これは一個一個が売り物。泥棒と一緒になってしまうので、ぐっとこらえて暖簾をくぐる。
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まさに栗御殿といった風格ある庭に母屋、その手前にある納屋風の作業場に一歩足を踏み入れると、前に訪れたときと全く同じ光景、若いご主人ときれいな奥さんが二人で栗の選別をしながらせっせと袋づめをしている。
「あのー、栗を買わせていただくことはできますか?」
前にもこうして買ったことがあるわけだし、地方発送もしてるくらいだから、買えないことはないと知っていながら、なんとなく恐る恐る声をかけてしまうのも毎度のこと。
「はい。できますよ。今お売りできるのは、この2Lと3Lの2サイズなんですけど」
ちょっとかっこいい奥田民夫風の13代目。愛想はないけれど、…かっこいいのだ。
前回もここへ来たとき、ああ、こんなに立派な栗農家に嫁いだら、さぞ幸せな毎日だろうに、と思ったことがある。
それを実家の母に話したら「あんた、一週間も続けてごらんよ。飽き飽きして逃げて帰ってくるのがオチよ」と言われたものだが、うんにゃ、そんなことはない、と今年もしつこく思う私。夫婦ふたりっきりで、fmラジオを聴きながら、いとしい栗に触れる一日。母はああいうけれど、いやいや、私、結構イケルんじゃないかとマジで思う。生まれ変わったら、ぜひ栗農家に嫁いでみたいものだ。
さて、栗きんとんが買えなかった雪辱を、3Lサイズの超高級小布施栗2キロを買い込むことで果たし、昼食をとるべく小布施の町に戻る。

私と夫が小布施に来始めた13~4年前は、まだ観光客もそれほど多くなくて、ましてや大型バスで駐車場が渋滞するなんてことはなかったが、ここのところ年々すごい人だ。小布施観光を組み込んだバスツアーなんてのも多いのだろう。
しかしそれがまた、小布施のすごいところでもある。信州の奥の奥にして、老舗の栗菓子屋がお互い力を合わせながら、そしてそれぞれの特徴を生かしながら、栗菓子のみならず洋菓子部門、イタリアン、和食、蕎麦屋なども経営、地域の復興に力を入れている。そこには、多くの雇用も生まれ、町を離れずして地元でいきいきと働く若者たちの活気にいつも満ちている。町の概観を損なわないために、家を新築する場合、確か外壁を茶褐色の漆喰壁にすると町から助成金が下りるなんて話も聞いたことがある。
まるでイタリアの田舎の小さな村々が、村の伝統を守りながらも都会の人を魅了し、農業と観光で栄えている、そんな理想的な地方再生の姿が、ここ日本で見られる貴重なケースではないだろうか。私が小布施に、ついつい毎年足を運んでしまうのは、そんなところにもある。
駐車場の脇では、テントの下で農家のおばさんたちが手作りのお菓子や焼き栗を売っている。これも、イタリアの山村部でよく見かける「栗祭り」の光景そのもの。思わず、日本版「カルダロスタ(=焼き栗)」を買ってみたところ、二倍くらいおまけしてくれた。こんなところまで全くイタリアみたいだ。
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今回のお昼は、地元の枡一酒造が営んでいる「蔵人」という居酒屋に入ってみる。
栗おこわのセットで肉料理と焼き魚を注文。紙ナフキンに印刷されたマークから見て、どうやら小布施堂と同じ経営らしい。
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さて、栗きんとんがどうしても食べたかった息子のために、締めは「本日の和菓子」を注文。雁の山と名づけられたこの和菓子、山をかたちどった小豆あんを、うらごした栗でかぶせたもの。お持ち帰りもできない、ここでしか食べられないお菓子だ。
写真撮ろ!と思った瞬間、もう息子に一口食べられていた…。
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一口もらって食べてみると、ああ…、おいしい。栗本来の味を堪能できる栗菓子は、モンブランでも栗最中でもなく、やっぱり栗をただ裏ごしして砂糖とあえた、つまりは栗きんとんなんだよな~と。
ここで、一度は心の奥にしまった栗きんとんをゲットできなかった悔しさが、息子と私の中にこみ上げてくる。

で、家に帰って早速息子と二人で作ってしまったのが、冒頭写真の栗きんとん。
3Lサイズの高級栗を惜しげもなくグツグツゆで、私がせっせとむいた栗を、イタリアの野菜裏ごし器を利用して息子が片っ端から裏ごししていく。そこへ、和三盆の代わりに三温糖を入れてよーく練り合わせ、あとはサランラップで団子をつくり、ちょいとねじりあげ、そうっと開けば、ほれ、この通り。

さて、お味の方は、これがまた、う、うまーい!
帰宅した夫に、息子が早速食べさせると、その感想は一言だけ。
「もう、小布施行く必要ないじゃんか」
桜井甘精堂の栗きんとんに引けをとらないうまさだ。だから栗農家から栗を取り寄せ、家でつくれば、十二分ではないか。という夫にしては最高のほめ言葉なんだろうけれど、
最初に「うまい!」のひとことくらいあってもいいじゃんね。

ま、夫はどうであれ、私は来年も小布施に行きますけどね。
取り寄せできるのがわかっていながらも、あの13代目のかっこいいご主人にも会いたいし…。
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コメント

tsu

あいかわらずM氏のコメントはおもしろいです。
一言も二言も多いイタリアオトコよりずっと素敵だと思います。
それにしても美味しそうな定食だこと。写真を見ているだけで新米と栗の感触が口の中に広がりました。来年私も参加したいです。でもこればっかりは季節限定だし、無理~。

ritz

tsuさま
いやいや、夫はひねくれ者なんだと思います。
私は素直に感情をまっすぐにぶつけてくれるイタリア男の方が好きだわ~(お互い、ないものねだりでしょうか!?)
来年はぜひ秋のご帰国をご検討ください!

似非料理人

栗 くり クリー
ご主人の率直な感想が、美味しさ物語ってますね。自分で美味しくできれば、味わい倍増しますもの。
我が家も取り寄せた栗が昨晩届いて、明日にも調理予定でして
取り寄せた農家の案内には「炊飯器で茹でるのが甘くするコツ」
みたいな記事がありましたので試してみます。
今回は実は「栗のいが」の入手が目的でして
家内の実家のコメ倉庫の鼠対策に使う予定で
その余禄で栗が届いたって訳です。
そうそうレモンチェッロ仕込み終えました。
なんとさわやかな香りなんでしょう。
スピリタス一本使って約一リットルちかく出来たものを
瓶三本に分けまして一本は大切な友人に
それともう一本はそもそもritzさんの本に出会えたカフェ「ブ○○コ」さんにもおすそわけするつもりです。
そろそろそのお店のカウンターで取り立て野菜の販売が始まる頃かと思いますが
その若手農家の作るバジルが旨いんですよ。
我が家の定番はこのバジルとスパイスソルト使用した「バジルご飯」です。
あんまり美味しいんで入手困難にならないようお教え出来ないのが残念ですがね。

ritz

似非料理人さま
バジルとスパイスソルトの「バジルご飯」、響きからしてそそられます。どんなお味になるのでしょう。
カウンターで採りたて野菜が購入できるカフェなんて素敵すぎる。拙著まで置いていただいているそのカフェ、どこにあるのかしら?!思いをめぐらせるだけでドキドキしてきますね。
いつかこっそりお邪魔してみたいものです。
レモンチェッロ、美味しくできたようで何よりです~。

似非料理人

バジルご飯
ritz様、さっそく「バジルご飯」に惹かれたようで、という事でレシピを書きとめておきます。
材料はぴちぴち新鮮なバジルひとつかみと次のページの「スパイスソルト」これだけ
http://youki.jp/youki/7.1/112643/
作り方にいたっては、炊き立て熱々のご飯にただただ刻んだだけの生バジルと
スパイスソルト混ぜるだけです。
不思議な美味しさに驚かれると思いますよ。お試しを

先日の栗、こちらでも義母のところで「栗きんとん」を、我が家では栗ご飯こしらえて戴きました。
山形県の物でしたが、とても甘くて美味しかったです。
そっかー、栗リゾットって手がありましたね
あと一回分残してあるので明日か明後日にもトライします。

カフェの場所はちっょとご勘弁を、何せ表に「看板」すら無いお店ですんで・・・。
まだ若いご夫婦二人で営んでおられてまして、私たち夫婦も自宅近くに出来た素敵なお店なので
大事に大事にして行きたいと思ってます。
因みに、グルメブログに出されたばっかりに寝る間も無いくらい注文が殺到した気の毒なお店がありました。
実は長年の知人のお店でして、今も数ヶ月に一度片道一時間かけてパソコンのメンテ(ボランティア)に
伺ってますが、せめてもの救いはお店のホームページにメールアドレスお入れしてなかった点です。
これ以上は書けませんが、「ネット社会の凄さと惨さを味わいました」とは店主のつぶやきでした。

-

似非料理人さま
さっそくバジルご飯、試してみます!
カフェは謎のまま思いをめぐらせて楽しみますんでご安心ください。
ネット社会の恐ろしさ、私も痛感することが多々あり。
本当に価値あるものは、個人から個人へと伝わっていくべきなのに、ね。
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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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