FC2ブログ

中秋の名月@標高2,000mの宿から

luna
ちょうど中秋の名月だったとは、これっぽっちも気づいてなかった。
この宿が天体観測会を毎晩開催してるなんてことはもちろん、宿に温泉療養士なる人がいることも、まったく知らなかったし、おまけにその療養士さんに自分の病気のアドバイスまでしてもらえるなんて、いやあ、思いも寄らなかった。

高峰温泉。
「標高2,000メートルの宿」がキャッチフレーズの一軒宿。
秘湯を守る会の宿でもあるので名前だけは知っていた。以前、冬に泊まろうとしたことがあるのだけれど、「冬はスノーモービル送迎」とかで、当時は息子がまだ2~3歳だったので即座に諦めた記憶がある。
今回は、山荘を建てるのが夢である夫の土地の下見と、軽井沢在住の友人家族と久々に会うことが目的だったので、小諸にほど近い高峰温泉なら地理的にちょうどいいと、何の下調べもせず予約したのだ。

友人宅でくつろいでいたらすっかり遅くなってしまった。
軽井沢から30分くらいだろうと高をくくっていたら、どっこい、浅間サンラインから山道をのぼること、のぼること。途中からは、未舗装の道路になり、ふと周囲を見るとリフトの鉄柱らしきものが。 “あさま2000スキー場”と書いてある。冬でいえばスキーヤーの「林間コース」をクルマで上っていることになるのだろう。なるほど、冬はスノーモービルでしか入れないわけだ。
この「林間コース」を上りきった突き当たり、そこから先は登山客しか入れない小道がさらに山奥に延びているところに宿はある。
kanban


寒い。
聞けば、気温は8度とか。夕食が始まる6時までに、あと10分。
まずは急いで風呂に浸かって冷えたカラダを温めて、さっそく食堂へ。
見るからに「山男」といった感じのスタッフが行ったり来たり、しかし決して笑顔を絶やさずテキパキと行動している姿は気持ちがいい。
ワイワイ賑わう食堂は、あちらのテーブルもこちらのテーブルも、登山客やトレッキング客、あるいは湯治客のグループで盛り上がっている。ただの温泉客(?)は私たちくらいではなかろうか。

これといった珍しい料理や上品な器が並ぶわけでは決してないけれど、揚げたての山菜やりんごの天ぷら、マスときのこのバター仕立ての鍋物、チーズ味の自家製ドレッシングがおいしい新鮮野菜のサラダなど、どれを食べてもおいしい。白いごはんが、新米だろうか、もちもちとしてこれがまた美味。かしこまった懐石料理などより、地の物をふんだんに使ったまごころこもった家庭料理のおいしさが染み渡る。たいていの宿が、子供料理となったとたんにコロッケやハンバーグだらけの仕出弁当になってしまうのが、息子用の料理が、大人と一品違わず同じ皿が出てくるのに、また感動。これで子供料金しか払わないのが申し訳なくなってくるほどだ。

食事が済むと、宿の玄関前で「天体観測会」が行われる。
おりしも、まさに今夜が中秋の名月であることを、息子に指摘されて気づいた次第だが、偶然にもそんな日に、こうして天体観測会を毎日行っている宿に私たちが宿泊することになったのも、なんだか不思議な目に見えない糸で引っ張りあげられてきたような、そんな気がしてくる。
残念ながら雲の厚い夜だったけれど、強い風がどんどん雲をおしのけて、がまんして見ていれば必ず雲の切れ目が訪れる。家庭には決して持ち込めないような、ドラム缶みたいな太さのでっかい望遠鏡から覗く月は、その輪郭にはっきりとクレーターが見え、これには親子ともども「すんごーい!」と声を上げてしまった。
きっと、晴れていれば、降るような星のひとつひとつがくっきりと観測できるんだろうな。
luna_vicina
entrara_lump


天体観測会が終わると、「温泉療養士」なる資格を持つおじさん(おそらく、宿の息子と見た)が、いかに温泉を上手に活用するかのレクチャーをしてくれる。
すでに夕べやおとといから連泊していたお客さんや、あるいはリピーターの客がほとんどのようで、今夜の参加者は私(と息子)を含め、5人だけ。自ずとひとりひとりが持つ体の悩みに相談に乗ってもらう形になってしまう。
温冷浴の話、飲用温泉としての効果から、コーヒー飲みすぎると利尿作用で必要な水分まで奪われて、その結果血液が濃くてどろどろになってしまうなんて話も、まさに「耳」が痛い話である。
宿にある2つの浴場にはそれぞれ湯船が二つあり、一方は熱めの湯と適度にぬる目の湯の組み合わせ。もう一方は、熱めの湯と、水に近いくらいぬるい湯の組み合わせ。
これにも、各人の体調と、期待すべき効果にあわせて、「ぬる目の湯にゆったり半身浴」したり、あるいは湯船を交互に「温冷浴」したりできるよう工夫が凝らされているわけだ。
話を聞いた後で入るお風呂はまた気持ちがいい。本当にこのままここに一ヶ月くらいいたら、耳も治ってくれるんじゃないかと思ってきたりして。
朝風呂では、ヒノキ風呂の窓から眺める、うっすら紅葉づいた山の景色に心癒される。
そんな谷の下に雲海が満ちていることを見るにつけ、「標高2,000メートルの宿」であることを実感する。
onsen

ちなみに、高峰温泉の地下水と温泉水は、なんと40年前に降った雨が湧き出ているのだとか。山の自然を極力守りたいという宿の思いから蛇口やシャワーから出るお湯はフィルターを通した「創生水」なるものを取り入れている。これは、シャンプーや石鹸を一切使わなくても、髪の毛や頭皮の汚れ、化粧品まで落とせるというもの。半信半疑だったが、使ってみるとあら不思議。髪も顔もカラダも、きれいさっぱりになるのである。山の美しい恵みを、ふたたび美しい状態で山に戻したい、そんな宿の信念に共鳴しない人は、きっとこの宿にはいないだろう。

洗面所もトイレも共用だけど、いつ行ってもスリッパはきれいに揃えられ、髪の毛ひとつ落ちていない。すみずみまで、見えない心遣いが生きている宿である。
これで一人1万3,000円。申し訳ないくらいのお値段だ。

耳の調子の悪い日が10日間も続いていたが、療養士さんから教わった温泉の入り方を実践した効果だろうか、週明けから、すこーしだけ最悪の状態から脱しつつある。
温泉は持ち帰れなかったけど、同じく療養士さんが薦めてくれた熊笹茶をせっせと飲みながら、次回はスノーモービルで宿を訪れる日を心待ちにしている私である。

ところで、毎年必ずこの季節に長野方面を訪れているのには、もうひとつ、重要な目的がある。それについては、また次回…。
keshiki



スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

Profilo

ritz

Author:ritz
広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

Calendario

01 | 2020/02 | 03
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

月別アーカイブ

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム