FC2ブログ

イタ馬鹿日誌

昼は会社員、夜は母、週末は自宅で料理教室。ristorante-ritz.comのイタリア馬鹿な日々。

2

愛しのマロンパフェ。

081110maronparfait
 今年は私の大好きな秋の味覚も、いまひとつ堪能しきれないまま木枯らし一番のニュースが流れる季節になってしまった。もちろん、栗だって。
 「なんだよ、もう冬ってどういうことだよ。Mの大好きな栗の季節をすっとばして、冬になっちゃうなんて、おかしいよっ」
 栗への執着に関しては、まるで私のミニチュアである息子のMが、憤っている。
 そうだよね、今年は栗拾いもお預けで、八百屋で買った栗でガマンしたし、栗蒸し羊羹も二種類くらいしか食べてないし、栗きんとんも一回しか食べなかったし(普通はそれでも十分だけど…)、とにかく我が家にとってはいまだかつてない、栗が希薄な秋だった。

 そんな息子には非常に申し訳ないのだが、先週の平日の夕方のこと。
 外打が予定より早く終了したけれど会社に戻るのも中途半端な時間、かといってこのまま保育園に行くのも早すぎる。…ここは銀座。ポッと、頭の中に、本当に電球が点くみたいに名案が思いつく。
 「千疋屋でマロンパフェ食べていこ!」

 千疋屋に関しては、ひと薀蓄垂れずにいられない。
 「千疋屋って、銀座にもあるけど、京橋にもあるわよね」とか「高島屋の地下に入ってる千疋屋は、原宿のと一緒でしょ」などと言う会話を電車の中で耳にして、
 「ちがーう!それ、ぜんぜん違う!」と割って入りそうになったことがある。
 ざっと説明すると、元々は一つの屋号だった千疋屋(日本橋に拠点を置く今の「千疋屋總本店」)、これが明治後半になって、またひとつ、そしてまたひとつと暖簾分けしたのが、それぞれ京橋に本店・原宿などに支店を持つ「千疋屋」と、銀座に本店を持つ「銀座千疋屋」である。

 この中で、私が最も好きなのは、最も規模の小さい「銀座千疋屋」だ。
 なんたって、銀座に小さな店がある他は、京王デパートの地下の片隅に売店を持っているだけという商売っ気のなさ。
 それでも、下手に流行に乗ったワッフルとフルーツの盛り合わせだとか、デコレーションだけゴージャスな派手なプレートなんてものには一切走らず、昭和の匂いそのままの、何も変わらないメニューを貫き、しかもそのどれもが素晴らしい。
 ババロア、季節の果物を使ったショートケーキやシンプルなジュース、フルーツポンチ、挙げればキリがないけれど、中でもダントツに私が好きなものは、「マロンパフェ」だ。

 ひところは、銀座8丁目の中央通りに面した一等地に、3~4階建ての大きな店を構えていた。当時は築地にあった会社から、女の先輩とタクシーで乗りつけ、銀座の古きよき時代をそのまま伝えてくれるレトロな店内で、吹き抜けのガラスから差し込む日差しを浴びながら、オリジナルのカレーライスをたらふく食べた後にマロンパフェを堪能するというのが、数少ないストレス発散の一つだった。
 10年近く前だろうか。不景気の煽りで、その由緒ある銀座8丁目の店舗を手放したことを知ったときのショックは今でも覚えている。
 その跡地には、今では超近代的な「バーバリー」だかなんだかの路面店が立つ。社会人になって20年弱しか見ていない銀座だけど、それでもアルマーニだの、セリーヌだの、ブランドビルが乱立する銀座は、あの頃の銀座とは確実に何かが違う。まったく違う。

 そんなことを思いながら、銀座4丁目の交差点から少しはずれた、現在の銀座千疋屋の小さなパーラーの階段を上っていくと…、なんと、5~6人くらいの人が待っている。
 とはいえ回転も早いし、ほどなく順番は回ってくるだろうと待合用のイスに腰を下ろしたが、いやはや、前に座っていたおばさん、なんと7人グループを代表しての順番待ちだった。
 一人、また一人、と順次席に通されるたびに、イスを一つずつ詰めていく。これだけでも、なんともやるせない動作なんだけど、次の瞬間、7人グループの残りの6人のおばさんたちがドドーっとやってきて、せっかく詰めたイスだったのに、今度はあれよ、あれよと後退して、一番最後のイスに後戻りしたしまった私。
 銀座の客層も、ずいぶん様変わりしたものだ。

 やっと席に通されるなり、水とメニューが運ばれてくるのも待たず「マロンパフェ」と注文する。
 前のおばさんたちを追い越して、来た来た、やって来ました、私のマロンパフェ。
 久々だったから「生クリーム抜きでお願いします」と言うのを忘れ、苦手な生クリームがたっぷり盛られてしまったけど、まあよしとしよう。
 砂糖を極力控えながら、栗の旨みをめいっぱい堪能できる栗の甘露煮。いや、甘露煮などと呼ぶのも申し訳ない、ホクホクの極上栗そのもの。これが、バニラアイスの上にゴロンゴロンのっかっているだけではない。この栗が、粉々に砕かれたものが、バニラアイスの中にたっくさん混ざっている。
ちなみに、この栗、瓶詰めにして商品としても売られていて、新栗の季節のたびに商品が入れ替わる、つまり正真正銘の「季節商品」なのだ。
 11年前、私はこれを結婚式の引き出物にしようと企んだこともあるが、ホテルが契約しているデパートに銀座千疋屋が売店を持っておらず、持ち込み料がかかるので諦めた。しかし、それくらい、どこに出しても、恥ずかしくない「栗」なのだ。

 さて、隣のおばさま軍団が、まちまちに頼んでいるパフェやフルーツポンチに、おしゃべりに夢中で手もつけないうちに、こちらはペロリと平らげる。
 銀座千疋屋のマロンパフェ。銀座がどんなに変わろうと、ああ、この味だけは、昔と何ひとつ変わらない。

 ふーっ。久々に堪能した、お気に入り栗デザートに大満足しながら、日比谷線に乗り保育園へと向かう。
 おっと、くれぐれも息子には内緒にしておかねば。





スポンサーサイト



コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

鍵コメさま
コメント、嬉しく拝見しました。
ボローニャ在住の、あるいはクラシック関係の共通の知人が
きっといろいろいるような気がします。
そちらのブログにもお邪魔させていただきますね。
非公開コメント

Profilo

ritz

Author:ritz
イタリア家庭料理研究家
本業は広告代理店コピーライター
1999年以来、毎年有給休暇を使い果たす作戦でイタリアへ料理修行。年に1〜2回のペースで子連れでイタリアの農家やマンマの家々を転々としています。
HP→http://www.ristorante-ritz.com
Facebook"マンマの台所Ristorante Ritz"→https://www.facebook.com/ristoranteritz/

著書に「トルテリーニが食べたくて」
日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
U.M.A.O.オリーブオイル鑑定士
イタリア料理、子育てから、日本の旅、秘湯まで。

Calendario

04 | 2020/05 | 06
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

月別アーカイブ

FC2カウンター

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索