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決意

 帰国翌日の昼過ぎ、訃報の知らせ。
 秘書の方が、私の名刺を頼りにお電話をくださった。
 まだ55歳。突然の死に言葉が出てこない。

 イタリアと日本を行き来しながらご活躍されていたその方は、流暢なイタリア語はもちろん、ユーモアのセンスや温かいお人柄も、55歳には見えない若々しいスタイルも、半分イタリア人のような方だった。
 私が大ファンだったイタリア人音楽家の親友だったことから、見ず知らずの私を、日本公演の際に舞台裏に連れて行ってくださったのがおつきあいの始まり。
 お目にかかったのはたったの2~3回なのに、折りに触れてメールをくださってはイタリアのいろんな話を聞かせてくださったり、面白い写真を送ってくださったり…。
 まるでずいぶん前からの知り合いだったかのように図々しくも錯覚してしまうほど気さくで、それでいながら、いつもさりげない気遣いで満ちていた。
 イタリアつながりで知り合う縁というのは、不思議と初対面でもなぜか気心が知れ、自ら培った人脈や財産さえも提供しあったりするものだが、中でも、特にそれを象徴するような方だったと思う。
 会社や仕事関係では絶対に得ることのできなかったであろうご縁。
 なんというか、本当に本当にステキな男性だった。

 こんな私ごときがお通夜に参列するのも憚れる。かえって失礼だとも思った。
 でも、なんだか居てもたってもいられない気持ちになって会社を抜け出し、葬儀会場のある湯河原に向かうべく、新幹線に飛び乗ってしまった。
 その日は皮肉にも、たまたま全身黒いワンピースを着ていた私。
 でも、もしかしたら、もしかしたら、これも、その方のお気遣いの表れなのかも。
 唯一、身に着けていた色物は、紫のセーターだが、これも、イタリアではお悔やみの色とされている。
 イタリアから帰国する日が一日すれていたら、秘書の方からのお電話も受け取れなかったし、お通夜にも間に合わなかった。
 最後まで図々しい言い方をさせてもらうなら、最後の最後まで、こうして私をさりげなく呼んでくださった、そんな気がしてならない。

 ブログを始めたらいいのに。楽しいよ。
 そう薦めてくださったのも、そういえばこの方だった。
 いつもさりげなく、読み続けてくださっていた。天国にいらしても、きっと読んでくださるに違いない。そう思うと、ご無礼を承知で、どうしても記さずにいられなくなった。

 こんな若輩者の私にまで、惜しみなく分けてくださった様々なご縁、そしてイタリアとイタリア人への強い敬意や志を、私は一生大切にしてイタ馬鹿人生を歩んでいこう。
 私にできるご恩返しは、唯一それくらいかもしれないけれど、そんな風に決意した。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。









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ritz

広告代理店コピーライター
イタリア家庭料理研究家
HP→http://www.ristorante-ritz.com
著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
イタリア料理、子育てから、オペラ、日本の旅、秘湯まで。

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